[Data]
ハード:Playstation
メーカー:ナムコ/日本テレネット
発売日:2000.11.30
ジャンル:RPG
推定売上本数:約67万本
実勢価格:150~300円(中古価格)

評価:★★★

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[Review] 2012.01.06

テイルズ オブ エターニア

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 ナムコのRPG「テイルズ」シリーズの「ファンタジア」「デスティニー」に続く第3作。初のディスク3枚組という大ボリュームとなり、イベントの合間合間にCGムービーが挿入されたり、キャラクターそれぞれに声が当てられたりといった演出面での強化に繋がっている。

 インフェリア・セレスティアという2つの世界がオルバース界面と呼ばれる境界を挟んで対面で存在、空を見上げると対面する世界が見える…という、他のゲームを見渡してもなかなか出てこないような不思議な世界観でのストーリーが展開される。

 まず、グラフィックの強化が凄まじい。前作のリメイク版「ファンタジア」と比べても、約2年経っての進化の度合いがすごく、街や洞窟など2D一枚絵で描かれた背景の美しさは必見の部類。このくらいの時期になると、背景がフルポリゴンなんてゲームがもはや当たり前になりつつあったと思うが、あえて2Dにしたことでの良さが目立っている印象だ。
 フィールド画面のほうは今作からフルポリゴン化を実現し、視点の変更も従来作品よりスムーズに進化している。

 2Dの街や洞窟に関しては、細かく綺麗に描きすぎてわかりにくい&移動時にしばしば引っかかるという弊害も生んでいるのだが、ダッシュできる(移動速度が速い)ので何とか救いになっているという感じか。
 2D背景と言えば、今作では「レンズ集め」という、ドラクエで言う所の小さなメダルみたいなのを集める要素があるのだが、ダンジョンの行き止まりとかならまだしも、道中まったく見えないようなすみっこにあったりとか、さすがに落ちてる場所がシビアすぎないだろうか。ゲーム中にはヒントもまったく出ないので、攻略本やらサイトやらを見ないで集めるのは正直厳しい。
 同じようなところで、料理を教えてくれる「ワンダーシェフ」の居場所もなかなか厳しい。レンズほどではないのと、街にしかいないのですぐに取り直せるというあたりが救い。

 戦闘システムについては、新たに「A-LMBS(アグレッシブ・リニアモーションバトルシステム)」となった。中級以上の術でもエフェクトで止まることがなくなり、戦闘が全体的にスピードアップしている。 晶霊召喚も今作はかなりスピーディで、ファンタジアのときに感じた間延び感がほとんどなくなった。これは素晴らしい。
 おかげでちょっとごちゃごちゃ感が出すぎて、何をやってるのか良くわからなくなってしまうことがあったのは残念だが、仕方ないのかなあとも思う。ただ、後半になると多段ヒットする技及び術が大量に出てくるので、もう与えたダメージすらわからない状況になってしまうのがね。
 ノーマルでのプレイにはなるが、戦闘は全体的にそれほど難しくなかった。前作同様に多段ヒットの技でごり押しする戦法が中盤までは使える。終盤の詠唱時間ほとんどなしで術連発する敵がわんさか出てくるあたりだけがちょっと難しいかもしれないな、くらい。

 クレーメルケイジによる晶霊術の部分に関しては、正直わかりにくかった。特に2つの晶霊の組み合わせによるフリンジ。いちいち晶霊のステータスを見ないと、どの晶霊をフリンジさせればいいのかわからないってのはどうかと思う。フリンジできる精霊だけ色変えるくらいできたんじゃないのって思うんですけど。
 あと、使いたい術を残すための晶霊の振り分けが面倒すぎる。フリンジの際にいちいち入れ替えしてフリンジして、ステータスでキールとメルディの術見て…。いちいち術ごとに必要な精霊の組み合わせを暗記しないとならんのか?っていうね。

 一番しっくり来なかったのは、ストーリーを彩る素晴らしい世界観があるのに、それをどうにも生かしきれていない感があるところ。

 インフェリア・セレスティアともにさまざまな街があるのだが、序盤の段階で海を渡れてしまう(エアリアルボード)のもあって、「フィールドを歩き回る」ということが序盤の序盤しかない。インフェリアはそれでもフィールド中をエアリアルボードで旅できるからまだいいが、セレスティアに入ると、こちらは鉄道を使っての移動から始まって、バンエルティア号入手後はほぼ船での移動。マップが手に入るのもバンエルティア号が手に入ったあととちょっと遅い。
 ラシュアンやアイメンなど一部を除くと街自体の存在感が非常に薄く(とってつけたように戻ったりはするが)、セレスティアが特にそうだが、交通手段が序盤から豊富だったせいで位置関係も把握しにくい。(これについては、マップがアイテム欄からの呼び出しだったことも影響しているように思う。毎度毎度アイテム欄から選択する必要がどこにあっただろう?)

 世界観を端的に印象付けられる最終兵器として、一般的なRPGでは「空を飛ぶ乗り物」がある。出すタイミングさえ間違えなければ一番手っ取り早い。今作でも、もちろん”飛行艇”と呼ばれるものが登場する。
 ただし、なにぶん”ストーリー上の必然ではない”、要は手に入れなくてもいい存在であるということと、サブイベントをこなして手に入れたはいいがタイミングがあまりに遅すぎ、”サブイベント潰し”のためにしか存在価値がないという2点でプラス要素にほとんどなっていない。

 重要な言語であるメルニクス語もそう。そもそも、”メルディを先頭にしないとさまざまな場所にあるメルニクス語が読めない”というところからして不親切。だってパーティーにいて一緒に行動してるんだよ?そのくらい読ませろよって思うの自分だけ?

 何と言うか、ストーリーを進める(最終の目的に行き着く)というところに重点を置きすぎて、プレイヤーに世界を理解してもらおうというスパンがごっそり抜け落ちているような。そんな気がするのね。
 世界観が理解しきれないうちに話がとんとん進むから、盛り上がってるんだろうなーというシーンもなかなか盛り上がりきらない。幼馴染3人衆の各種ストーリーやメルディのいろいろなど、人物関係の話でごり押ししたような印象だった。

 まあ逆を言うとそれだけテンポの良さは際立っていて、ぽんぽん進むストーリー展開。戦闘をはじめとして各種切り替わりの際のロード時間もほとんど感じないし、セーブ・ロードも快適。ロードポイントの採用により、ダンジョン内でもどこでもセーブできるという親切設計も見逃せない。基本的なシステム周りについてはPSのRPG群の中でも上位に入るのは間違いない。

 それだけに、いろいろと惜しかった。”大作にしようとしたけどなりきれなかった佳作”かなあと。魅力的な戦闘システムや数々のサブイベント・ミニゲームも豊富。テイルズシリーズらしさも存分に見せた作品だとは思うが、もう一歩、という感じの作品でした。