[Data]
ハード:Playstation
メーカー:スクウェア/ドリームファクトリー
発売日:1996.08.02
ジャンル:格闘アクション・3D
実勢価格:100~200円(中古価格)

評価:★★★★

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[Review] 2012.11.09

TOBAL No.1

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 ファイナルファンタジーシリーズなどで有名なスクウェアの所謂”次世代機”参入第1弾となった、3D格闘アクションゲーム。開発は今や違う意味で有名になってしまったドリームファクトリーだが、もともとは鉄拳・バーチャ双方の製作に携わったスタッフが揃っていた会社で、TOBALシリーズをはじめ「エアガイツ」など、格闘アクションとして新機軸のゲームを作っていた。スタッフの移り変わりなどは定かでないが、PS2あたりからいろいろおかしくなっていったようだ。
 次世代機と言えばポリゴン。ということで、この世代のゲームは3D格闘アクションが非常に多かった…と思いきや。これは自分で改めて調べてみて驚いたのだが、TOBALが出る前のPS陣営の3D格闘アクションは闘神伝1・2と鉄拳1・2、あとZERO DIVIDEの5本しかなかった。まだまだ格闘ゲームの全盛は2Dにあり、3D格ゲーが流行となるのは97年以降の話。当時としては意外に貴重なジャンルのゲームだったわけだ。

 基本システムの話に入る前に音楽について触れておきたい。今作はプロデュースをクロノ・トリガーでおなじみの光田康典氏が担当しているのだが、曲作りに関してはサウンドチームのメンバーに任せており、光田氏は一部作曲のみでほぼアレンジ担当となっている。その作曲メンバーは伊藤賢治氏(GBサガ・ロマサガシリーズなど)・浜渦正志氏(FF13・サガフロ2など)・下村陽子氏(フロントミッション・ライブアライブなど)・松枝賀子氏(FF10-2・バハムートラグーンなど)・仲野純也氏(FF10など)などなど、植松伸夫氏を除いたスクウェアサウンドチーム勢揃いという超豪華布陣。
 この豪華なサウンドはCD-DA音源でゲームCD中に入っており、CDプレーヤーで再生可能。ゲーム自体はおそらく100円くらいで買えるレベルかと思われるが、このサウンド面だけでも十分元が取れる出来だと思う。やっぱりEPONステージの曲が一番かな。

 さて。ゲーム本編で最大の特徴となったのは「全方向フリーバトル」のキャッチフレーズで大々的にアピールされた、全方向移動が可能な操作系。通常の格闘ゲームの十字キー↑はジャンプ・↓はしゃがみに当てられることがほとんどだったが、このゲームでは上下を奥移動・手前移動に割り当て、前後を含めた全方向移動を可能にしている。全方向移動と聞くと凄そうなイメージだが、実際は方向キー2回押しでステップ移動なので、フリーバトルというにはさすがに無理がある仕様。それでも相手の横や後ろに回り込んだり出来るのは面白い。この内容を発展させたのがエアガイツやソウルキャリバーシリーズあたりだろうか。
 そのほか基本の操作は、△で上段・□で中段・×で下段攻撃。R1でガード(R1+↓で下段ガード)となり、R1を押したまま△/×で上段・下段の強攻撃。R1と□は掴みとなり、ここから投げや打撃・さらには相手を動かすことも可能。リングアウトによる勝利があるので、相手を動かすことで優位な位置に移動したりといった戦略が立てられる。
 ジャンプはL1に割り当てられ、L1+×でダウン中の相手に攻撃するダウン攻撃(鉄拳シリーズで三島家が使える破砕蹴と同じモーションと思われる)。△と□はジャンプからの中段攻撃となっている。

 まず、攻撃を弱強にせず上中下段という割り振りにしたことは大きなポイント。△・□・×と割り振ったことも直感的でわかりやすく、R1のガードを絡めた操作との相性もいい。逆に、(配置するボタンもなかったのだろうが…)L1のジャンプと、すぐそばに位置する十字キーとの位置取りはあまり良くない。その場ジャンプはまだしも、方向に合わせたジャンプはちょっとやりにくい印象。
 掴みの攻防も面白く、掴まれた方も相手の動きを見ながら動かし返したり、投げ返したりといったことも出来、さらには相手に投げられそうになった場合も(タイミングはシビアだが)投げ抜けまでできる。
 ”攻撃をガードされたキャラのモーションが途中で止まる”という当時の最新鋭とも言える要素も導入している。例えば、蹴りをガードされると出し切る前に足を下ろすモーションに変わる…といった感じで、当然ながらガードしたほうが次の行動を有利に運べるようになっている。当時の3D格ゲーにはまったく存在しなかった新しいもので、しかも今作ではガードされた後のモーションからじゃないと出ない技まで存在するというこだわりよう。

 ガードからの攻防や掴みの攻防といった”駆け引き要素”が優れている反面、攻撃のモーションが全体的に地味・攻撃が当たったときのエフェクトがない・空中コンボはほぼ不可能…と、攻撃に限ると爽快感はそれほど高くない。
 加えて、ポリゴンにほぼテクスチャが貼られていないグラフィックも特徴的だが地味(Wikipediaではストイックという表現が使われていたが)で、駆け引き等々を奥深く楽しむまでのハードルがちょっと高すぎた感はある。

 ゲームメニューは少なく、登場キャラクター全員を倒して大会を制覇する「トーナメント」と2P対戦「VS」、そして入るたびに形の変わるダンジョンをクリアしてゆく「クエスト」の3種類。ドリームファクトリーはこういうローグライクな仕組みをよく取り入れるが、第1作からこうだったんだなーと。
 今作のある意味メインとも言えるのがクエストモード。全方向に動ける操作系を生かして、通路で構成されたダンジョンを下って行くモードで、道中には敵も現れ、格闘で敵を倒して進む。計4つのレベル(Episode)があり、クリアするごとに使用キャラが増えてゆく。後発の「TOBAL2」や「エアガイツ」でも採用されたモードの前身とも言えるもので、ボリュームとしてはそこまで大きくはないが、それでも最後のエピソードは30フロアを下っていく上に出てくる敵も強く、かなりの歯ごたえとなっている。
 難点も。先に書いたとおり、このゲームは”L1でのジャンプと十字キーの相性があまり良くない”のだが、それにも関わらず、クエストの最中に落とし穴やトラップなどを飛び越えるためのダッシュジャンプを要求される場面が多い。仕掛けを用意するのはわかるが、ジャンプを絡める仕掛けは必要なかったんじゃないだろうか。もうちょっと格闘部分に特化して欲しかった。

 FF7の体験版やムービーなどが収録されたもう1枚のディスク「SQUARE'S PREVIEW」の存在感が果てしなく大きかったこともあり、「FF7体験版のオマケ」などと揶揄されることも多かったタイトルだが、見た目とは裏腹に中身は丁寧に作られており、動きの良さも含めて、今でも楽しむのに十分なクオリティを持っている。特に、システムを理解している同士での対人戦はとてつもなく面白い。

 地味だと侮る事なかれ。噛めば噛むほど味の出るような、そんな良さのある作品。巷の評価は2が圧倒的に高いが、個人的には2よりも1のほうが好きだったり。2ってグラフィックはだいぶ良くなったと思うけど、余計なシステム追加しすぎだと思わない?