[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SCE/シェード
発売日:1997.11.06
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:100~300円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2010.09.19

グランストリーム伝紀

 100年前の地上、精霊同盟軍と魔導帝国軍との戦いにより地表は崩壊。4人の賢者と魔法制御塔「エアリム」の力で崩壊前の4大陸が空に浮上し、生き残った人々はそこで暮らしていた。毎年賢者の血を引く者の儀式によってエアリムから力をもらって4大陸は浮上を続けていたが、儀式を行うものたちが続々と失踪。浮上をやめ落下してゆく4大陸。再び世界の滅亡が始まった…

 PS初のフルポリゴンアクションRPGと銘打って発売された作品。製作はシェード、シナリオ・音楽等はクインテットスタッフが担当。イースI・IIのシナリオを手掛けた宮崎友好氏がこのゲームのシナリオを手掛けている。通常画面はキャラクター・フィールド等すべてフルポリゴンで展開され、イベントの合間合間にはProduction I.G.が手掛けたアニメーションが挿入される。アニメーション部分の声優は佐々木望・飛田展男・かないみか・笠原弘子・塩沢兼人…とかなり豪華で、出来も時代を考えればかなり上質。数もまあまあ多く、さすがプロモーションの際にアニメーションを押しまくっただけのことはあるなと。

 視点がほぼ真上からというのがこのゲームの大きな特徴。フルポリゴンということもあり視点を360度回転させることができるのだが、斜め上からの視点ならまだしも真上からの視点だと、視点を変えたところで見える範囲が変わらないのであまり使わない。街の中では壁に調べるものがあったりする(本棚や絵など)のでそれなりに使うのだが、ダンジョンの中では正直全く必要ない。ダンジョンは全体的に作りが簡単なので、視点をぐりぐりいじっているほうが逆にわかりにくくなるのではないだろうか。キャラが大きめに取られている(若干寄り気味な)視点のため、家などでこまごまとしている街の中が若干見にくい印象を受けた。

 世界観については、浮遊大陸の概念であったり空賊・魔導帝国軍の大型飛空艇ヴァンゲルの存在、主人公リューンとヒロインの一人アーシアとの関係などなど、「天空の城ラピュタ」を思い出させる部分がちらほら見受けられる。おそらく何らかの影響は受けたに違いない。言われてみればイースにも近いかなと思わせるシナリオ進行がある作品。イースの雰囲気が好きな人はこのゲームの世界観は合うだろうなと思う。そして、音楽が全体的に良い。世界観にきちんと合った音楽作りに成功していると思う。こういった世界観はクインテットお得意と言ったところなんだろうか。

 主人公リューンは謎の魔導機「セプター」を身に着けており、壊れた無機物を再生したり、複製したりといったことが出来る。ストーリー中では、目の前で粉々に砕かれた重要アイテムをあっさり復元してみたり、取れない場所にある鍵をあっさり複製して使ってみたり、ストーリー進行とは関係ない場面でも燃えてしまった鉄の破片から武具を復元してみたりなど、正直やりたい放題。セプターの存在理由も後々語られることにはなるのだが、この無理やり感あふれる展開にはちょっと苦笑いするところもあった。

 ストーリーは終盤で大きく動く。最後の町~ラストにかけてはスピード感もあり思っても見ないどんでん返しもありでなかなか面白いのだが、それまでの部分は大陸ごとに1つのストーリーがあって結果として大陸を救うことに繋がる、というごくごくありがちな展開。イベントやセリフはかなり考えられているのだが、肝心のフルポリゴンによる演出がいまいちでセリフの濃さほど印象に残らない。

 レベルアップも唐突でイベント進行の最中にいきなりレベルが上がるため、何でこのタイミングで?となる。これにもしっかりとした理由があるのだが、演出があまりに地味で「レベルが上がった!」でしかないため、理由がわかったとしてもそこまで感銘を受けないというか。なんかいろいろと残念。

 敵との戦闘は敵に触れてのエンカウント式1vs1バトルとなっており、普通のアクションRPGを期待していると肩透かしを食らう。自分も敵も、HPのほかにLP(ライフポイント)があり、HPがなくなるとLPが1減る。LPが0になると決着(自分のLPが0になるとゲームオーバー)という具合。プレイしたことがある人は、似たようなシステムのロマサガ2・3あたりを思い出して頂けるとわかりやすいかもしれない。

 左右のステップと盾によるガードで敵の攻撃を防ぎつつ、隙を見て切りつけていくというのが基本戦法。盾のガードはガード崩し攻撃以外の全ての攻撃に対して無敵なので、敵の近くにいるときは盾を出しておけば致命傷にはならない。敵に向かってのダッシュ(体当たり?)が強く、体当たり後の攻撃は高確率でヒットするので、距離が離れているときはダッシュからの攻撃、近いときはガード後に隙をついて攻撃、と大体2パターンを覚えておけばまず死ぬことはない。

 必殺技というのもある。一定の武器を手に入れる際に手に入るコマンド技なのだが、肝心のコマンドが手に入ったときしか表示されないのは大いに疑問。しかもダメージは大きいが技が発動するまでが長すぎて、相手に当たる前にガードされるか攻撃を食らってしまう。これなら連続技をもっと強化してくれたほうがよっぽど使い道があった。
 魔法は魔法で回復魔法以外の使い道が微妙。ラスト近くになると攻撃魔法がかなり強力になるが、消費MPが多すぎてむやみに使えないし普通にガードされるしで、大量のMP消費するくらいなら突っ込んでいったほうが早いとなってしまうのが何とも。終盤の敵になるほどガードも固くなるため、だんだんと持久戦になりがちで戦闘が間延びしていくが、レベルアップは(上にも書いたが)ストーリー進行によるもので敵を何体倒してもレベルに関係しないので、避けて進んでも何ら問題なくなってしまう。

 せっかくの1vs1バトルなのに避けられ続けてしまっては問題だと思ったのか、今作では「セプターフォース」と呼ばれる戦闘での救済システムが存在する。無傷で敵を倒し続けることによってアイテムやお金がもらえます、という内容のもので、無傷で倒す敵の数が増えることによってセプターフォースの色が青→赤→…→レインボー(最大8段階)まで変わってゆき、任意の段階で開放する。
 もらえるお金が増えたりレアなアイテムがもらえたり…というシステムで、有効活用していくとお金がかなり貯まり攻略が相当楽になるのだが、序盤はまだしも後半は完全無傷で倒し続けることがなかなか難しく、しかもミミック(宝箱に化ける敵)やイベント戦闘が挟まると段階がリセットされてしまう。魔法を使ってもだめ、1度でもダメージを受けると当然ながらリセットされる…など条件も相当厳しく、レインボーまで進むのは容易ではない。結局途中からはセプターフォースを稼ぐのも難しいので戦闘は避けて通ろう…となってしまい、(このシステムの意図から考えれば)本末転倒な気がする。

 キーレスポンスは悪くない部類に入る・セーブが圧倒的に早い(開始してから1秒足らずでセーブが完了する)・ストーリー進行の中で迷うことは全くと言っていいほどないなど、全体的にさくさく進めるタイプのゲームではある。クリアタイムは大体10時間超くらい。名作と呼ぶにはいろいろと無理のある内容だが、昔ながらのファンタジーに思ってもみない展開をちりばめたストーリー展開は一見の価値ありかと思う。アクション性を求める人にはあまりお勧めできないが、逆にアクションが苦手な人・もしくは世界観が好きな人にはいいかも。