[Data]
ハード:Playstation
メーカー:スクウェア
発売日:1999.11.18
ジャンル:RPG
実勢価格:200~500円(中古価格)

[Data2]
ハード:PSゲームアーカイブス
メーカー:スクウェア
配信日:2011.07.06
ジャンル:RPG
実勢価格:823円

評価:★★★★

クロノ・クロス

 1995年に発売された「クロノ・トリガー」の続編として製作されたファンタジーRPG。複数の時代を行き来する「タイムトラベル」がテーマだった前作トリガーと違い、今作では同じ時間軸の別世界「パラレルワールド」を主題とし、ホームワールドとアナザーワールドの2つの世界を行き来しながら物語が進んでいく。
 監督は、今作の元となったSFCサテラビュー用ソフト「ラジカル・ドリーマーズ-盗めない宝石-」のkid編で監督を務めた加藤正人氏。聖剣伝説2・ゼノギアスの田中弘道氏がプロデューサーを担当、音楽はトリガーに引き続き光田康典氏が担当。民族音楽を意識したどれもこれもレベルの高いものばかりで、アナザーワールドのフィールド音楽や各種戦闘音楽のすごさはもちろん、街の音楽はホーム・アナザーでも変わるなどしており、数も十分。前作のアレンジも織り交ぜ、まさに隙のない作りと言えるのではないだろうか。

 仲間が総勢45名というのがまず驚きの部分。しかも途中途中で仲間の入れ替えもほぼ自由自在。似通ったキャラが出てしまうのは仕方ないとしても、そもそもなぜこれだけの人数が仲間になるのかがはっきりしないのがどうにもというところだが。誰がパーティに入っていてもストーリーに支障がないように「セリフ自動生成」というプログラムが搭載されているが、過去のイベントを話す際にパーティに加わっていなかったはずのキャラが知っているように喋り出したりといった不自然な事態も起こる。

 ストーリーはどこでも言われていることかとは思うが、作中だけで理解するのが本当に難しい。前作トリガーでラヴォスが倒れた後の”複数の可能性”から生まれた世界での話となるのだが、今作の中だけで進んでいる序盤から中盤はいいとして、密接にトリガーとリンクしてくる後半になってくると、前作をプレイしていたかどうかで話の理解度が変わる…というより、前作をプレイしていないとほぼ理解できない、のが正しいか。
 自分もクリア後は謎が多すぎて考察しているサイトをいくつもお邪魔したものだが、未だに解決を見ない複線がいくつもあるのは確認できる。これに明確な答えがあったのかどうか今となっては定かでないが、一つ言える事は、このゲームがそれだけの考察に耐えうる内容のゲームだったということだろう。
 ストーリーに関して「最終的にプレイヤー判断に任せる」というタイプのゲーム(に限らずアニメやドラマも)は多数存在するが、プレイヤーに判断させることと複線を適当に作っただけでぶん投げることを混同しているものも多い。少なくとも今作はそのようなことはなく、ある程度プレイヤーに考える幅を与えてくれる作りではあったと思う。

 戦闘はあまりにオリジナルなシステムが多すぎて解説しきれない(というか解説だけでものすごい長さになってしまう)のだが、スタミナを使った攻撃・魔法やアイテムなどを統合したような存在のエレメント・キャラクターや敵にフィールドにまで存在する属性など非常に多彩。
 スタミナ制は戦闘を間延びさせただけのようにも感じたが、エレメントと属性については面白かった。エレメント全てに存在する属性・キャラごとの先天属性にフィールドエフェクトなど、ゲームをスタートした当初はあまりに詰め込みすぎでは?と思っていたが、プレイしていけば意外に慣れてくるもの。余ったパワーレベル・回復エレメントで戦闘終了後に自動回復できるというのもよく考えられたシステムだと思う。
 …とは言え、中盤以降エレメントを装着できるグリッドの数がかなり増えてくるあたりから、エレメントの付け替えが面倒になってくるのがなかなかに痛い。所持しているエレメントから自動で選んで装着してくれる「オススメ」もあるが、ボス戦ごとにきちんとした対策が必要になる今作ではほぼ使い物にならない。

 基本的にMPのようなポイントを気にする必要がないゲームなので、毎度の戦闘に全力を注ぎやすい仕組みで出来ている。そのためか戦闘の難度はかなり高く、後半は(何も対策をしないまま挑むと)一撃死の攻撃を持つボスのオンパレード。補助系エレメントがこれほど重要になるゲームも珍しいだろう(特にマナフィーブル・イーグルアイあたり)。
 戦闘不能から復活するエレメント「リバイブ」が店で売られていないというのも難度上昇に拍車をかけており、そもそも戦闘不能にさせない対策が必要となってくる。攻撃パターンが数ターンで一巡するボスがほとんどなので、パターンを見抜けるかどうかがポイント。

 個人的には、フィールドエフェクトの重要性がいまいち伝わらなかったのが残念だった。序盤は気にせずとも進めてしまい、終盤はフィールドエフェクトを気にしようがしまいが強い攻撃を喰らえば瀕死か一撃死。そうでなくても、複数回攻撃(連続エレメント使用)をされてあっという間にフィールド属性を書き換えられてしまうもので…

 このように、戦闘部分を中心にオリジナル要素を多数搭載した意欲的な作品になった今作。製作側もここまでいろいろ詰め込んだからには賛否溢れるのは覚悟していたようだが、その結果は売り上げの悪さに結びついてしまった。
 実際にプレイすると、仲間の多さ以外の部分については難解だが納得できるシステムで慣れれば慣れるだけ面白い内容だと思うが、ぱっと見で前作と似ても似つかないグラフィックや、システムについても(褒めたばかりだが)慣れるまではとっつきにくさを感じるなど、ユーザーを遠ざけてしまう要素も十分にあったのは間違いない。

 プレイヤーにとっては音楽良くてストーリー考察も戦闘にも全力を注げる、ある意味で最もゲームらしい作品なのだが。「高すぎたポテンシャル」という印象の作品。