[Data]
ハード:Playstation
メーカー:フロム・ソフトウェア
発売日:1994.12.16
ジャンル:3DリアルタイムRPG
実勢価格:500~700円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2016.12.24

キングスフィールド

●あらすじ
 深い森に四方を囲まれた小さな国、ヴァーダイト。遥か昔に戦いがあり、多くの民が倒れ傷ついた時、ヴァーダイトを救ったものがいた。それは人であったのか、妖精や魔物の類であったのかもわからず、森に漂う霧の中に消えてしまった。人々はそれを「森の竜」と呼び、神殿を築いた者だけが言い伝え、崇拝してきた。だが、今ではその伝説だけが取り残され、神殿は王家の墓所に姿を変えて静まり返っている。
 「いつの日か、森の竜と呼ばれるものが魔導器を携え帰ってくる」と伝説は伝えている。しかし今はまだ神殿奥深く眠っているのだと。
 あるとき、神殿を訪れた者と一族が、その魔力ゆえに王として国を治め、神殿に王家の墓所を造り始めた。墓所を広げ続けるその影で、王もまた魔導器を探しているのかもしれない。いや、そのためにこそ、この地を訪れたのであろう。

 ジャン・アルフレッド・フォスターはこの国の護衛隊長ハウザーの長男として生まれた。剣に興味を持ち修業を始めた彼は、父を超えることを目標に、隣国の父の友人に師事し修行に励んでいたが、あるとき故郷ヴァーダイトに関するこんな噂を耳にする。
 王・ラインハルト3世が魔導器を探しに王家の墓所にハウザーを隊長とした大兵団を送り込んだが、魔物の襲撃に合いほぼ全滅の大被害を被ってしまった。そのため、魔物の退治に賞金をかけて各国から傭兵を募集している。ハウザーは一度帰還したものの、部下を救うために再度墓所に降りて行った、と。

 ジャンは父を探すために傭兵として自国に戻り、墓所へ入る決心をした。

●概要
 初代PS発売から約2週間後に発売された、フルポリゴンで表現された地下ダンジョンを一人称視点で探索するリアルタイムRPG。業務用アプリケーションなどを制作していたフロム・ソフトウェアのゲーム参入第一弾。最初期のためかなり粗いポリゴンではあるが、ダンジョンから人物・魔物・アイテムなどすべてをポリゴンで表現しきった技術力は素晴らしいものがある。
 地下墓所という閉鎖的な空間にしたのは技術力の不足をカバーするためだそうだが、見える遠景が狭いことや無機質な建物の中という空気感はこのグラフィック品質でも十二分に感じることが出来、技術は不足だったのかもしれないが上手くカバーしたというところだろう。

●操作
  十字キーで移動。L1/R1は平行移動・L2/R2は上下の視点変更。一部の魔物は下を向かないと攻撃が当たらないので、意外に重要となる。攻撃は△で武器を振る・□で魔法。近距離攻撃が武器、遠距離が魔法という使い分けで、魔法についてはMP消費によっての発動で利用に制限あり。武器攻撃には「POWER」・魔法攻撃には「MAGIC」というゲージがあり、それぞれ攻撃をするとゲージが一旦空になり、一定時間で最大値まで復活する。武器攻撃時はゲージが溜まり切らないうちに攻撃すると攻撃力が大きく下がり、魔法攻撃時はゲージが溜まらないと魔法自体発動できない。

●最序盤は超高難度・ただし潜り抜ければそこは
 ゲームをスタートするといきなり墓所の中(第1層)から始まる。説明書に書かれている以上の説明はなく、ほぼいきなり放り出される形でスタートすることになるのだが、まずどこに進んでいいのかが全く分からない。最初に見つける宝箱はいきなりカギが必要で開かず、扉も半分近くが開かない。
 そんな中で進んでいくと魔物も登場するが、回復手段もろくにない状況から最大HP30に対し1発5~10近いダメージを喰らうという状態で、武器攻撃のタイミングすら掴めずさっそく死亡→タイトル画面へ戻る、という流れを誰しも経験することになるだろう。
 安全な遠距離攻撃である魔法に頼りたいところだが、最序盤はMPを使い切ってしまうとしばらく回復する方法がないので、どちらにしても近距離に慣れないと先へは進めない。その回復は「竜の泉」というところで出来るが、開始当初は泉が枯れていて回復不可。あるアイテムを特定の場所に設置することで泉が復活するが、その特定の場所もノーヒントでしかも第1層のかなり奥にある。
 流れとしては、スタート地点から近いショップを見つけて回復アイテム(薬草)を買えるだけ購入し、まず敵を倒すタイミングを覚えてレベルを上げるというのが最善。そこまでで心が折れないかがこのゲームを続けられるかどうかの分岐点と思われる。

 とにかく辛いのはレベル1の状態で、2以上に上がってくるとだいぶ楽になる。探索に慣れてくると、いろんなところに薬草が落ちていたりして意外に回復にも困らないのがわかるので、このあたりになってくると楽しさがわかってくる形だろうか。
 武器・防具はアイテム同様第1層にある2ヶ所のショップで購入可能。換金アイテム「ブラッドストーン」「ムーンストーン」や敵が落とす&各所で拾える武器防具を売って金策にしていく。敵を倒してもらえるゴールドが非常に少ないので、ここは武器防具を売り払うほうが効率的だろう。

 ちなみに、昨今の3Dゲームではほぼ当たり前の「オートマッピング」などという優しい要素はなく、第1層で「番人の地図」を手に入れるまではまったくの手探りで進むこととなる。その地図もフロアの全てが網羅されているわけではないので、実質自身でのマッピングが必要な場面も出てくるだろう。ちなみに、後半に出てくるもう一つの地図はほぼすべてを網羅している。
 移動に絡むところだと、移動速度はもう少し早いほうがという感じ。仕様上アイテムを手に入れて戻ってという場面が多く、1層の大きさも相まってちょっとかったるい。

●最終盤も鬼畜難易度
 終盤になると、遠距離攻撃を使う敵が大幅に増えてくる。ダメージも大きいし避けにくいしで、そんな敵ばかりがフロアにうろついている第5層は相当の難易度となる。せめて防御の仕組みがあれば違ったような気がするが、本作ではとりあえず避けるしかなく、視点外から来る攻撃には対処のしようがないので、気付いたら遠距離攻撃でタコ殴りにされていることも。

●何にしてもヒントのない作り
 進行上様々なアイテムを駆使する場面があるが、場所も何もかも完全ノーヒント。多ければいいというものでもないが、ここまで突き放す作品は特に最近のゲームではまず考えられない。
 武器・防具については、購入時や入手時に攻撃力・防御力がどのくらいかは全く説明されず、装備してからステータスを見るまで分からない。一部の武具につく付加能力についてはステータスにすら表記されず、装備中自動でHPが下がってゆくブラッドマスクや、逆に装備中HP・MPが自動回復するトリプルファングなどはゲージが増減しているのを見て初めて気付くという状態。
 同じように、各種アイテムも説明は全くなし。薬草や回復薬・毒消し草あたりは名前で大体想像がつくが、幻の杖(一定時間隠し通路が発見できる)・ヴァーダイト(使うと魔力1アップ)・ブラッドストーン(換金用アイテム)あたりはさすがにどこかしらで説明が欲しい。

●総評
 最近の作品と比べると全体的に不親切極まりないが、この清々しいまでの突き放しっぷりが逆にメリットともなりえるゲーム性。昔の自由度の高いゲームって総じてこんな感じだったよなあ、という。このグラフィックだからこその空気感は一見の価値あり。