[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SME/アクワイア
発売日:1998.02.26
ジャンル:3Dステルスアクション
実勢価格:100~300円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2015.01.14

立体忍者活劇 天誅

 PSP「勇者のくせになまいきだ。」シリーズや「AKIBA'S TRIP」などで知られるアクワイアが開発を担当、SME(ソニー・ミュージック・エンタテインメント)から発売された忍者ステルスアクションゲーム。第1作となった本作が大ヒットとなり、のちシリーズ化された。アクワイアは今作と次回作「天誅 弐」の制作を担当、3以降いったん製作から離れたものの、「天誅4」で再び開発に復帰している。そのほか、キャラクターの動きにはモーションキャプチャーを採用、ショー・コスギとケイン・コスギ親子がアクターを努めた。

 ストーリーはほぼ各ステージごとに分かれるショートストーリー形式で、終盤になると伝説の忍者「鬼影」・冥界の魔王「冥王」との戦いが待っている。主人公は力丸と彩女の2人いるが、どちらを選んでもストーリーやミッション数に大きな違いはなく、練習1+本編8の計9ステージとなっている。

 基本操作は、□の斬りつけ・×のジャンプ・△のアイテム使用がメイン。敵からの攻撃を受ける際に方向と逆方向に方向キーを押すとガード。 ○/R1がしゃがみ・L1で前方を自由に見渡す視点変更。L2/R2でアイテムの切り替えとなっている。立ち/しゃがみ時それぞれ、方向キー×2でステップが出せる。壁の近くで方向キー+R1で壁に張り付くことも可能。
 そのほか、最初から所持しているアイテム(忍具)に「鉤縄」があり、この鉤縄を使うことで屋根の上に登ったり、ジャンプで届かない足場を進んだりといったことが出来る。3Dゼルダのフックショットみたいな。

 敵の死角から近付いて攻撃することで、一撃で敵を倒せる「忍殺」を出すことができる。基本的には敵に見つからないよう動くのが大前提だが、どうしても倒さなければならない位置にいる敵もいる(見張りなど)ので、その際は隙をついて忍殺で敵を倒して進んでゆく。
 忍殺が決まった時の爽快感はこのゲームならでは(というかステルス系ならでは?)で、演出は地味ながらも楽しめる出来。敵が近付いた時には左下に「気」の文字が出てきて、敵が見えなくても感覚で伝わるようになっているので、そこからは壁伝いで少しづつ進んだり…といった、実に忍者らしい感覚を楽しむことができる。
 他にも、敵の視界に入った時には「視」が、見つかって戦闘態勢になると「殺」の文字が表示される。「気」や「視」の表示中は心臓の鼓動音が大きくなったりと、サウンドの面でもうまい作り。全体を通して、とにかく忍者・隠密という空気感は存分に味わえる内容だ。

 忍具の中では、爆発してダメージを与える「癇癪玉」と、煙で敵の行動を封じる「煙玉」の2つがかなり使える。癇癪玉は自分も爆発に巻き込まれる可能性はあるものの、ボス含めてすべての敵に通用しダメージも大きい。煙玉もボス含めてすべての敵に通用し、こちらは自分には一切影響ないというおまけつき。逆に最初から所持している「手裏剣」が使いにくい。
 「痺れ団子」は異色の忍具で、文字通り食べると痺れて行動不能になるものだが、犬などの動物はもちろん、人間でもおいしそうな見た目に吸い寄せられるという凄まじい食べ物として登場している。何の違和感もなく拾い食いしに来て痺れる敵は必見。

 アクションについてはちょっともっさり気味。ステップはあるがとっさの回避行動が取れないため、敵との戦いの最中には方向を合わせるのに苦労したり、横を向くのにやたら時間を要したりと、忍者らしからぬ鈍い動きになりがち。フレーム数の問題かキーレスポンスもいまいちで、忍殺を決めているうちはいいのだが、真正面からの戦いになる場合はなかなか大変。
 通常の移動中でもダッシュが遅い・とっさの方向転換が出来ないなど、かゆいところに微妙に手が届かない感が出ている。せめて敵に対してのロックオンでも出来ていれば話は違ったかもしれない。

 難易度としてはそこそこ高いが萎えるほどではない。敵の数がさほど多くなく、もし見つかったとしても大体1vs1で戦えるというあたりが救いになっている。まあ、上記の通りアクションに難があるので、正直2体以上の敵に囲まれたらほぼ積みになる勢いなのだが…

 忍者を題材にしたアクションゲームはファミコンの世代から多数出ていたが、隠密からはかけ離れたなぎ倒しアクションになっているものばかりだったので、忍者ステルスアクションというジャンルを一つ確立した本作の意義は大きい。