[Data]
ハード:Nintendo DS
メーカー:ソニックパワード
発売日:2008.01.17
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:300~500円(中古価格)

評価:★☆

[Review] 2014.01.05

フロム・ジ・アビス -FROM THE ABYSS-

 魔物の出現によって苦しめられている辺境の小国ルーベンハウトを救う冒険者となり、アビスホールと呼ばれるダンジョンをクリアしてゆく、オーソドックスな見下ろし型視点のアクションRPG。製作は家庭用「ぼくは航空管制官」シリーズなどを手掛けるソニックパワード。

 舞台となる小国ルーベンハウトはプレイヤーの拠点となり、ここからアビスホールへと向かうこととなる。買い物をしたり、住民・女王と会話したり、宿屋ではセーブが可能。セーブはここでしか出来ないので注意。
 探索するアビスホールは8つのダンジョンで構成されており、一つのダンジョンは4つのステージに分かれている。この「ステージ」は一般的なダンジョンRPGでいうところの「階層」に当たる。STAGE4がボスフロアとなっているため、探索できるのは実質1つのダンジョンにつき3フロア。しかも1回たどり着いたフロアにはルーベンハウトからすぐに戻れる親切設計。
 このダンジョンは一定の広さのフロアを縦横に組み合わせた形(アクションRPGではよくあるパターン)となっており、自動生成される。ただ、生成されるタイミングが「初回起動時」のため、ローグ方式のような”入るたびに変わる”というわけではない。何度も初回起動することはそれほど多くないと思われるので、自動生成のメリットがいまいち感じられないのは残念。
 ボスフロアの手前では、必ず拠点に一瞬で戻れるアイテム「女神の像」が手に入る(この先はボスがいるというメッセージまで出る)。ボスフロアまでたどり着いたら一旦戻って装備を整え、セーブしてボスに挑むという戦略が取れる。

 Aボタンで武器を振る。B・X・Yはスキルボタンとなり、下画面でスキルをそれぞれのボタンに割り当てる。このスキルは、主に魔法と特殊能力に分かれ、どちらもモンスターから「ソウルキャプチャー」と呼ばれる能力で吸い取ることによって増やすことができる(店で買うことも可能)。ジャンプはなく、LRボタンも下画面のタブ送りにしか使わないため、操作系はきわめてシンプル。
 LRボタンやタッチペンでタブを変えると、アイテムタブ・スキルタブ・マップタブ・ステータスタブに分かれる。アイテムタブでは、最大36個のアイテムが所持できる。1画面に12個のアイテムが入り、左側のタブで3画面に切り替える形。ここからアイテムを使用したり、武器防具・アクセサリーの装備が可能。マップタブでは、一度入ったマップの繋がる方向が表示される。
 ステータスタブでは、現在のステータスの確認が出来るほか、レベルアップ時にもらえるポイントで任意の能力を強化できるようになっている。1レベル上がるごとに4ポイントがもらえ、ATK(物理攻撃力)・DEF(物理防御力)・INT(魔法攻撃力)・MEN(魔法防御力)・AGI(攻撃速度)・LUK(運)の6パラメータに配分する。
  バランス良く上げるよりは1つ2つの能力に集中させたほうが良く、与えるダメージに直接関わるATK(攻撃力)が上がれば他はいらないくらいのバランスで成り立っている。クリティカルヒットの確率や敵が落とすアイテム入手確率に関わるLUK(運)も上げれば上げただけ良く、この2つがあれば魔法は全く必要ない。逆にINT(魔法攻撃力)やAGI(攻撃速度)を上げておけば魔法だけで進むことも出来る。

  メニュー周り(特にアイテム・スキル関連)では、アイテム/スキルのソート機能がないことや、そのタブ内でしかアイテム/スキルの場所入れ替えが出来ないのは気になった。
 スキルについては、装備するだけで継続的に発動するものと、B・X・Yボタンを押して発動するものとに分かれているが、継続発動するスキルにもわざわざボタン1つを割り当てると言うところに少し疑問を覚える。継続発動するスキルだけは別枠で設けても良かったのではないだろうか。
 もうひとつ、せっかくの「スキルキャプチャー」だが、取り逃してもスキルが店で買えてしまうので、わざわざ全種類集めようという気にならない。それどころか店でしか買えないスキルまである有様で、そこは普通逆だろ…と突っ込まざるを得なかった。

 DSソフトなりにグラフィックは頑張っていると思うが、モンスターは10~15種類くらいを色違いで使いまわす感じだし、ダンジョンも全く同じフロア構造を何度も見る。ニコ動ではないが、所謂「深刻な素材不足」という状態。クリアまでが約6~7時間と短いこともあって、内容の薄っぺらさが目立っている。

 クイックモーション(攻撃速度を2倍にする)やクイックスペル(魔法の詠唱時間を短くする)スキルが手に入ってからのなぎ倒しっぷりは爽快で、ここらへんになるとちょっと楽しくなってくるのだが、いかんせん手に入るのが遅すぎ。クリア後の要素もあるが、ダンジョン内の敵がめっぽう強くなるだけでダンジョンの構造が変わるわけでもなく、一部レア武器は手に入るがそれだけと、2周目とも言えない中途半端な追加要素となってしまっている。

いろいろ思いついたように挙げてみたが、一番引っかかったのは
「探索型ゲームっぽく作っておいて、そんな要素は微塵もない」というところかなと。

 ウィザードリィや世界樹の迷宮シリーズなど、拠点が1つあって、そことダンジョンを往復して探索するタイプのゲームは、探索と成長に重きを置いた作りをしている。拠点でやることがない以上は当たり前なのだが、探索して、敵を倒して成長して。このバランスがこのタイプのゲームを支えてきた。
 このゲームはそういう要素は取り入れたものの、探索要素はなく(行き止まりのマップに宝箱はあるが、中身は普通の回復アイテムばかりで探索するほどの価値はない)、成長要素もプレイヤーにぶん投げのため、バランス崩壊しやすい。一点集中で育てるとものすごい簡単だし、バランスよく上げるとものすごく難しいという極端な調整になってしまう。
 敵をただただなぎ倒すのは確かに楽しいが、それなら自動生成ダンジョンにする意味があったのか?という話になる。自動生成じゃなく普通に作りこんで、アイテム等をうまく配置したほうがよっぽど面白かったのではないか。

 結論、向いている方向があまりにはっきりしない。システム周りもこなれてない。基本部分はオーソドックスそのもので、このゲームだからという何かが出てこない。”淡々とクリアできる”以外にいいところがほとんど見受けられない残念な作品。