[Data]
ハード:Playstation
メーカー:アイディアファクトリー
発売日:1997.10.09
ジャンル:シミュレーション
実勢価格:200~400円(中古価格)

評価:★★☆

sf04

sf05

[Review] 2010.02.25

スペクトラルフォース

sf01 sf02 sf03

 40カ国以上がひしめく世界「ネバーランド」の国々の中から一つを選び、大陸統一を目指して戦いを繰り広げるシミュレーションゲーム。アイディアファクトリーは「IFネバーランド」と呼ばれる作品群を多数手掛けるが、今作は「スペクトラルタワー」に続くシリーズ2作目という扱い。1000人vs1000人で繰り広げられるド迫力の戦闘シーンと話題になった作品で、SSのゴチャキャラシミュレーション「ドラゴンフォース」とは一部製作スタッフが同じ。確かにちょっと似てはいる。

 1ヶ月をひとつのフェイズとして、12ヶ月で徴兵・人事・戦闘・外交・内政の5つのコマンドを実行していくのだが、1ヶ月ごとにコマンドが決まっているというのが他のシミュレーションゲームと大きく異なる点。しかも、そのコマンドに関しても、1月の徴兵フェイズで出来るのは、自国力に応じた徴兵と商人を呼んでの通貨の売買の2つのみ。
 2月・8月の人事フェイズで出来ることは、在野にいる武将を探すことと各武将を役職につかせる&解雇すること。(武将は最大10人まで)そのほかのフェイズも同様で、1回のフェイズで出来ることはわずか2つ。何をするかが決まっている上に出来ることが少ないというシステムで、極力シミュレーションの難しい部分を取り払った作りと言える。

 徴兵できる兵士数は国力の大きさで決まる。国力を増やすには、他国を占領するか、内政フェイズで自国に投資すること。スタート時にいきなり他国に攻め上がるのは大変なので、基本は内政フェイズで自国に投資しまくって国力を上げるのが基本。頭を使わなくていい分、作業になりやすい部分でもある。

 各国の城には防御力の設定(結界)があり、戦闘に勝利した後、城の防御力を0にして始めて占領となる。当然多いほうが占領されにくくはなるのだが、結界が20あっても一発で落とされるときもあり、どういう基準の数値設定なのか疑問(攻略本によると兵力の多さらしいが)。序盤は本国が落とされては困るのでこの結界強化がかなり重要なはずなのだが、1回の強化に通貨50とコストも高く(投資は1回につき通貨10)、上がる量も多くて4(武将の知力による)と大して上がるわけでもない。正直結界にわざわざ50も払うよりは自国に5回投資してさっさと攻め上がったほうが早い。全般的に位置付けが不明なシステムだった。

 最大のウリである1000人vs1000人の戦闘部分。各武将にはそれぞれ3種類の必殺技があり、これをどう使うかが最大のポイント。武将そのものの能力と兵士の種族による気候や地形との相性もあり(必殺技も気候によって出せないものがある)、一部必殺技で気候の変動も可能なのだが、気候変動技が使える武将が少なく、重要性がいまいち見出せない。

 戦闘前には8種類の陣形を選択するが、陣形同士の相性はそれほどなく(防御力の違いに直結するらしいが、プレイしていて実感することがない)、必殺技の当たり方や突破人数による違いとなっている。
 戦いに勝つかどうかは完全に必殺技の使い方による。強い必殺技で相手の兵力を削ぎ、あとは兵力差で押し切るという戦い方。そのため、必殺技が弱い武将はいくら武力が高くても使い道が少なくなる(武力最強なのでまだ使えるが、ジャドウなどがいい例)。…というよりも、使える必殺技自体がそれほど多くないため、使える武将を引いた(もしくは初期状態でいる)ところが強い。

 不如帰の持つ裏奥義・阿修羅陣や手裏剣系上位・炎弾の呪文・あと風系などの汎用系のほか、ヒロや大蛇丸・グリーザなどの固有技が強い。あと上位の回復が使える(グリーンノアなど)アゼレアなどもなかなか。まあ大体は難易度の易しい国の君主キャラになるのだが。裏奥義・阿修羅陣に至っては(相手の陣形にもよるが)1000人の部隊を200人そこそこまで減らせる鬼のような威力を誇る。士気さえ上がればスタートからいきなり発動することも可能なため、不如帰あたりは中盤以降、特に先鋒として大活躍するだろう。
 それ以外は龍爪閃系の上位や亜空間の呪文がそれなりに使えたりするくらい。気功弾系や樹木系・大地系などは50名減らせればいいほう、とあまりに必殺技として使えない。そもそもがキャラゲー要素たっぷりなので「弱くても愛を持って使ってくれ」ってことなんだと思うが、それにしても露骨過ぎる差を作ったものだと思う。

 100人以上の武将による数々の裏ストーリーがあり、それぞれの人間模様も描かれる。とは言え戦闘前の会話くらいなので、あとは脳内であったり、その後数々発売された各種ガイドブックなどでの補完が必要で、会話部分だけ取っても複線が何かはほとんどわからないだろうと思う。これをIFは多数のイベントと呼んでいたようだが、さすがにその言い分は無理がある。

 シミュレーション部分に関してはやることが少ないと言われればそれまでで、ほぼほぼ国力増強→攻め落とす→徴兵→国力増強…のループ。徴兵が1月にしかないので3月などの早い段階でむやみに兵力を割けず、9月・11月あたりの攻撃フェイズで仕掛けるのがデフォルトに。国力が1000を超えるとそれ以上兵を増やせなくなるため、最終的には投資も必要なくなり(増壁もほぼ必要ない)内政フェイズをスルー、武将が10人までなので10人揃った段階で人事フェイズもスルー。外交フェイズも後半は使う必要がないのでほぼスルー。
 …ということで、中盤以降は半分以上のフェイズを飛ばすこととなり、ただただ単調に感じる人も多いだろう。戦闘部分も上記の通り”必殺技が全て”という思い切り過ぎたバランス感覚で、強い必殺技を持った武将を集めたもの勝ち。

 誰でもプレイできるというわかりやすさの部分と、あまりにいろいろ削減しすぎた結果の特有のバランス・作業感。とにかく簡単・1回のプレイ時間が少なめなどのメリットもあり、いい面と悪い面を数々備えた野心的なゲームという感想。簡単なシミュレーションとしてはひとつ新しいアプローチだったと言える。