[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SCE/プロキオン/コントレイル
発売日:1998.10.29
ジャンル:RPG
実勢価格:50~200円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2014.02.20

レガイア伝説

  

 天を生み、地を生み、海を生み。そして、この世の全ての森羅万象を生み出した神は最後に人間と共に獣(セル)を創生した。太古から人間と獣はお互い共存し合っていたが、やがて時代は変貌する。
 およそ10年前、レガイア大陸の北部、ソルとコンクラムという大国が戦争を始めた。戦争のさなか、コンクラムの皇族たちは獣を凶暴化させる霧を発生させ、戦争に終止符を打とうと画策していた。しかし、霧は人間の手に負えるものではなく、人間たちは霧によって凶暴化した獣達に徐々に搾取されていき、やがて文明は崩壊した・・・(Wikipediaより。一部改変)

 「霧」の脅威に晒される世界を舞台に、「聖獣(ラ・セル)」との出会いを果たした主人公・ヴァンが、世界に被った霧を晴らすために旅立つRPG。開発は続編「レガイア デュエルサーガ」や「絢爛舞踏祭」(開発協力)を手がけたプロキオン。プロデュースをSCE子会社コントレイルが担当した。

 十字キー上下左右に上蹴り・下蹴り・左手・右手がそれぞれ割り当たっていて、規定の回数分(行動力ゲージ)のコマンドを入力することで、さまざまな連続技を繰り出して敵を攻撃する「タクティカル・アーツ・システム(TAS)」を採用している。
 特定の順番で技を繰り出すと固有技の「アーツ」が発動、効果的なダメージを与えられるほか、アーツの組み合わせで発動する「スーパーアーツ」や奥義書を手に入れることで覚える「ハイパーアーツ」・最高威力の隠しコマンド「ミラクルアーツ」も存在する。
 画面上には連続ヒット時にヒット数と合計ダメージが記載され、さながら格闘ゲームのコンボ時のような演出となる。

 まず、仕組みは面白い。技表もあるので見ながらコマンド入力が出来る(スーパーアーツが表示されないのが難点だが)し、技がどんどん繋がっていってアーツに繋がる連続攻撃は爽快。ミラクルアーツのノーヒントっぷりがひどいなあと思ったくらいか。入力数9のコマンドを偶然発見するなんて不可能に近いだろう。
 このゲームの半年ちょっと前に「ゼノギアス」が出ており、コマンド入力で必殺技に分岐していくスタイルがちょっと似ているのだが、コマンドの入力順によって明らかに威力を変えられる・パターンが多いなどの面でこちらに分があるように思う。コンボ数が多くなるので、アーツが絡むとテンポが悪くなる(特に後半)が。

 キャラごとに行動力ゲージがあってその回数分だけ攻撃できるというのは先に書いた通りだが、アーツについては発動するのに「AP」と呼ばれるポイントが必要で、このポイントを溜めるのが「気合」コマンド。防御としての役割もあり、気合コマンド発動ターンは食らう全てのダメージが半減する(APは敵の攻撃を受けた際にも溜まる)。

 もうひとつ、戦闘における特徴は「獣(セル)」で、主人公たちが持つことになる聖獣(ラ・セル)には、モンスターとして登場するセルの力を吸収する能力があり、吸収したセルは「召喚獣」という形で戦闘中に呼び出すことが出来る。ファイナルファンタジーシリーズのオーソドックスな召喚獣のスタイルと同じく、ほぼ敵に対してのダメージ源となる。このセルは使っていくことでレベルが上がり、属性に応じてさまざまな付加効果がつく仕組み。
 エンカウントするセルを吸収するというのはなかなか面白い試みだが、経験値かそれに準ずるポイントのようなものによるレベルアップならまだしも、使った回数によるレベルアップというのがどうにも腑に落ちない。演出はそれこそFFの召喚獣並みに気合の入った内容で時間もかかるのに、こんな召喚獣を何度も何度も”レベルアップのために”使わせるのが果たして面白いのか。
 レベルアップに付加価値はつくものの、技自体の威力はそうそう変わらないので、弱いセルはやっぱり弱いまま。終盤は使えるセルが数種類に限られ、最終的にはコスパの問題から回復系のスプーンしか残らないという結論になる。最終盤でも最大所持MPが300~400に対して、ザコ敵を殲滅すら出来ないセルにMP90~160も消費させるとか、とてもじゃないが育てさせようとしているようには思えない。プレイ時間をむやみに増やしているだけというイメージ。

 気合コマンドの全ダメージ半減があまりに優秀なので、回復系のセルさえ入手を怠らなければ全滅することはほぼなく、むしろ戦闘不能になることすら稀。ボスはほとんど全体攻撃持ちだが、発動ターンが決まっているか発動の1ターン前に専用の行動があるなどしており、気合コマンドで容易に半減可能。攻撃面では、ミラクルアーツやスーパーアーツを覚えられなくてもハイパーアーツのみでもほぼ対処できてしまうなど、戦闘は正直言って簡単すぎる節がある。
 何でもかんでも緊張感のある戦闘にすればいいというものでもないが、最終盤のボスですらほとんど怖さを感じないレベルというのは、いくらなんでも問題があるだろう。

 このゲームで褒められる部分は、ウリにしていたと思われる戦闘部分よりもむしろ全体を彩る世界観や演出のほうだろう。霧で覆われ白く霞んだ不思議な世界。創世樹の開放によって一気に霧が晴れてゆく演出。フィールド・キャラともにフルポリゴンで、もちろん今と比べるとグラフィックには制約が多い中で、動き・表情ともによく頑張っていたと思う。
 音楽についても、不思議でちょっとダークな世界をしっかりと生かすサウンドになっている。作曲は主に映画音楽などを手掛ける大島ミチル氏。戦闘音楽も含めて一般的なRPGとは一線を画していたようには思うが、非常に印象に残る曲が多かった。初めてワールドマップに出て「霧の荒野」を聞いたときのインパクトは忘れられないものがある。

 今作ではドルク王領・セブクス群島・カリスト皇国というおおまかな地域ごとに霧を晴らす旅になるが、地域ごとのマップしか存在せず、船などの乗り物も一切出てこない。大陸全体のマップすら存在しないという異色な作りで、得てしてこういうゲームは世界が狭く感じてしまうものだが、今作に関しては、そのようなマイナスは一切感じない。
 ヴァンの故郷リム・エルムをはじめ、ソルやコンクラムなど、それぞれの街が物語を持っており、通り道になるだけの場所がほとんどないというところが一番の要因だろう。特に、ソルでのガゼール関連イベント・コンクラム到着以降の関連イベントは必見。(コンクラムのイベントは苦手な人もいそうだが)
 良くも悪くも次はここへ行って、ここへ行ってという繰り返しで、困ったら大体ラ・セルが何かしら助けを差し伸べてくれる…というありがちな展開なので、ストーリー展開として面白味があるわけではないが、レガイアの世界にはまることの出来る魅力は確かに存在する。

 さすがはハードデベロッパーSCE製ということなのか、他ゲームで使っているブロックを含めてのメモリーカード管理が可能な(他ゲームで使っているブロックを消したり出来る)あたりも地味ながら面白い仕様。セーブそのものも速い。

 最高の雰囲気を持ったゲームとして間違いなくオススメできる優秀作品。難点はいろいろ挙げたがほぼ戦闘部分に限られる上、先に書いた通り難しくないので、普通に進めるだけなら何ら問題ない。この空気に浸れ。
 空気に浸るで思い出したが、日本が霧に覆われるという内容のCMが素晴らしい出来なのでぜひ見て頂きたい。ニコニコ動画には単品で上がっている模様。