[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:カプコン
発売日:2002.11.14
ジャンル:RPG
実勢価格:300~1,000円(中古価格)

評価:★★★☆

[Review] 2014.11.02

ブレスオブファイアV ドラゴンクォーター

 はるか昔、世界に”大いなる災い”があった。空は焦げ、瘴気は遍く地表に満ちた。見上げるべき空を失った人々は、足の下に生き残るすべを見つけ出す。大深度地下都市。シェルター。覆われた第二の世界で、幾世代もの刻が過ぎる。人々はもう、空を忘れたのだろうか…?
 下層地区のレンジャー・リュウは、任務で訪れたバイオ公社(生物化学工場)で、奇妙な体験をする。閉ざされた地底の世界の物語が、動き始める…(公式HP・プロローグより)

 竜の力を持つ少年リュウと有翼の少女ニーナが主人公・ヒロインとなる、カプコンのRPGシリーズの第5弾。PS2では唯一のシリーズ作品であり、2014年11月現在のシリーズ最終作品となっている(2015年春にオンラインRPGとして6がリリース予定)。

  オーソドックスなファンタジー世界にはじまり、前作IVでは砂漠に覆われた世界を舞台とした本シリーズだが、今回の舞台は「大深度地下都市」という閉鎖空間。いろいろな種族が共存するという世界観もシリーズ通しての特徴の一つだったが、こちらも今作では種族の概念は存在せず…と、今までの作品にはない新しい要素を多数加え、まさに異色の作品となった。
 音楽監修に光田康典氏・作曲に崎元仁氏というどちらもブレスシリーズ初登場の豪華布陣。今までの作品とは大きく毛色が変わったが、閉鎖的なちょっと暗めの世界観を生かしたサウンドで印象に残る曲が多い。崎元氏らしいといえばらしい感じで、聞く人が聞けば一発でわかるくらいのレベルだろう。CMなどで流れた主題歌は鬼束ちひろの「Castle・Imitation」。

 印象的なシステムから上げていこうと思うが、SOL…よりもまず「D-カウンター」について挙げたい。これは竜の侵食率に当たり、序盤のイベント後から画面右上に表示される。主人公リュウはこのタイミングから竜の力を手に入れるが、代わりに竜に徐々に浸食されてゆくことになっていて、歩くだけでも0.01%単位ではあるが徐々に数値が増加してゆく。
 戦闘中では竜の力を解放する(D-ダイブ)ことでどのボス相手でも無敵に近いレベルの強さを発揮するが、D-カウンターの数値は歩くときの比ではないレベルで上昇してゆく。そして、この数値が100%になると、竜に完全に侵食されてその時点で問答無用のゲームオーバー。
 つまり、竜の力はゲームオーバーと隣り合わせのまさに「切り札」であり、どの場面で使うかが重要となる。力は死と隣り合わせというこのシステムには驚いたし、これをRPGで実装するのはなかなか勇気のいることだったと思う。

 2つ目は「SOL(シナリオオーバーレイ)」。今作の肝となるシステムで、ゲームオーバー時(もしくはクリア時)にこのSOLを利用してリスタートすることにより、新たなイベントシーンが追加されるというもの。
 SOLでのリスタート時には、装備品やスキル・パーティ経験値(キャラに自由に振り分けられる専用の値)・預けたアイテムなどがそのまま持ちこされる。強くてニューゲームとまではいかないが、かなり楽に進めることができるようになる。
 1周クリア時間は、普通に進めると15時間ほど。SOLを使った周回を進めることで、やっと一般のRPG並のボリュームになるバランスだ。

 戦闘に関して、まずエンカウント時の「PETS(ポジティブ・エンカウンター・アンド・タクティクス・システム)」がある。今作はブレスシリーズとしては初のシンボルエンカウント方式を採用しているが、表示されている敵に対してプレイヤーキャラが切りつけるなどの固有アクションを取って接触すると、戦闘開始時に接触したキャラクターが「EXターン」を獲得し、必ず先制攻撃が可能となる。固有アクションを取らない状態で接触した場合は、逆に接触された敵のEXターンとなる。
 そのほか、道中で買ったり拾えたりする専用の「罠」を使って、戦闘開始前に敵の体力を削ったり、食べ物を置いて敵の注意をそらしその間に横をすり抜けて通ったりということができる。
 戦闘突入後については、AP(アクティブポイント)を使って行動する「APS」が採用された。キャラクターの移動・各種攻撃時に消費するポイントで、1ターン終了後に各キャラクターの最大値分回復する。最大値の2倍までストックが可能で、貯めてからまとめてアタックもできる。
 今作では、技や魔法の類はすべて武器防具に装着する「スキル」に一本化された。戦闘で使用するスキルには1~3のレベル設定があり、一つの武器には1レベルにつき最大3つのスキルが装着可能。防具には常時発動するスキルが装着可能で、こちらにはレベル設定はない。ちなみに、回復系のスキルは存在せず、最後まで回復手段はアイテムのみ(宿もない)。

 難易度については、もともとそこまで簡単だというほどではなかったシリーズだが、今作については群を抜いて難しい。特に序盤の難易度が鬼。要因はいくつかあるが、元から敵の能力が高めに設定されている・回復手段がアイテムのみのため金策の立て方を間違うと回復すら満足にできなくなる、この2点が大きい。
 一度倒した敵は2度と復活しないのでレベル上げや金稼ぎも不可能、最序盤は切り札の竜も使えない。最初のダンジョンの難しさで投げた(投げかけた)プレイヤーはかなりいただろう。
 救済措置として、必ず回復アイテムを落とす芋虫のような敵がところどころで出現するが、いきなりぼとっと上から落ちてくるという意味不明な登場の仕方・とってつけた感がありありでどうなの?という感じ。
 ある程度回復アイテムの目処が立つ中盤あたりになってくると、装備の付け替えによる多スキルを使った戦略的なバトル・D-ダイブの使いどころを見極めゲームオーバーにさせない緊張感が楽しめるようになってがぜん面白くなってくるので、そこまでたどり着けるかどうかが一つこのゲームの評価を分けるポイントとなりそう。
 ちなみに、アイテムは戦闘中いくらでも使えるという面白いシステムで、同じキャラが2つ3つのアイテムを同じターンに使うことも可能。
 操作はちょっと難解で、4ボタンにL・Rまで使わせる操作系はなかなか慣れない。コマンド終了のショートカットなども無駄につぎ込んでいて、ここらへんはもうちょっと整理してほしかった。

 納得がいかないというか、どうも微妙だなあと思ったのはシナリオ部分と「SOL」。そもそも、偶然に近い出会いから始まってからニーナを空へ連れて行くという目的に至るまでのイベントが薄くて、なぜそこまでして連れて行こうと思ったのかがさっぱり伝わらない。リンのもろもろもそうだが、それぞれの目的・決意の部分が伝わってこないというのが引っかかる。
 肝心の「空」についても、災厄が起こったのはわかったけどその災厄ってなんで起こったの?とか、瘴気が漂うから隔離して地下都市作ったはずなのになぜそこを目指そうとしたの?とか。
 ドラゴンについてはもっと説明不足。そもそもなぜリュウが選ばれたの?というところから分からない。公式HPでは「世界を変えようと思っただけの普通の人だったから」とかいうこれまた意味不明の解釈がされていたが(公式HPの日記参照)、とにかく上へ上へと目指すノンストップな展開でありながらも、説明不足が多すぎて置いてけぼりにされていく感が半端なかった。
 それを補完するのがSOLの役目だったはずだが、SOLで追加されるシナリオもキャラそれぞれにスポットを当てただけのサブイベントに近く、本筋の補完にさっぱり繋がっていない。シナリオを深く見せることがメインだったはずが、難度調整のためにリスタートさせるのがメインになってしまっていて、方向性がぶれてしまっている。

 おそらく一番根幹だったであろうSOLが一番ダメ。扱いがとにかく中途半端で、こいつが出張ったおかげでストーリーがいまいち収集しきれていないのかな、と思うくらい。周回を繰り返すと深くシナリオが見られるということは、逆を言えば「周回しないと深く見られない」ということ。これをメインに据えたことが、今作最大の失敗であると思う。

 バランスを崩壊させない程度に考えられた戦闘システムを中心に評価できる部分も多く、ストーリーを重視するのかゲームとしてのシステム・歯応えに重点を置くのかでがらっとイメージの変わる作品だろう。