[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:スクウェア・エニックス
      マトリックス/アルテピアッツァ
発売日:2004.03.25
ジャンル:RPG
実勢価格:500~800円(中古価格)

評価:★★★★★

[Review] 2014.10.12

ドラゴンクエストV ~天空の花嫁~

 SFCで1992年に発売された、ドラゴンクエストシリーズ第5作を11年半ぶりにフルリメイクした作品。グラフィックデザインはアルテピアッツァ・開発はマトリックスが担当。ドラクエシリーズのナンバリングタイトルとしてはPS2で初のタイトルとなる(ナンバリングに限らなければ、2002年「トルネコの大冒険3」がある)。
 ドラクエシリーズの中でも驚きのストーリー展開とバランスの取れた難易度に定評のある作品だが、そのいいところはもちろんそのまま受け継ぎ、PS2になったことでのグラフィックの強化や新要素の追加・パーティー人数の変更(3名→4名)などを盛り込んだ。BGMはNHK交響楽団によるフルオーケストラサウンドになり、ここも大きな変更点となった。

 ストーリーについては、キャラクターの登場シーンなどに変更があり、幼少時にフローラと会うシーンが出来ていたり、ゲマの活躍(?)シーンが増えたりしている。もともとのストーリーを壊さず主要キャラにさらにスポットを当てるというところで、違和感なく入り込むことが出来る。特に、元からthe悪役のような位置づけだったゲマがさらに悪役と化しているあたりはさすがという他ない。
 VIIで初搭載された「会話システム」が本作でも搭載され、相手がいない状態で”はなす”コマンドを選ぶとパーティキャラと会話が出来るようになっているが、そのパターンの多さは特筆もの。町の人1人1人にパターンがあり、町の人と会話した後に会話システムを使うことで毎回違った会話が楽しめるようになっている。
 逆にモンスターとの会話はほとんどないようなものになっていて、ここがもう少しあればなーとは思ったが、人間キャラとの会話テキストがかなり多いので、十分楽しめる出来だろう。

 次に戦闘についてだが、グラフィックが大幅に強化されてモンスターの動きがアニメーション化されたほか、ズームイン・ズームアウト採用による最大出現数の増加が図られた。普通に倒したときと会心の一撃で倒したときの敵が消えるアニメーションが異なるとか、SFC版では単なる色違いだったモンスターが地味に変更されているとか(ばくだんいわとメガザルロックとか)、細かなこだわりは多々見て取れる。
 パーティ人数が3人から4人に変わったが、これもいい変更点。というより、人間キャラが最低でも4名以上登場するゲームでなぜ3人パーティ?というところはあったので、順当な変更点というべきなのだろうか。これで4人家族パーティが出来るようになったし、モンスターも使いやすくなったと言える。ちょっとしたイベントのたびに家族4人パーティに切り替わるので、モンスターとの入れ替えがちょっと面倒ではあった。
 何より、戦闘が全体的にスピードアップしているのは素晴らしい変更点。おそらくドラクエシリーズの中でも最速かと思うが、このテンポは他の作品にも生かしてほしい、そのくらい良い。2Dライクな戦闘だからこそのテンポというところはあるが…
 モンスターの選び方・育て方にもよるが、難易度は決して優しいほうではないと思っている。全体攻撃持ちのモンスターがかなり多く、こちらに全体回復の手段が乏しいこともあり、運が悪いと全体攻撃を乱発されて数人死亡になりかねない。ちなみに、ザラキで表メンバー4人が全員死亡したこともあった(ホークブリザード相手だったと思う)。
 作戦を使って行動をAIに任せた場合、誰に攻撃するかの基準が相変わらずバラバラというのは気になった。あまり頭の良くないAIはドラクエの伝統というところもあるのだが、アストロンをかけた相手にはなぜか集中攻撃したりするのはさすがにどうかと思うんだよな。

 Vと言えば、モンスターを仲間にできる要素を初めて導入した作品。SFC版で42種類だった仲間に出来るモンスターは、今回70種類に増加した。これはいい点になるのだが、スライムナイトやオークキング・ゴーレムなどの有用モンスターがもともと数多く存在したためか、今作で追加されたモンスターはほぼほぼ「役に立ちにくい」で一致しており、まともに使えると断言できるのは序盤に使えるエビルアップルくらい。結果的に多くなっただけになってしまったのは残念なところか。

 新たな追加要素もいくつかあるが、まずはさまざまな街で手に入る「名産品」と、その名産品をコレクションできる「博物館」の追加がある。集めること自体は楽しいのだが、いかんせん集めたところで何もないと言うのが引っかかる。置いた後に眺めることも出来たり、一部名産品についてはアイテムとの組み合わせがあったりと、気合が入っていることは確かなのだが。
 もうひとつは、SFCのIIIから登場し今作にも追加されたすごろく場で、クリア出来ればなかなか有用なアイテムが手に入る。何となくサイコロの出目がコントロールされてる臭いのは気になるが。1回のプレイで出てくる目がずいぶん偏る気がする。
 こういった追加要素はあくまで寄り道要素であり、ゲーム本編には何ら絡まない。行かなくてもいい・集めなくてもいい程度のもの。どうしてもこういったリメイク作品と言うと新要素・追加要素に目が行きがちで、その点今作はその要素が決して多いとは言えない作品だが、基本グラフィックや音楽などの本筋にこだわった今作のようなリメイクの形もありなのではないかと思うし、これこそリメイクらしいリメイク、リメイクのお手本と言うべき作品なのではないかなと思う。

 SFC版をプレイしたプレイヤーはもちろんのこと、新規プレイヤーにも十分オススメできる。ドラクエがなぜ長いこと人気シリーズとして君臨し続けているのか、理由が何となくわかる気がする、そんな作品。