[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:カプコン
発売日:2003.03.06
ジャンル:3Dアクション
実勢価格:200~300円(中古価格)

評価:★★

[Review]2017.10.10

カオス レギオン

●ストーリー
 
降りしきる雨にぬれる街を、ジーク、ドラクロワ、シーラの3人は聖オヴェリア教団の命を受けて大聖堂へ急いでいた。大聖堂では、闇に心を奪われた教団の者たちが、聖櫃に封じられた神アズライールを復活させる儀式を完成させようとしていた。間一髪、アズライールの復活を阻止することに成功するが、その代償としてシーラはアズライールにその魂を奪われ、ジークとドラクロワは愛するシーラを永遠に失うこととなる。

 そして数ヶ月後。

 聖都ロタールで、教団の中枢を担う人物が襲われ、禁断の書”外典イザーク”が盗まれるという事件が発生した。目撃者の証言から、その犯人がドラクロワ卿との疑いが持ちあがり、事の真偽を問いただすべく、教団は騎士団を差し向ける。だが、彼の屋敷にはその姿はなく、その事実が更に疑いを深めることとなった。
 時を同じくして、青年ジークは親友であるドラクロワに真実を問いただすべくその姿を探してさまよっていた。墓地の片隅でドラクロワの姿を見つけたジークだが、黒い瘴気を纏ったその姿はジークの知るドラクロワのものではなかった。迷いながら剣を交えるジークだが、ドラクロワの持つ闇の力の前に倒れ臥す。そして、「自分を追ってこい」という言葉を残して、ドラクロワは忽然と姿を消した…

 そして、3年の月日が流れた…

●概要
 「デビルメイクライ」などをヒットさせたカプコンが新たに発売した3Dアクションゲーム。公式上のジャンルは「エモーショナル・アクション」。登場する人物の声を声優ではなく押尾学・海東健・市川由衣・りょうなどの俳優があてたことでも話題となった。

 発売の経緯は様々紆余曲折があり、その後の売り上げのひどさも併せて後世に語り継がれる事象になってしまった作品でもある(このあたりの流れは→Wikipedia参照)。
 簡単にまとめると「売り上げ100万本を目指して2003年度中発売を目指していたが、2002年度の業績が不調だったカプコンが発売を前倒しし2002年度ぎりぎりに間に合わせたものの、出来が伴わず目標売上を大きく割り込み、カプコン全体の経営見直しや開発部署の整理やソフトの開発停止などが起きた」というもの。
 正直言って、2002年度全体の不調要因はこの作品がどうのこうのという前に「ブレスオブファイアV」などのシリーズ作品をことごとく外したことにある(これはIRでの公式発表でも同じように言及されている)のだが、結局この作品がとどめを刺したことに変わりなく、そういった意味でも不遇の作品というイメージだ。

●キャラクターと声について
 先に書いたとおり、主要キャラはすべて俳優採用。主人公ジークの声が押尾学ということで、主題歌「FLY」を押尾学自身のプロジェクト「LIV」が歌うなどしているのだが、曲はいいとして、劇中のとんでもない棒読み加減がやっぱり気になる。
 全体的に感情を前面に押し出すキャラは不在で比較的淡々と喋るタイプばかりとは言え、今回主要の4人全員そろって厳しいというのはちょっと…。感情を殺しているをはるかに通り越した完全棒読みなので、ここまでくるとさすがに目立つ。
 これは演じた人が悪いというよりキャスティングしたほうの問題だと思うけど、そもそもなぜ俳優に喋らせなきゃダメなのかという理由が全くわからんというのが一番大きい。これは俳優を採用したがる劇場版アニメとかにも言えることなんだけども、なんでプロに任せないんだろうね?

●基本システム
 十字キーで移動・□で攻撃・×でジャンプ・R1+方向キーでシフト移動…と、基本は一般的なアクションゲームという感じの配置。○は「ロックオンシュート」と呼ばれる遠距離に判定のあるロックオン。
 特徴的なのは、タイトルにもなっている「レギオン(魔兵)」で、各ステージ中で手に入る「レギオンクレスト」によって召喚できるようになる。ゲーム中では全7種類のレギオンが登場し、ステージに進む前のインターミッションで最大2体まで装備してステージに向かうことができる。それぞれ近距離用・遠距離用・防御特化などに分かれており、生身の敵に強いか金属系の敵に強いかという分類もあるので、ステージごとに使い分けて進むのが基本。

 ステージ内ではL2で召喚に使うレギオンを設定しL1で召喚。召喚中は「フォースモード」というレギオンを引き連れるモードに、召喚していないときは「アサルトモード」というプレイヤー単独でのモードと切り替わり、アサルトモードは走って移動できるので移動力が高い・攻撃力が高くなるという特徴を持ち、フォースモードは歩きのみで移動力に劣り攻撃力も減少するものの、レギオンとともに集団で戦うことができる、という分類になっている。
 R2はレギオンの命令切り替え。レギオンが自主的に攻撃に向かう「アクティブハーツ」と△による攻撃指示以外はプレイヤーを追随する「パッシブハーツ」の2種類の切り替えを行う。
 そのほかにも、レギオンを育ててレベルを上げると主人公に憑依させて能力を追加できる「エンチャント効果」や、召喚に使わないサポート側のレギオンを使った△ボタン発動の「アサルトアタック」など、操作はちょっと難解だがいろいろなシステムを詰め込んでいる。

●高品質グラフィック・操作感
 無双系アクションのように1つの場面にかなりの敵がまとめて出現する上一つ一つのエフェクトがかなり派手。レギオン出現時にはレギオン最大6体も加わった多数vs多数の戦いとなるのだが、処理落ちらしいことは見られず、ここまでのグラフィック水準をよく動かしきっているなあと感心する。
 キーレスポンスも良く、サクサク動かせて敵をなぎ倒せるのは爽快。カメラの回し方を左右反対に出来ればなお良かったなくらいで、高い技術力を見せてくれている。音楽がそれほど目立たなかったのが残念なところだが。

●いろいろ考えられているが…
 レギオン周りのシステムについてはいろいろ考えられており、プレイヤー以外を召喚して一緒に戦わせるというのはなかなかないオリジナリティでもある。ただ、これを十分生かしきっているかと言われると疑問符が付く。

 一番よくわからなかったのが「フォースモード」と「アサルトモード」の効果。主人公1人の時に移動力が上がるのはまだいい。1人の時は攻撃力が上がるというのが特に後半になってくると大きな差になってきて、レギオン召喚で手数を踏むより一人で斬りに行ったほうが早いという事態をところどころで引き起こしてしまっている。
 レギオンを使わせた多数vs多数をやらせたかったんじゃないのか?というところだが、これって「主人公のみ」「主人公+レギオン」の双方を生かすという欲張り仕様にしたかったからなんだろうか。個人的にはレギオン召喚特化で作っちゃっても良かったんじゃないかと思ってしまうが…

 レギオンが得意とする敵の種類が2種類あるのでそれぞれに対応したレギオンを連れて行かないと与えるダメージが低すぎて使えず、結局連れて行くのは生身の敵用レギオン1体(主に剣/ギルト)と金属敵用レギオン1体(主に爪/フロウド)にほぼ固定化されてしまう。
  力/ヘイトレッドはほかの近距離タイプと丸被りなのでまあ好みで選べば程度だが、爆/ブラスフェミーは癖が強すぎてメインで使おうとは思えず、弓/マリスは攻撃力が低すぎて単なる連打ゲーになってしまうのが辛い。盾/アロガンスに至っては、ただでさえフォースモードで攻撃力が下がるのに、さらに防御に特化するレギオンを連れて行ったところで使いどころは全くない。
 結果、なぜ2種類しか連れて歩けないのかが謎すぎて、これって全種類持ち歩けたほうがまだ使い分けできて良かったのでは?という。全種類連れて歩くならもう少し特徴付けを細かくするべきかとは思うけど。

 基本狭い世界を舞台にしているので仕方ないのかもしれないが、ステージが同じようなものが多いというところも飽きが来やすい一因に。石畳のステージばっかりだからなあ。

●総評
 ボリューム感の不足とかいろいろあるけど、何かこう、面白くないわけではないんだけど消化不良というか、シャキッと来ないというか。プレイヤーにいろいろやらせるんだけど大して活用されないモヤモヤ感がいろんなところで噴出するという作品。
 普通に動かしている分にはそこそこ楽しいというのが本当にもったいない。