[Data]
ハード:Playstation
メーカー:アトラス
発売日:1996.09.20
ジャンル:RPG
実勢価格:200~300円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2016.04.24

女神異聞録ペルソナ

●あらすじ
 御影町にある高校「聖エルミン学園」。ここでは、”未来の自分が見える”というペルソナ様遊びが流行していた。エルミン学園2年生の主人公は文化祭の準備中、仲間とともにペルソナ様遊びを面白半分で行うが、そこで謎の雷に打たれ意識を失う。
 保健室で目覚めた主人公たちは、自分たちの検査とクラスメイトの園村麻希の見舞いを兼ね、御影総合病院へ向かう。見舞い中容体が急変し、その後なぜか行方不明になる園村・迷宮化する病院・蘇った死体が襲いかかってくる絶体絶命の状況、内面から目覚める不思議な力”ペルソナ”。
 何とか病院から脱出した主人公たちだったが、外に出ると街には悪魔が出現するようになり、御影町は光の壁のようなもので覆われ、脱出できなくなってしまっていた…

●概要
 ペルソナ様遊びから始まった出来事を発端として、”ペルソナ”に目覚めた主人公たちが御影町に起こった異変に立ち向かう。アトラスのRPGシリーズ「女神転生」の流れを汲むRPG作品で、3Dダンジョンや悪魔との交渉・合体などの要素を引き継ぎつつ、舞台を現代学園物にするなどの新要素を多数取り入れた。
 よく言われる「ジュブナイルもの」というやつだが、今でこそ当たり前のようになっているものの当時はまだまだ少なく、特に日本の学園ものとなるとほぼなかったジャンルかと思われる。女神転生は学生主人公かそれに近い年代の少年少女が主人公というのがほとんどなので、そういった意味ではメガテンシリーズらしいところとも言えるが。

●女神転生シリーズとして
 外伝作という位置付けの作品なので、ベースとなる部分はほぼ従来の女神転生シリーズとなっているが、特に真シリーズの影響が色濃く出ている。悪魔は真から登場するものが多く、見た目もほぼそのまま。アイテム関連もほとんどが真シリーズから受け継がれたもの。
 マップについても人型アイコンで移動する形式で、これも真シリーズ以降で採用のコンピュータマップを模したもの。シリーズプレイヤーには全く違和感なくプレイできる。

●グラフィック音楽
 2Dマップと3Dダンジョンはフルポリゴン表現、部屋の中やイベント画面・戦闘画面は2D描画と分かれているが、特に2D画面のこだわりが素晴らしい。細かいものの描写が良く、中でも学園体育館裏の部室(壁に貼られているものや用具類に至るまで細かく作られている)やコンビニ(手に取れるわけではないが、配置から色遣いまで、実にらしく出来ている)・薬局サトミタダシ(専用の歌+カエルのマスコットまで用意されている)などは必見。

 従来シリーズでは割とハードロック調に傾いていた音楽も、今作はほぼ一新というくらい変わった。後のペルソナシリーズで有名となる目黒将司氏の入社初作品となっているほか、土屋憲一氏・沖辺美佐紀氏・青木秀仁氏の4氏合同で作られていて、総数100曲以上。こんなに多い作品は特に当時ではあまり記憶がない。FFシリーズくらいか?FFVIIは120曲くらいあったと思うが。
 サウンドトラックは2回発売され、最初のサントラはアレンジverが入っているものの全曲収録じゃないという何とも言えない仕様で残念だった記憶がある。(デヴァ・ユガと通常戦闘・サトミタダシの歌のアレンジは良かったけどね)
 戦闘などではまだまだロック調が残っているが、全体を見渡すとオシャレな曲が増えていて、後々のペルソナシリーズの一端がここでも見えてくる形か。

●ペルソナ
 内面の力である「ペルソナ」は、悪魔との交渉で手に入る「スペルカード」を合体させることで生み出すことができ、主にパーティーキャラの魔法や特殊能力とパラメータ成長に影響する。ペルソナは1人につき最大3体まで”降魔”させることが出来て都度変えることが出来るので、悪魔に合わせて切り替えながら…というのが基本となってくる。
 ペルソナにはタロットカードのアルカナがあり、パーティーキャラとはアルカナによっての相性が存在する。相性が悪いとぺルソナを発動できなかったり、そもそも降魔すら出来なかったりも。逆に相性がいいと潜在能力が発動可能になるという要素もあるが、相性の良し悪しを調べる方法がペルソナを作って降魔させてみる(もしくは戦闘中に使ってみる)しかなく、ちょっと不親切感がある。
 同じ要領で、合体時にアイテムを加えると能力アップや追加魔法があったりもするが、これについても1回1回出来上がるペルソナの能力値を確認するしかなく、追加魔法に至っては事前確認ではわからない。

●こだわりを感じさせるが問題だらけの戦闘
 シリーズ初のクォータービュー視点で、行動時には敵味方問わずアニメーションする。仲間+ペルソナの動きもいいのだが、悪魔側のこだわりが相当見て取れる作りで、行動一つ一つに専用モーションが設けられている徹底ぶり。
 システムはオーソドックスなターン制で特筆すべきところはないが、ここもシリーズらしくといったところか悪魔の属性優劣が激しく、一定の属性に強いから始まり、属性反射や吸収も当たり前。シリーズおなじみの物理攻撃反射ゾウ・ギリメカラもいる。今までシリーズをやったことのないプレイヤーでもプレイしてもらえるように…というコンセプトで作った作品らしいが、正直言ってシリーズ未プレイで飛び込むとかなり辛いと思う。

 モーションを含めたこだわりはよくわかるのだが、おかげで戦闘にかかる時間がとんでもないことになってしまった。1回のモーションに10秒以上かかるのがほとんどと1回1回の行動のテンポが激悪で、ザコ敵1回の戦闘でどんなに短くても2~3分は要する。
 むしろ2~3分で収まるのはごくわずかで、前述の通りの属性優劣や悪魔自体の強さもあって、後半になると1回の戦闘に10分以上かかるなど普通。メガテンシリーズらしくオート戦闘もある(リプレイオートや事前設定どおりに動くパーソナルオートもあるなど、ここもかなりこだわってる)が、悪魔ごとにきちんとした対策が必要なことが多い今作だとオートにしたところでさほどテンポは良くならない。
 エンカウント率もえらい高く、3Dダンジョンだと平均10歩くらいでエンカウントする。ちなみに逃走も相手のレベルが明らかに低くないとほぼ失敗するので役立たず。
 全滅さえしなければ戦闘終了後に復活するが、それを加味しても難易度は相当高い部類だろう。ペルソナの相性によっては相手の魔法や特殊能力で一撃死することも多数。

 経験値のシステムがちょっと特殊で、戦闘での貢献度によって基本経験値に+αされるという仕組み。仕組み自体が悪いとは思わないが、 いくらなんでも+αに幅を持たせすぎな印象で、基本経験値200くらいでも貢献度が高いと2,000とかになったりするのはいくら何でもやりすぎだろう。
 全体攻撃魔法や回復魔法のペルソナを所持しているキャラは貢献度の上がりがすごい。あと、タルカジャなどの能力値上昇・降下系もやたら貢献度が高く設定されている。
 結果、つけているペルソナによって経験値の入りにどんどん差が付いてしまう。中盤くらいになると1回にもらえる経験値とレベルアップとのバランスが明らかに崩れてきて、レベルアップに相当の時間を費やさないと交渉にならなくなる(悪魔のレベルがパーティーレベルの平均を超えているとスペルカードがもらえないので)事態に。

●ストーリー
 ストーリーはメインのセベク編と、当初隠しシナリオ扱いだった雪の女王編の2つ。雪の女王編はストーリーと言うほどのものはないのでいいとして、セベク編については面白い流れだった。とは言え、目的とする敵は序盤からはっきりわかっていてそこを目指すのに戦闘のもろもろや長いダンジョンで時間がかかるだけという仕様なので、プレイ時間の割にはストーリーは短く、戦闘などのダルさをさらに誘発する結果になっているようにも思う。

 進行というところで見ると、セベク編後半のセーブポイントの少なさと雪の女王編の中断セーブの仕様がけっこうきつい。

●総評
 こだわりすぎていろいろ問題を抱えたという。特に戦闘部分、難易度はまだしもテンポは擁護のしようがなく、ここさえスピード感があれば相当違った作品。(音楽が大幅に変わってしまってこちらはこちらで違和感があるが)PSPでこの辺を改善したリメイクが出ているので、今プレイするならPSP版だろうか。