[Data]
ハード:Playstation
メーカー:ガスト
発売日:1995.06.23
ジャンル:シミュレーション
実勢価格:100~150円(中古価格)

評価:★★★

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[Review] 2012.05.19

ファルカタ ~アストラン・パードマの紋章~

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 アトリエシリーズやマナケミアシリーズなどでおなじみのメーカー・ガストの家庭用ゲーム機参入第1弾となったシミュレーションゲーム。舞台は紀元前の古代ペルシャで、実在したと言われる古代都市「アストラン」を舞台に、そこへ向けて侵略してきた敵対勢力「ミクトラン」との闘いを描いている。中東的な雰囲気で考えてもらえれば間違いはないだろう。

 いろいろな部分で独特の空気を漂わせるゲームだが、まずは全体マップが一般的なヘックスやマスではなく、双六のようなつくりで出来ていることを特徴としてあげるべきだろう。1ステージは20前後のサークルがあり、その中にアストランのグループ・敵勢力のグループが存在する。プレイヤーはアストランの1グループとなり、アストランのグループと協力しながら敵勢力を撃退して行く。
 1つのグループにはリーダー1名+4名の計5名までのパーティを作ることが出来、ゲームスタート時は3名から始まる。探索して仲間を見つけるのが手っ取り早いが、ほかにも仕官してくる人物を採用したり、倒した敵勢力から引き抜くことも可能。
 基本パラメータは武力・知力・魅力の3つと忠誠度のパラメータがある。武力は主に戦闘時のダメージ・知力は計略コマンドの成功度・魅力は引き抜きや援軍の成功度などに関わる。
 忠誠度については、この数値が低いと戦闘中に勝手に離脱したり、パーティからいきなりいなくなったりもする。この忠誠値は戦闘に勝利すること・宴会を開く(銀粒[このゲームの通貨単位]を使用)ことで上昇させることが出来る。プレイヤーターンではメンバーがそれぞれ要望を出すのだが、この要望に従わなかった場合などは下がってゆくという仕組み。

 敵勢力に対しては”戦闘”を仕掛けることが出来るが、味方ユニットに対しても”計略”を仕掛けることが出来、パーティから銀粒を盗み出す「盗む」・CPUパーティキャラの信頼度を低下させる「虚言」・自分の隣接サークルに位置するパーティをそのパーティの1つ隣のサークルに移動させることが出来る「誘導」・1vs1で”リボン”(銀粒と並ぶもうひとつの通貨単位)を賭けて戦う「試合」の4種類を選択できる。
 そのほか、”交渉”では、他パーティのキャラクター1人を自分のパーティに「誘う」・相手の持っている貴重品(パラメータアップアイテム)を銀粒やリボンと交換する「交換」コマンドがある。
 試合や誘導はまだしも、盗むと虚言を味方パーティに使えるというのはどうかと思うが、盗むで銀粒を稼ぐのはこのゲームの基本となってくる。銀粒は探索時に出てくる敵を倒しても手に入るが、手間もかかるし貰える量もそこまで多くない。

 試合もこのゲームの重要な要素。試合をしたキャラ同士の能力に差がある場合、試合に勝ったキャラの能力が上がるという仕組みになっている(2以上の差があることが条件。武力3と5のキャラが試合をして3のキャラが勝つと、一定確率で武力が上がる。知力・魅力も同じように2以上の差があればパラメータアップの対象となる)。
 裏技で、ターン開始時にランダムで登場する「ナゾのジジイ」に特訓をつけてもらうことも出来、勝つと必ずパラメータが上がるというのもあるが、これがなくても十分育てていくことは可能。試合を申し込まれたら、相手キャラより低い能力のキャラを出しておけばよい。

 戦闘は、探索時に登場するザコ敵とのコマンド選択型戦闘と、敵勢力ユニットと戦う際のセミオートバトルの2種類が存在する。
 まず、コマンド戦闘に関しては、敵も5体まで登場し、自パーティのキャラ全員をコマンドで指示する。誰に攻撃するかが完全ランダム、攻撃力が上がる「溜め」があるがあまり意味がない(ガードされると結局ダメージが少なくなるし)、倒すと銀粒や能力アップになるが効果がわずか…などけっこう難点の多い戦闘で、これそもそも必要だったのか?と感じることも多かった。

 もうひとつのユニット同士の戦闘だが、こちらはターン開始時にキャラクターそれぞれに5種類の中から指示を与え、あとはオートで画面上を動き回るのを見てるだけ。一定時間で次のターンに入り、また命令を出す…の繰り返し。
  このユニット戦闘では、敵ユニットを味方ユニットで囲んだ場合、囲んだ味方ユニットに援軍を要請できる。逆もしかりで、敵ユニットが隣接しているときに攻め込むと、敵ユニット同士で援軍を要請されて不利な状態で戦うこともある。その他、戦闘を仕掛けても逃げ道があれば逃走されてしまうため、まず「こちら側だけが援軍を要請できる状況に追い込んで、なおかつ敵ユニットに逃げ道がない状態にしてから攻め込む」というのが基本の戦い方となる。味方ユニット・敵ユニットをそれぞれ誘導コマンドでうまく追い込み、2~3ユニットで囲んで袋叩きにするといった感じ。

 …大体ここまでが基本のシステムになってくるが、全体的には「慣れればすぐ覚えられ、簡単」。ただ、ステージ前半は隣接ユニットに対する「盗む」コマンドの繰り返しでお金を貯め、ステージ後半になってくると誘導→誘導→誘導…の繰り返しで敵ユニットを追い込んで戦闘…これだけでほぼ成り立ってしまい、非常に作業ゲー化しやすい。肝心の「虚言」や忠誠度のシステムについても、「宴会」コマンドで金さえかければあっという間に忠誠度が上がってしまうなどしており、簡単だが奥深くはない。
 ストーリーについても、大まかには伝わるが、細かいところはセリフ回しが独特でよくわからないというのが全体的な感想。

 簡単なコマンド・作業ゲー・よくわからないストーリー・セミオート戦闘…など、いろいろな要素を思い返してみると、アイディアファクトリーの「スペクトラルフォース」に近い印象。スペクトラルフォースシリーズのような「奥深くはないけどさらっとできるシミュレーション」に一定の評価が出来る人なら、このゲームもそこそこ面白く感じるのではないかと思う。一部スタッフが被っているとの噂もあるがどうなんだろう。
 最後に。音楽については、基本はアラビア世界を題材にしたゲームなだけに雰囲気に沿ったものが多いが、戦闘時はロック調の激しいものに切り替わる。ユニット戦闘ではステージごとに音楽も変わり、全体的に良曲揃い。エンディングまで辿り着くと△ボタンでサウンドテスト画面に移るという裏技?もあるほか、PS初期のゲームなので音楽がCD-DA音源で入っていて、CDプレイヤーなどでも聞けちゃったりする。作業用BGMとしてもオススメ。

 悪くないゲームなんだけど、ゲームスタート時の取っ掛かりがあまりにも悪かったかなと。独特のシステムに慣れるのに、ゲームを1周くらいはしないといけないというあたりが痛かった。せめてストーリー性がもうちょっとあれば、スペクトラルシリーズくらいの知名度は出たんじゃないだろうかとも思うのだが…