[Data]
ハード:Playstation
メーカー:カプコン
発売日:2000.04.27
ジャンル:RPG
実勢価格:200~300円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2014.10.02

ブレスオブファイアIV うつろわざるもの

 泥に覆われた世界、西のフォウ帝国と東の連合諸国は長きにわたる戦争に疲弊し、一時休戦状態にあった。休戦から1年後、東諸国の一つ、ウインディアの第一王女、エリーナが行方不明になる。帝国を刺激したくない連合諸国は表立った捜索に難色を示したが、その対応にしびれを切らしたエリーナの妹・第二王女のニーナは、フーレン族の族長クレイとともに姉を探すための旅に出ることを決意した。
 ウインディアを出て3日後、砂漠で砂竜の体当たりを食らって砂船が大破してしまったニーナは、クレイを警備に残し近くの街まで修理部品を調達するべく歩きはじめたが、その途中で記憶喪失の少年リュウと出会い、行動を共にする・・・

 竜の力を持つ少年「リュウ」と有翼族の少女「ニーナ」がシリーズ通して主人公・ヒロインとなるカプコンのRPG「ブレスオブファイア」シリーズの第4作。前作IIIに続くPSでの発売となり、約3年ぶりの新作ということになる。

 クォータービューが基本となるシリーズの特徴をそのまま受け継ぎ、フィールド・戦闘ともにクォータービュー視点で展開される。モンスターを含めたキャラクターグラフィックは全て2Dで描かれ、フィールドおよび戦闘時のエフェクトは3Dポリゴン。
 戦闘のグラフィックはもちろんのこと、通常イベントシーンや移動中などのキャラグラフィックが秀逸。パターンは相当多いと思われ、表情やしぐさが細かく伝わってくるし、とにかくよく動く。
 街などのフィールド部分は場所によって360°回転が出来るようになったが、もともとのクォータービュー視点が災いして単純に見難い状態になってしまった。せめてフレキシブルに360°回転が出来ればまだ違ったのかもしれないが、90°づつしか回転できず、不便さを助長する結果に。この視点を利用しての探しものも多数あるが、ダンジョン内の宝箱はまだしも、セネスタの子供探しあたりはかなりきつかった。
 製作側も良くわかっていた上でニーナの専用アクション「ジャンプ」(高い視点から見渡すことが出来る)を作ったんだとは思うが、レスポンスが微妙に遅くて毎度毎度ジャンプする気にもなれず、使える場所も屋外だけと中途半端さが否めない。

 前作まではほぼ正統派のファンタジーRPGといった様相だった本シリーズだが、今作は砂漠が世界の大半を覆うアジア・エスニックな世界観へと大きく変貌。シリーズらしいコミカルな部分はしっかり残したままの作りには好感が持てる。音楽もエスニック調へと大きく変わり、特に2つバージョンのある通常戦闘曲はなかなかに異色な作り。音楽は前作IIIや「勇者30」「流星のロックマン」を作曲した青木佳乃氏が担当、エンディングテーマ「ゆめのすこしあと」は自らが歌手も勤めた。

 どこを見ても「鬱ゲーの代表格」のような書き方をされる本作だが、エリーナ関連のイベントおよびフォウルのイベントは鬱ストーリーだけど秀逸。ブレスシリーズはコミカルな空気をにじませつつも淡々と人が死んでいったりするストーリー展開が散りばめられている印象だが、この作品はシリーズ中でも病み度の高いストーリー展開だと思う。
 しかも、最後までプレイしても「黒幕に何の裁きもない」というある意味救いようのない展開になっており、それ以前の展開と合わせてストーリーの存在感をさらに増していると言える。これについては「容量不足でイベントをカットした」という事情によるものらしいが、結果的にはこれで良かったのかなという気がする。勧善懲悪が望ましいのは確かだが、今作についてはそれをしなかったからこそ印象に残ったと思うので…

 戦闘については、ごくごくオーソドックスな内容だが、パーティーキャラ6名をターンごとに自由に入れ替えできる「スリック・ローテーション」が他にはない特徴で、最初の3名をコマンド選択すると、自動で残りの3名が後列(攻撃対象にならない)になる。後列を含めた全キャラクターを回復できるので、ピンチになったら後列に下げて回復・・・という手段が取れる。他にも、後列に下げたキャラはAPが回復するなどのメリットも。一部キャラは後列からのみ発動する能力もある。
 後半はAP回復が出来ることを考慮したバランスになっているようで、通常攻撃の回避率が高い敵が多い・後半のボスは軒並み通常攻撃が役に立たないなど、APを使った特殊攻撃系を活用していかないといけない。とは言え、厳しいのはあくまで後半だけで、中盤まではレベル上げすら必要なく普通に進んでいればいいだけだし、スリック・ローテーションに慣れれば戦闘不能になることすら少なくなるので、全体的にはさほど難しくないと言えそう。
 これも前作からの引き続きにはなっているが、敵の行動パターンがさまざま設定されているのも特徴的。組み合わせによってパワーアップしたり、残りの体力によって行動パターンが変わったりというのが多く、戦闘を飽きにくくする工夫が見て取れる。
 惜しいのは戦闘終了後のゼニー獲得エフェクトが飛ばせないこと。毎回カリカリカリ・・・という音とともに待たされるのがどうにも…。

 ブレスシリーズおなじみの「釣り」は今作でももちろん健在。今回もたくさんのルアーを使い分けてさまざまな魚を釣ることが出来、マニーロとのポイント交換によってレアアイテムとも交換できる。釣りポイントも隠し含めてかなりの数でボリュームも十分。何より”釣りコン”に対応するという、もはやミニゲームの域を超えたこだわりは感服のレベル。
 妖精を配置し村を作ってゆく「コロニー」もあるなど、シリーズ特有のお遊び要素はほぼ網羅していて、ゲームの途中途中に挟まる数々のミニゲームも良かった(ちょっと多すぎた気もするが)。

 全体的に、世界観を変えてもブレスらしさはそのまま、安定した作品という感じ。何だかんだで”外さない”のはさすがだなあと。視点にさえイライラしなければ。
 余談だが、前作IIIに登場し広大なマップと漂う絶望感で(ある意味)好評だった「死せる砂漠」というマップがあったが、今作の黄金平野がほぼ同じスタンスのマップで(前作よりは幾分狭く簡単になってはいるが)、これまで入れてきたか、と感心したものだ。