[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:スクウェア・エニックス/レベルファイブ
発売日:2004.11.27
ジャンル:RPG
実勢価格:300~500円(中古価格)

評価:★★★★☆

[Review] 2015.01.04

ドラゴンクエストVIII ~空と海と大地と呪われし姫君~

 初代PSで発売された前作VIIから4年、シリーズの正規ナンバリングタイトルとしてはPS2唯一の作品となったドラゴンクエストシリーズの第8作。スクウェア・エニックスとなってからは初のドラクエ本編の新作となり、開発はレイトンシリーズなどでおなじみのレベルファイブが担当した。
 呪いで姿を変えられてしまったトロデーン国の王・トロデとミーティア王女を元の姿に戻すため、呪いをかけた張本人である道化師ドルマゲスを追う、というストーリーから始まる。前半はドルマゲス・後半は暗黒神ラプソーンと目指す敵は一貫しており、目指してる道中で様々なイベントが発生するというドラクエらしいストーリー展開となっている。この「目指すべき敵が後半で変わる」というのは、古くはIIIのバラモス→ゾーマの流れから始まるドラクエでは鉄板の展開だ。

 まず、PS2になったことでもちろんグラフィックが大幅に強化されたのだが、水準の高さが素晴らしい。アニメ調で表現されたキャラクターとフルポリゴンのフィールドグラフィックが高品質にミックスされ、ドラクエらしい世界観を作り上げた。上からの2D視点だった前作までとは違ってプレイヤー後方からの3D視点に変更されたが、違和感無いどころかグラフィックの素晴らしさを増大させることに成功している。
 船や空を飛ぶ際には縮尺を合わせた専用のフィールド画面に切り替わるなど、こちらにもこだわりを感じさせる。縮尺といえば、シリーズ初めて街とフィールドが同じ縮尺で描かれた作品でもある。

 単純な人数の増加から職業の追加・モンスターを仲間に・上級職・モンスター職…と、ナンバリングが進むたびにいろいろと新要素を取り入れ、パーティーカスタマイズが広がっていたドラクエシリーズだったが、今作では一区切り。パーティキャラは主人公・ヤンガス・ゼシカ・ククールの4人で完全に固定されて追加人員もなく、それぞれ勇者タイプ・戦士タイプ・魔法使いタイプ・僧侶タイプと役割もはっきりしている。
 前作前々作と恒例になりつつあった職業は今作では廃止された。モンスターを仲間にできるようになったVあたりからスキルや呪文数がどんどん増えてきていたので、ここも必要な程度にうまく整理された印象。ディバインスペルとかペスカトレあたりはドラクエの呪文っぽくなくて何だかなあと思ったところだが。
 キャラカスタマイズの要素としては「スキル」が導入され、レベルアップの際にもらえるスキルポイントを5つのスキル(武器3つと格闘・特殊スキル)に振り分けて特技や呪文を覚えるという形となった。1つのスキルは最大100Pまで振り分けられるが、レベル99まで上げてももらえるスキルポイントは計350Pしかないので、すべてのスキルを最大まで持っていくことは通常プレイでは不可能(スキルのたねを大量に手に入れれば出来ないこともない。かかる時間がとてつもないことになるだろうけど)。

 戦闘については、新しく「テンション」という仕組みが導入された。簡単に言うと”ため攻撃”になるが、戦闘中に1回ためるごと5→20→50→100とテンションが上がってゆき、攻撃力がどんどん上昇してゆく(テンション100時で攻撃力8倍)。50から100にかけては一定確率でのテンションアップとなり失敗することもあるが、成功すると「スーパーハイテンション」となってグラフィックが大きく変わる。最大3ターンの消費があれば一発逆転を狙えるとあって、今までのシリーズにはなかった新しい組み立てが可能になったのは大きい。
 とはいえ、攻撃力をそんなに高める必要がある敵は非常に限られる。通常攻撃が効きにくいゾンビ・エレメント系の敵に対して大ダメージを与えることができるという要素もあるが、数がそこまで多くない・使わなくても呪文で何とかなる、とそこまで重要でもない。
 ボスに対しても序盤から中盤にかけてはいいものの、後半のボスはほぼ「いてつく波動」を所持していてテンションアップをかき消されるため、テンションを上げるくらいならバイキルトを使って特技で押し切ったほうが早く、結局終盤でほぼ使わなくなってしまうというあたりが若干もやっとするところ。
 全体ダメージやグループダメージの際に「平均○○ダメージ」というように表記が簡略化されたりはしているものの、テンションにターンを消費することやエフェクトの関係もあってか、前作までと比べると戦闘にかかる時間は長くなっているように思える。リメイク版Vが素晴らしいテンポの良さを見せていたので、もっさりとまではいかないが気になるところではあった。

 モンスターを仲間にできる要素はVI以来の復活を果たしたが、最大3匹のモンスターをスカウトしてチームを作る「モンスターチーム」というものになり、自由に戦闘に参加させられたV・VIとは違う形に。闘技大会「モンスター・バトルロード」で勝ち抜くと”チーム呼び”という特技で一定ターン戦闘に呼び出すことが可能になる。加えるモンスターによるところはあるにせよ、消費MP10でけっこうな削り方が可能でコスパの良さが半端なく、バランスブレイカーといっても差支えないほどの強さを誇る。バトルロード自体がある意味隠し要素に近いので、ご褒美というところなのかもしれないが。

 グラフィックの思い切った変更・肥大化した数々のシステムのスリム化…と、8作目にして大きな路線変更を行ったわけだが、これがほぼ違和感なくやってのけるあたりが今作の凄さ。わかりやすく、ドラクエらしい。丁寧に作られた優秀作品であることは間違いない。