[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SCE/G-CRAFT
発売日:1995.06.30
ジャンル:RPG
実勢価格:100~300円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2010.09.19

アーク・ザ・ラッド

 「光と音のRPG」と銘打たれてCM等で当時大きなプロモーションがかけられた、ハードメーカーSCEとしては初のRPG作品。サードパーティを含めて既にRPGジャンルで作品はいくつか出ていたが、2D視点のオーソドックスなものはこの作品が初めて。ちなみに同時期のサターンも2DのRPGは1本も出ておらず、所謂”次世代機”の2DRPGとしても史上初の作品である。製作は初代「フロントミッション」を手掛けていたG-CRAFT。

 当時はSCEもセガもハードの立ち上げ段階で、RPGに対する情熱は特にすごかったと思う。SCEの自社RPGに対する凄まじいばかりのプッシュもそうだったし、セガはセガで「ロープレ王国」だの「ハマるロープレ」だの作品群を出してユーザーの取り込みを狙っていた。
 SCEでは、半年後に発売されたビヨンド・ザ・ビヨンドのPS発売1周年!というすさまじいプロモーションが有名(ソフト自体が大コケしたことも含めて)だが、この初代アークのプロモーションも(売れたから目立ってなかっただけで)なかなか負けてなかったように思う。当時のSCEが割と得意にしていた複数パターンのCM展開であったり、店頭でも、オープニングのムービーと音楽の素晴らしさを前面に出していたような記憶がある。

 CGムービーをオープニング・エンディング含めて随所に使い、戦闘中の技のエフェクト等に3Dポリゴンを有効利用。マップやキャラクターなどの主要部分は全て美麗な2Dで描かれ、アークをはじめとした味方キャラクターには全員に声が当てられるなど、次世代機のポテンシャルの高さを見せた。そして、T-SQUAREのリーダー安藤まさひろ氏が担当した音楽も素晴らしいものばかり。各種戦闘曲が戦闘曲っぽくなく、でも違和感ないのが良い。

 勇者の使命を負った主人公が悪を倒すという王道を地で行くストーリーが展開される。マップは国ごとのシンボル形式で、行き先を選ぶだけ。選んだ先のマップもほとんどないに等しく、ほぼ自動的にストーリーが進行する。アクセサリの装備はあるものの武器や防具の要素はなく、お店もお金の概念もない。RPGの基本である探索部分・そしてキャラクターのカスタマイズ性の2つをほぼ取っ払うという面白い作りとなっている。とりあえず自分でマップの探索は出来るけど一本道というゲームならいくらでも見つかるが、探索すらほとんど出来ないのは珍しかったのではないだろうか。

 いちおう寄り道要素として、アララトスの地下50階まである遺跡ダンジョンがある。ちょこの強さと扱いの中途半端さがまた微妙なところ。IIが出てデータコンバートの内容が判明してからここの重要度が大きく上がったとは思うのだが、Iだけプレイしていた当時は、ちょこは強いけど使える場所はフリーバトルエリアだけだしストーリーに何ら関わってこないしで、50階層クリアしたはいいけど喜び半分な感じだったのはよく覚えている。

 フラグ立てすらないに等しいためかストーリー進行に関してはすさまじくテンポが良く、賛否はあるだろうがこういうやり方は面白い。ただ、フラグ立てがない今作のようなストーリー展開だと「次はどこへ行こう?」「精霊の石に聞こう」の繰り返しとなり、強引な展開も全てが「運命に導かれて」の一言で片付けられてしまうという。

 あと、国と国の移動に飛行船を多用するゲームだが、飛行船の各国空港への出発・到着エフェクトが長すぎて中盤以降は若干だれる。ボタン押しなどでスキップできると良かった。

 戦闘はキャラクター一人ひとりを動かして敵に攻撃を仕掛ける、シミュレーションに近い方式。範囲攻撃や向いている方向によっての反撃の有無など、それなりに考えられてはいるものの本格的なものでは決してなく、敵の動きも単純(味方キャラに向かってくるか逃げる or 適当にうろつく)。
 もともと味方キャラクターだけで7名(召喚が加わると8名以上)いる上に敵は1つのマップにつき10体近くは出てくるので、1つの戦闘にかかる時間はもともと長いゲームなのだが、それに加えて後半のフィールドに無駄な段差が多かったり、分裂する敵(スライム系)が多くてさらに無駄に時間を食ったりするのは難点。

 もともとIIを出す予定で作られたプロローグ的な位置付けのゲームのため、普通に寄り道せずにプレイしていくとクリアまでの時間は大体10時間ちょっとくらい。遺跡ダンジョンなどの寄り道をクリアしたとしても、20時間は確実に切る。これを5,800円という当時のフルプライスで出す根性もすごいが、ラストになって「アークたちのこれからの活躍に期待」という続編頼みのぶん投げ方をしてしまうのは再プレイした今になってもやっぱり疑問。もうちょっとうまく出来なかったもんだろうか。

 このゲームだからこその良い点も多く、PS初期の歴史を彩る作品であることには違いない。このゲームはあくまでI・IIを通して最後までプレイしてこそだが、この初代だけでもある程度楽しめる作品にはなっていると思う。出荷本数が多かった上にベスト版もかなり出回ったせいか、今なら近くのブックオフにでも行けば安値で確実に手に入る。PSの躍進に大きく貢献した作品を今感じるのも悪くないかもしれない。