[Data]
ハード:Playstation
メーカー:アトラス
発売日:1999.06.24
ジャンル:RPG
実勢価格:200~300円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2017.12.16

ペルソナ2 罪 -Innocent Sin.-

●あらすじ
 物語の舞台は、人口128万人の政令指定都市、「珠閒瑠市」。主人公が通う七姉妹学園高校(通称セブンス)では、カッコイイ系の男子が多いと評判の学校で、その校章やエンブレムを持ち歩くことは、他校生の間でも一種のステイタスであった。しかし、いつの頃からか街には「セブンスのエンブレムは<呪いの紋章>で、身につけていると容貌が破壊される」という噂が広まっていた。
 そして、その不吉な噂が現実になる。それをきっかけに、街では次々と噂が現実になる奇妙な現象が発生する。

 あるきっかけで<ペルソナ>という別人格を召喚するようになった主人公たちは、その特殊能力を駆使して、街に起こる様々な事件を追うことになる。次第に明らかになって行く噂と事件の関係。止まっていた時が動き出す。全てはまた学校から始まる…。

●概要
 女神転生シリーズの流れをくむ外伝作品としてリリースされた「女神異聞録ペルソナ」の続編で、前作の3年後を舞台とする作品。およそ1年後には続編として「ペルソナ2 罰」も発売された。
 「現代が舞台」「学園もの」という要素は受け継いだが、女神転生シリーズ恒例となっていた3Dダンジョンの廃止のほか、悪魔交渉の簡略化・戦闘のスピードアップなど様々なチューンアップが施され、前作以上にライトユーザー向けの作品となった。

●ストーリーとキャラクター
 今回は、噂がどんどん現実のものになるという珠閒瑠市が舞台。時間軸は前作のセベク編エンディングから直接繋がっており、前作主人公を除くほぼすべてのメインキャラクターが社会人となって再登場する。魅力が高かった前作キャラの登場は非常にうれしい。そのうちゆきのさん(今作ではユッキー)がメインキャラクターとして2作連続参戦となった。
 序盤は「自分の携帯番号に電話をかけると願いがかなえられる」ジョーカー様の話からスタートするが、これは前作のペルソナ様遊びに通じるもので、導入としては前作からの繋がりを意識させる完璧なスタートのように思う。

 ただし、中盤以降マイヤの託宣というキーワードがメインを張って以降、ナチスドイツの登場あたりから話が急にすっ飛んでいく印象。まあこれは前作でも同じような感じだったが、一つの市内を舞台とする作品であるにも関わらず急に世界的な話に飛んでいくあたりがどうにも性急すぎる感じがしなくもないと言うか。面白いんですよ、面白いんですけどね。
 ヒトラー登場も今ではちょっと考えにくいキャスト。やはりまずかったのかリメイク版では「ヒューラー」という名前に変わったようだけども。
これは完全に好みの問題だが、どうにもギンコのキャラクターが受け入れ難いと言うか何と言うか…

 ストーリー展開によって変わるテキスト量が非常に多く、それが主要キャラだけではなく一般の住民たちにまでしっかり生かされているのは見事。ゲーム全体通しても一市内のみと狭い舞台だが、ストーリーが少し進んだり噂が広まったりすると話すセリフがどんどん変わってゆくので、さほど狭さを感じない。これは前作からこだわっていたと思われる部分だが、さすがだ。

●噂システム
 街の人々などから噂を様々仕入れて葛葉探偵事務所に持っていくと、その噂の内容が実際のものとなる仕組み。例えば単なる洋服店が噂によって防具屋に変わったり、ゲーセンがカジノに変わったりといった具合。同じ店の噂でも出所によって内容が変わるというのもあり、「値段が高いけど質は良い」「値段が安くて質はそれなり」という噂を両方聞いた場合、どちらの噂を広めるかはプレイヤー次第で、広めた噂通りの品揃えになる。

 ストーリーの中だけで事象を完結させず、実際にプレイヤーの手で噂を広めて街の中身を変えていけるというこの仕組みは本当に面白い。実際噂の数自体はそれほど多くなくそこまで自由度のあるものではないのだが、これをやらせるかやらせないかだけでも序盤の導入が段違いだったろうと思う。これはすごい発想。

●戦闘
 前作でのテンポの悪さをさんざん指摘されたんだと思うが、 技一つ一つのモーションにまでこだわった前作と比べると(特に敵側が)少し落ち着き、テンポは向上している。ただ早いかと言われるとそこまででもなく、遅すぎ→ちょっと遅めくらいの変更。
 ターン制ではなくなり、敵味方の順番の中にいつでも割り込んで参戦キャラ全員の行動や順番を調整できるようになったので、難易度はだいぶ下がったように思える。癖のある敵もだいぶ減った感じ。それでも後半・特にロンギヌスあたりからはちょっと間違えると全滅する程度の緊張感を味わえる。

●ペルソナ
 悪魔と交渉してカードをもらうというのは前作と同じだが、悪魔固有のカードをもらうのではなく、悪魔ごとに設定されたアルカナのタロットカードをもらうように変わり、前作よりも分類が簡単に。悪魔との交渉で喜びを上げると「契約」することができ、契約中の悪魔からはフリータロットカードが入手可能。フリータロットはFOOL以外の好きなアルカナに変えることができる。
 キャラクター1人につき4種類の交渉方法+複数キャラクターでの複合交渉もあるので、結果1悪魔に対してどの交渉がよいか総当たりせざるを得ず、さすがに選択肢が多すぎるのでは…と思うことはあった。

 今まで当たり前だった「合体」という要素がなくなったので若干味気なくなった感もあるが、ライトユーザー向けを標榜していて全くそうなっていなかった前作の反省と考えると、仕方ない面もあるか。

●総評
 テンポの悪さは正直言って良くはなったけどまだまだという感じで今プレイするとかったるい感は否めないが、3Dダンジョンがなくなっただけでも難易度は大きく下がっており、前作よりは初心者に入りやすい作りになったのは間違いない。
 前作から続く丁寧な作り・現代を舞台にした独特の世界観は健在で、雰囲気が好きなら買い。戦闘はちょっと耐えてほしい。