[Data]
ハード:Playstation
メーカー:コナミ
発売日:1995.12.15
ジャンル:RPG
実勢価格:500~800円(中古価格)

評価:★★★★

[Review]2015.10.11

幻想水滸伝

 賢帝バルバロッサによって統治されていた赤月帝国は、わずか11年の間に腐敗し、バルバロッサは暴君と呼ばれるようになった。やがて、荒んだ帝国と戦うために「解放軍」が組織されるようになっていた。
 帝国将軍の息子に生まれながらも「ソウルイーター」と呼ばれる紋章を受け継いだことで帝国にその身を追われた主人公は、解放軍のリーダー・オデッサと会い、解放軍に参加。志半ばで息絶えたオデッサの遺志を継いで解放軍のリーダーとなった主人公は、運命に導かれた107人の仲間とともに帝国軍との戦いに身を投じていく…

 圧政に苦しむ世の中で、梁山泊に集まった108人の好漢が国を救うことを目指して戦う、という内容の伝奇小説「水滸伝」をモチーフにしたオリジナルRPG作品。のちに好評を博しシリーズ化された第1作となる。ナンバリングとしては現在5作出ているが、すべて「太陽暦」と呼ばれる同じ時間軸を舞台としている。
 PSでは「アーク・ザ・ラッド」「ビヨンド・ザ・ビヨンド」に続く3作目の2DRPG作品で、SCE以外のいわゆるサードパーティ製ではPS陣営史上初の2DRPGとなる。

 フィールド画面や街の中・ダンジョンなどはすべてオーソドックスな見下ろし視点で展開。フィールドはかなり引き気味の視点で広さを感じるグラフィック表現になっていて、2Dならではの切り口が見事。後半になると、解放軍本拠地がえらく広くなっていくので、ちょっと歩くのが遅いかなと思うことは多かったが(神行法の紋章があったとしても)。

 戦闘はクォータービューで展開されるもので、味方は前列3名・後列3名の最大6人パーティー。キャラクターそれぞれにS/M/Lの射程があり、後列に射程Sのキャラを置くと通常攻撃は不可となる。
 システムはコマンド選択からのターン戦闘というこちらもオーソドックスなものだが、1人1人が順番に攻撃するのではなく敵味方が連なってがんがん攻撃していくため、戦闘の進行が速い。オート戦闘「おまかせ」もあるので、戦闘でのレベル上げやお金稼ぎがそれほど苦にならない。これはシリーズの特徴として続編にも受け継がれていくが、素晴らしいテンポの良さを生みだしている。
  経験値は1レベル1000の固定制。敵のレベルとキャラクターのレベル差によってもらえる経験値に補正がかかる仕組みで、低レベルのキャラクターなら1回の戦闘で5,000~10,000以上の経験値が入る(5以上レベルが上がることもある)し、一定以上のレベル差がつくと獲得経験値は5で止まる。
 108人の仲間の中で戦闘に参加できるメンバーは70名以上、場面場面で固定メンバーが出たり入ったりすることも多いので、レベルの低いメンバーでもすぐにメインキャラのレベルに追いつけるこの仕組みは非常に理に適っている。
 一定以上のレベル差になると逃げるコマンドも「逃がす」に変わって確実に逃走できるようになるというあたりもよく考えられている。おそらくマップ読み込みのときにまとめてるんだと思うが、戦闘突入時のロード時間のなさも特筆もの。

 そのほか、キャラクターの組み合わせによって協力攻撃を繰り出すことができる。序盤では主人公+カイの全体攻撃「師弟攻撃」が大活躍する。中盤から後半にかけてはビクトールやフリックなどの射程Sキャラクターが固定化することが多く、そうなると射程Sのキャラクターはあと1人しか入れられず。協力攻撃よりもパーティーのバランス重視になってしまい、結果協力攻撃の使いどころがなくなってしまっていたのは残念。

 当初から将軍の息子でリーダー資質あり、というスタートのためか、解放軍のリーダーになっていく過程の進行がかなり早かったものの違和感が少なく、各地で仲間を引き入れていくことで・さまざまな死と別れに向き合うことで、彼が解放軍の指揮官として何ら問題ない空気感に変わってゆく、この展開は「設定の勝利」という感じがする。
 108人のキャラクターに関して言うと、限られたストーリー展開や時間の中で、よくぞここまでそれぞれのキャラクターにスポットを当てたな、という感じ。当然メイン帯のキャラとそうでないキャラとではスポットの当たり方がだいぶ異なっているが、完全に空気と化しているキャラはそれほど多くない。

 ストーリー上では兵力を直接ぶつけあう「戦争イベント」もあり、ここでは突撃・弓矢・魔法の3種類の攻撃とその他の策略などを使って進軍する。3種類の攻撃については完全にじゃんけんで、勝ったほうがほぼ一方的に攻撃できる仕組み。正直言ってそれほど練りこまれてるものではないが、”戦争”というテーマを意識させるものとしては有用かと。もうひとつ、敵指揮官と1vs1で戦う「一騎打ちイベント」というのもあり、こちらもテーマの意味合いが強いだろう。

 強いて難点をあげるとすると、
・装備はまだしも所持アイテムまですべてキャラクター別に分かれてしまっているので、一時離脱キャラクターに持たせていたアイテムがしばらく返ってこないなどの事象が出てしまうこと
・一部仲間キャラクターの条件がノーヒント状態では発見困難であること(街に入った段階で1/8出現のフラグが立つクライブが最たる例だが、タイミングが難しいレオンとか、4人連れていく必要のあるミースとか、洞窟のよりにもよって隠し部屋にいるクロウリーとか…)
…というところ。最初のプレイではレオンのタイミングを間違えてあと1人足りずをやらかしたので、注意いただきたい。

 普通にプレイしてもよし、お気に入りを育ててもよし。ロードもほぼ感じられず、せいぜいセーブ時のみ。高いユーザビリティ・間口の広さと奥深さが絶妙のバランスで成り立つ優秀作品。