[Data]
ハード:Playstation
メーカー:バンダイ/サイバーコネクト
発売日:1998.04.16
ジャンル:3Dアクション
推定売上本数:約9.7万本
実勢価格:500~1,500円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2010.09.19

テイルコンチェルト

 「イヌヒト」「ネコヒト」と呼ばれる獣人たちが住む浮遊大陸世界”プレーリー”を舞台に、イヌヒトの警察官である主人公ワッフルとネコヒトの盗賊団「黒猫団」との戦いを、フルポリゴンと高品質なアニメーションで描く3Dアクションアドベンチャーゲーム。DSで同じ世界観を受け継いだゲーム「ソラトロボ」が発表されたので、10年以上経った今になって注目度を増しているゲームだろう。

 まず、世界観がとても良い。結城信輝氏の可愛らしいイラストをフルポリゴンで可能な限り再現した動きの良いキャラクターたちと、全体に漂うほのぼの感。機械文明・獣人という不思議な世界を、ポリゴンと声で上手く表現できている。鉄巨神の存在やキャラクター設定等含め、いろんなところにスタジオジブリ作品、特に天空の城ラピュタの影響を色濃く感じる。

 キャラクターは、登場する数こそ多くないものの全体的にきちんとしたキャラ分けがされており、非常に覚えやすく感情移入しやすい。チョイ役はほんとにチョイ役で、グレイおじいちゃんなどはけっこう重要そうな役割を持って出てきているのだが1度会ったらそれで終了とそっけないし、テリア姫も最初はものすごい振り回し方で猛威を振るうも後半失速するし、シアンなんてやられ役でしかないというかわいそうな役回り。声優置鮎さんなのに。もうちょっとスポットを当てても良かったのでは?と思わなくもないけど。

 代わりにワッフルと黒猫団の三姉妹・黒幕の武器商人フールとのストーリー展開はかなりいい感じで描かれており、ぶっちゃけ先が見える展開ではあるので驚きはないのだが、アニメーションとポリゴンキャラがすばらしい動きで展開を支えてくれている。アニメの中だけではなく、ポリゴンで描かれるキャラクターがそれぞれいきいきした動きをしているのが好印象。ちょうどこのゲームの前にプレイしたのが「グランストリーム伝記」で、このゲームはポリゴンキャラの魅せ方があまりうまくなかったので、このゲームとの対比がずいぶんあったのはよく覚えている。

 アクション部分について。まずアクションは大きく分けて3つで、落ちているものを拾う(○ボタン)、子猫の捕獲や敵の直接攻撃に使うバブル弾(□ボタン)とジャンプ(×ボタン)。まあすぐに覚えられる操作系だろうと思う。マップは部屋の中を走り回って邪魔をする子猫たちをバブル弾で動きを止めながら○ボタンで拾って捕獲するマップと、ジャンプを駆使したアスレチックマップの大体2種類。あとは猫ロボットを破壊するボスステージとなる。

 まず、ワッフルが動かすポリスロボの動きにかなり慣性があり、この動きに慣れるのが結構難しい。左右が特に変な動きで、押し始めは左右に回転して、少し経つと押した方向に走り始めるといった動きをする。狭い足場をジャンプして渡るような場面も多いゲームだが、この慣性のおかげで方向を合わせるのがかなり難しく、ジャンプしようと思った方向にジャンプしていないことがままある。
 ポリスロボの操縦感を出すために入れた(と推測する)独特の慣性だろうから、これを操作性が悪いの一言で片付けてしまうのは無理があるが、それであればもうちょっと足場の大きさや配置を考えるとか、ロボ自体の機能である程度フォローできるようにするとかしてほしかった。エアリーフで使えたロボジェットの簡易版みたいなのを他のステージでも使えるようにするとか…

 視点は3Dアクションゲームではおなじみの自機の後ろから見る視点で、L1/L2で高さのみを変えることが出来るという内容。自機のポリスロボの向きを変えることでその向きを追いかけて視点がオートで変わってゆく仕組みで、向きを変えてから視点が追いつくまでに1秒くらいはかかるだろうか。この仕組み、目の前にいる敵を相手にするなら特に問題はないのだが、敵が視点外にいた場合に瞬時に対応が出来ないのは問題あり。特にバブル弾による攻撃を多用するこのゲームだと瞬時に視点が変わらないことが相当のデメリットになり、わざわざボタン長押しで照準まで合わせられるようになっているのに、ラグのあるこの視点のおかげで全く使わないという矛盾が起きる。

 結論として、ポリゴンによる視点と自機の動きをうまく生かせなかったというところで最終的にこのゲームの難易度自体をむやみに高めてしまった感がある。実際そんなに難しいのかと言われると別にクリアできないほどの難易度ではないのだが、自分の腕による部分よりもゲームシステム部分による要素が大きく、理不尽な難しさを要求される感じ。

 新作「ソラトロボ」の記事の中では、このゲームの失敗の理由のひとつで「対象年齢を低く設定したことで奥の浅いゲームと思われた」という分析がなされていたが、世界観や設定は中途半端な大人向けゲームよりもよっぽど考えられていたと思う(製作者サイドにもよほどのこだわりがあるんだろうことは伝わる)し、同じく対象年齢を低く設定したであろうアクションゲーム(しかも4ヶ月ほどしか発売時期も違わない)「風のクロノア」は売れている。当時のバンダイとナムコがそれぞれ出していたゲームなだけに、ブランドイメージで差がついたとも考えにくい。
 結局は世界観や設定云々よりも、ロボを操縦するというイメージの部分と、単純なゲーム自体のとっつきやすさの問題だったのではないかと個人的には思う。そもそも、製作者サイドで低年齢層向けだと思っていたこと自体が失敗だったのでは?とも思わなくもないが、今それを言っても仕方がないだろう。

 世界観に魅せられたファンの方も多いだろうし、逆にゲームの面で見てあまり評価の高くない人もいるだろうし。何せ人を選ぶゲームであることは間違いない。個人的には、そこそこのボリューム・クリアまでは何とかこぎつけるくらいの難易度・世界観等含めてさほど悪くないゲームだとは思うが、すごくお勧めできる部分とすごくお勧めできない部分が共存するゲームで、こればっかりは何とも評価しにくい。

 クセはあるが、ハマる人は大ハマリするゲームというところか。