[Data]
ハード:Playstation
メーカー:アイディアファクトリー
発売日:1999.08.26
ジャンル:シミュレーション
実勢価格:300~500円(中古価格)

評価:★★

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[Review] 2012.06.01

スペクトラルフォース 愛しき邪悪

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 アイディアファクトリーのシミュレーション「スペクトラルフォース」シリーズ第3弾。従来作品と同様、40ヶ国の国々の中から1国を選び、大陸統一を目指して他国と戦うが、スタート時から数ヶ国から選択できた前2作とは違い、今作は1回目に必ずムロマチ国を選択し、クリアしてから選択国が増えるという形に変わっている。
 ムロマチ国は君主がオロチ丸からシンバへ変わり、このシンバのエンディングを正史としてこのあとのシリーズストーリーへと続くという形となっている。舞台は前作の3年後で、いくつかの国で君主や武将が代わっているほか、次回作で主役を張ることになるメイマイ騎士団などの勢力が初登場している。

 基本のシステムは2をベースにほぼ変わらず。1年ごとにフェイズの内容が変わり、月ごとに決まった人事・外交・戦闘などのフェイズを実行してゆく。マップや画面上部のフェイズ表記など、基本画面はすっきりして見やすくなった印象。

 大きく変わったのは戦闘関連。前回3すくみになっていた陣形は一新され、「通常陣形」と攻撃重視の「攻撃陣形」(前作の中央突破陣形に近い形)のほか、敵武将の必殺技を完全無効化できる「対魔陣形」(一定の士気が必要)と合わせて3種類からの選択となった。前作でランダム発動だった最強陣形「三方不敗」「波状防壁」(今作では波状陣形)は、それぞれ武力と知力が10の武将が発動できるように変わっている。前作のような”武将の能力よりも陣形のほうが”という状況からは改善されて、これでようやく武力・知力が高い武将のほうが強いという本来の形になったと言えるだろう。
 必殺技の発動条件は前作と変わらないが、技ゲージの上がり方が前作までと比べると大きくなった印象で、レベル2あたりであればかなりの頻度で発動することが可能になった。対魔陣形が出来たからだろうが全体的に攻撃範囲も広がったようで、攻撃陣形発動時に必殺技をぶつけるとかなりの人数を削ることが出来るようになっている。
 ちなみに、戦闘画面自体も前作の寄りすぎ視点からは改善されて、引き気味の見やすい視点へと変わっている。

 前作と比べると、敵国の攻め上がり方が素早くなった印象で、気づけば自国の周りを囲まれるような形で侵攻されているようなことも。今までのように内政フェイズで自国に投資して…とゆっくりしているとどんどん敵国に勢力を拡大されていく。自国に攻め込まれた際の対処も3すくみがなくなった分前作よりは難しくなっているため、攻め方については前作よりスピード感が求められるようにはなっている。
 その関係で、前作までは位置付けがいまいち不明だった「増壁」にもようやくスポットが当たるようになった。増壁で耐久力を挙げておき、年序盤の無駄な兵力低下を防ぐ…などの使い方が効果的になったので、このあたりも含めていい調整だったのでは。

 そのほか、「同盟」の重要度が増したことも変更点のひとつ。前作までも他国に同盟を持ちかけることは可能だったが、即効で破棄することが出来、同盟した次の戦闘フェイズで破棄されて攻め込まれることすらある(しかも同盟破棄のデメリットも一切ない)など、何のための同盟なのかよくわからない状態だったのだが、今作では戦闘突入時に一定確率で同盟国から援軍が来るようになった。複数の同盟国から援軍が来ることもあるなど、同盟によって戦局が変わることが出てきたのは大きい。
  同盟破棄のデメリットが未だないことや、同盟国だけが残った場合でもクリアにならないので結局自国から同盟破棄しなければならないなど、もうちょっと改善して欲しい部分はあるのだが。

 そのほか、前作でも国を滅ぼした段階で強化アイテムをもらえる仕様になっていたが、今作では城を落とした段階で出るようになったのでアイテムのもらえる絶対数が増えたほか、兵種を変更できる「白の薬」というアイテムが新しく登場している。

 主な変更点はこのくらいだが、全体的には戦闘部分を中心に難度が上がっている。前作があまりに簡単すぎたせいもあり、すごく簡単→簡単になったくらいの変更だが、前作で抱えた難点を出来る限りうまく潰した感じで、さすが3作目ともなると調整がうまく出来たのかなと感じる部分だった。
 …とまあ、ここで終わればシリーズ作品としてまっとうな進化を遂げたゲームとして賞賛できるところだったのだが、これで終わらないあたりがさすがアイディアファクトリー。2のレビューでも「詰めが甘い」と書いたが、やっぱり詰めが甘かった。

 今作の最大の難点が「テンポの悪さ」。戦闘画面自体は引き気味の視点になって見やすくはなったのだが、処理能力の問題なのか何なのか、進軍の動きがものすごく重くなっている。それに加えて、これは第1作でもあったが、陣形同士でぶつかった際に一列だけ残って勝ち抜き戦のような状況になってしまい、そこだけで時間を取られるケースが増え、結果的に1ターンに取られる時間が前作の倍以上になるという状態を生み出してしまった。援軍で戦闘に参加する武将が増えたのもなおさら戦闘時間の間延びに拍車をかけている。
 攻城戦に関しても、グラフィックの向上による弊害なのかやっぱり重くなってしまい、このゲーム内で最も時間を取られるであろう戦闘&攻城戦の2つが前作より大幅に時間を食ってしまうという。

 基本のシステムが変わっていない以上、ゲーム後半になってくるとほとんどのフェイズをスルーして弱った相手に攻め込むことだけしかやることがなくなり、必然的に戦闘&攻城戦だらけになるため、上記の難点がよりいっそう際立つ。
 スペクトラルフォースシリーズのいいところは「簡単でテンポ良く、1回のクリア時間が短い」ことだったと思うのだが、今作は「難易度が上がり、テンポは悪くなって時間がかかるようになった」と完全に逆のアプローチで、いいところは初代から続くキャラクター性のみ。そのキャラクター性の部分も、会話イベントはかなり増えたものの、キャラが多すぎ&何週もしないとイベントをこなせない…とあって、相変わらず全体観を把握するのが難しい。

 ひとつ直すと、それ以外の欠点が噴出する…という、2のときと同じパターンをまたもやってしまった感のある作品だが、前作は欠点よりも改善部分が目立っていたのに対し、今回に関しては噴出した欠点があまりに大きすぎたように思える。会話イベントだって、そもそも何カ国もクリアしないと全体像が見えてこないのだから、クリアまでに時間がかかってしまっては見る気を失くすわけで。もったいない。