[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:バンプレスト/ガスト
発売日:2006.01.26
ジャンル:RPG
実勢価格:700~1,000円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2014.09.13

アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女

 天高くそびえる塔”アル・トネリコ”とその周辺の浮遊大陸を舞台に、突如発生した謎のウイルス生命体との戦いと、詩魔法(ヒュムノス)と呼ばれる特殊能力を使用できる女性”レーヴァテイル”(以下RT)との交流・成長を描くRPG。開発はアトリエシリーズのガストとバンプレストが共同で行っているが、そこかしこにガストらしさが感じられる。キャラクターデザインはカードゲームなどのイラストを手がける凪良氏。

 とにもかくにもRTとのやり取りがほぼ根幹を占める作品で、主人公ライナーは立ち上がり数時間でヒロイン2名からほぼベタ惚れ状態という驚きの展開。それどころかレーヴァテイル以外の女性キャラにまでどんどん好かれていくという全方位っぷりを発揮する。ハーレム展開が好きな方には。
 世界各地で話題を拾ったり、戦闘での行動することなどで溜まっていく「トークマター」でRTと会話して仲を深めていく。ストーリー途中からはRTの精神世界「コスモスフィア」に入り込んで詩魔法を紡ぎ出す「ダイブ」も可能となり、トークマターによって仲を深めてコスモスフィアに深く入り込む(階層式になっている)…という流れ。RTは総勢3名になるが、1回のプレイで全員最後の階層まで進めることが可能で、進め方によってはエンディングが若干変化する。
 精神世界内は、基本的にテキストを読み進めていくだけのアドベンチャー方式。読み進めていくためには戦闘中に手に入るDP(ダイブポイント)が必要だが、普通に戦闘していれば容易に溜まってゆくのでさほど気にする必要はない。声優の演技はさすがだなあと思うのだが、内容は茶番劇というか何というか。演出がいきなり安っぽくなるというか。コンセプトは新しいし新鮮なことは間違いないんだけど、こんなぺらっぺらでいいの?と思ってしまった。
 ちなみに、ダイブを進めていくとRTの着せ替えも可能となり、制服・着ぐるみ・天使に悪魔・果てはバスタオル1枚のみの「バブルパッション」やYシャツ1枚の「Y」など、狙い撃ちとも取れるコスチュームまで登場(ガスト製作ということで、マリー・エリーのコスチュームもある)。ステータス変化も兼ねているので、使いどころは多い。

 RTはこんなところにして、それ以外のストーリー部分については、メインキャラクターにはそれぞれ何かしらスポットライトが当たるようになっているし、世界観も全体通してわかりやすく、割とすんなり入ることが出来た。得てしてこういうゲームだと、専門用語が多すぎて話がさっぱり理解できないという事態に陥りがちだが、しっかりと説明がなされていたのは好印象。代わりに、ちょっと説明文っぽい会話がそこかしこに見られたのが気にはなるところだが。
 音楽についても、霜月はるか・志方あきこ・みとせのりこといった、同人界やゲーム主題歌などで活躍した歌手を採用した劇中歌をはじめとして、ガストサウンドチーム作曲の高品質な音楽の数々。
 キャラクター・世界観(音楽含めた)に優れたものを感じる一方、ストーリーの進め方は問題あり。「こんな重要アイテム探してきて!」→あっさり宝箱に入っているとか、後述のアイテム生成「グラスメルク」に頼った展開も多く、すさまじい難易度のアイテムを要求されたはずが材料が店に売っていたり…と、すごい苦労しそうな展開なのにあっさり解決という場面が目立つ。
  基本的には一つ解決すると次はここへ行ってくれ…となるお使い仕様で一つ一つのイベント難度が低く、進行で迷うことはほとんどない親切設計な半面、全体を通して面白みに欠けたことは確か。

 戦闘については、”RTを守って戦う”ことが基本となるシステムで、後衛に位置するRTは基本攻撃対象にならず、対象になる攻撃を受けた際には前衛のキャラが「護る」ことにより、ダメージを代わりに受けてRTを守ることができる。RTが使う「詩魔法」は、バーストゲージ(%)を溜めることで威力や効果を増大させることが出来る。前衛がRTを守りつつ、ゲージを溜めて強力な詩魔法を発動するというのが基本の戦い方となる。
 全般を通して前衛の攻撃力が低めに設定されていることから詩魔法を使った攻撃が重要となる仕組みだが、それだけに戦闘に時間がかかりがち。世界設定には忠実なので理不尽に感じることはないものの、後半の敵あたりになるとちょっと煩わしい(通常攻撃が効かない敵が複数出てくるのもあるが)。

 この世界に存在する音を吸収する石「唄石」から出来る結晶「グラスノ液晶」を武器防具に取り入れてパワーアップする「パワード」が今作の主な強化に関するカスタマイズ要素となる。一部グラスノ液晶のネーミングセンスに疑問を感じるが(デラ追撃とか爆盛りとか)、能力増減が見易く効果がわかりやすい・レベル分けさえ覚えればいいだけでシステム自体が簡単…といいシステムのように思う。装備品全てに最大4つつけられるというのは多すぎた気がしないでもないが…(付け替えや効果の重複を調べるのが面倒)

 アイテム合成「グラスメルク」については、素材アイテムが無駄に多い・妙に気合の入ったアイテム説明など、アトリエシリーズそのまんまという感じ。先に書いた通りイベントアイテムもあっさり作れたり、武器防具も途中からほぼグラスメルク頼りになるなど、ちょっと万能すぎるんじゃないの・・・という気も。

 全体的に見渡すと、気合の入り方(気合を入れる方向)がやっぱりガストだなーと思うところ。宣伝の仕方から内容に至るまでターゲットがきちんと定まっているので、ガチのRPGを期待する層にはそもそも向いていない作品。そのため、”何を期待してプレイするか”によって評価が大きく分かれそうな作品だ。
 ダイブを中心としたRTとの交流部分に重きを置くことはわかった上でプレイし始めたのだが、思った以上にその部分がつまらなかったのが自分としては非常に痛く、結果「世界観は好きだけどゲームとしてはそこまで・・・」という感想に落ち着いた。