[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SCE/G-Artists
発売日:1996.07.12
ジャンル:RPG
実勢価格:100~300円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2011.11.30

ポポロクロイス物語

 ポポロクロイス王国の王子、ピエトロの10歳の誕生日を祝う華やかなパーティーが開かれていた夜。突然ガミガミ魔王と名乗る盗賊の襲撃により、王家の宝「知恵の王冠」が盗まれてしまう。知恵の王冠を取り戻すため、2人の兵士とともに旅立つこととなったピエトロ王子。その後、死んだと聞かされていた母親が実は生きているということがわかり、母親を探すために更なる旅を続けるが…
 後にやるドラシリーズなどをプロデュースした、SCEのソフト開発部門「シュガーアンドロケッツ」の作品。製作は「パラッパラッパー」「I.Q.」のジーアーティスツ。(現在はepicsとなっている)

 すべてが2Dドットで描かれたかわいらしいグラフィック・イベント時に挿入されるアニメーションが大きな特徴で、全体的に漂うほのぼのした空気感が非常に良い。登場2年半も経って3Dポリゴンでのグラフィックが当たり前になりつつあったPSのソフト群からするとちょっと異質だったかもしれないが。魔法などのエフェクト類も全て2Dによるドット描画となっている。

 ドットで描かれた世界は見事。キャラクターの表情がまたうまく出来ており、一人ひとりの動きが楽しい。キャラ付けも良く、ピエトロ王子やナルシア・白騎士・ガミガミ魔王などの主要キャラクターはもちろん、ストーリーに関わらないようなキャラクターでも、メッセージの一つ一つが作りこまれていると感じる。手抜きがないと言うかね。
 RPGってキャラクターをいっぱい出さなきゃならないので、家の中の一般市民とかになってくると正直どうでもよくなりがちだとは思うのだが、ここをうまく作れるゲームはいいゲームだと思うのですよ。独特の世界観を生かすにはどのように作ったらいいかをよくわかっていたと思う。

 全編に渡り斜め視点、いわゆる「クォータービュー」を採用し、街とフィールドが同じ大きさで描かれる。同じようなタイプのゲームにMOTHERシリーズがあるが、MOTHERシリーズでは戦闘画面では切り替わるが街とフィールド切り替えはない。このゲームはまったく逆で、街とフィールドの切り替えはあるが戦闘画面との切り替えがなく、戦闘が完全シームレスで展開される。全体的なテンポのよさにも一役買っている印象(一部フィールドで初期配置にたどりつくのに時間がかかったりはするが)。
 若干の複線はあるものの、基本的には行った先々で新たな展開に突入するという古典的なRPGであり、目新しい意味での驚きはないものの、基本に忠実で大きな無駄がなく、非常に進めやすいゲームだとも言える。

 戦闘については、マス目を移動して敵と戦う、ちょっとしたシミュレーション風味の戦闘となっている。ただ、遠すぎて敵までまったく届かない場合を除いて、マス目を気にして戦うことはそれほど多くない。範囲攻撃がほとんどないこと・攻撃すると自動で近くまで歩いていって攻撃を仕掛けるなど、親切設計なことが理由に挙げられる。
 このゲームならではのシステムでは、「ガッツ」がある。気合いコマンドでガッツを溜めることで、攻撃力を上げられるというもの。ガッツが0になると大幅に攻撃力が低下する。演出を簡略化することで戦闘のテンポ自体はさほど悪くならなかったので、まあ悪くないシステムだったのかなと。真新しい内容でもないけどね。

 戦闘バランスは意外と厳しい。中盤以降、通常モンスターですら通常攻撃・魔法攻撃ともに強力で一撃死したりすることも多く、全体攻撃まで強いので、ザコ敵の全体攻撃2回で全滅しかかることすらある。序盤で覚えほとんどリスクなく出せるナルシアの大魔法「いのちのしずく」(味方1名をHP1で復活させる)が大活躍することになるほか、戦闘が終わると倒れたキャラはHP1で自動復活する仕様のため、すぐ復活できること前提のバランスなのか?と思わなくもない。

 ちょっとなぁと思ったのは回復アイテム。今作では、戦闘中に使えるアイテムは1キャラ2つまでと決まっており、アイテムをそれぞれ装備して使う(複数キャラが同じアイテムを重複して装備することは可能)ことになっている。
 こういった前提があったからなのか、回復系アイテムの使い勝手のよさとコストパフォーマンスが半端なく、仲間1人のHPを完全回復する「いやしのかじつ」が90G、仲間全員のHPを250回復する「めぐみのあめ」が150Gなど、回復アイテムが非常に安くて、効果も高い。ヒールレイン(全体回復魔法)かけるくらいならめぐみのあめを使ったほうがいいときもあるくらいで、ちょっとアイテム無双すぎるかなとは思った。

 属性防御がいろんなボスを相手にするのに重要なゲームでもあるのだが、当たってみないとどんな属性の敵なのかわからないので、攻略本片手にプレイするような人じゃない限りなかなかこの重要性を認識しにくい。さりげなくイベントでわかるとかしてくれると良かったような。

 全体的な感想としては、バランスに多少難はあるものの進めないようなものではなく、世界観・空気感が非常に優れたゲームで、あまり人を選ばない(誰でも溶け込んで行けるタイプの)ゲームかと思う。グラフィックは今見てもなかなか丁寧な出来でこちらも好感。