[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:スクウェア
発売日:2001.07.19
ジャンル:RPG
実勢価格:300~1,000円(中古価格)

評価:★★★★

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[Review] 2012.08.23

FINAL FANTASY X

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 スクウェアの人気RPGシリーズ、ファイナルファンタジーシリーズの第10弾。シリーズでは初のPS2作品で、今作ではフィールドもフルポリゴンとなったほか、イベントシーンもムービーだけではなくポリゴンキャラクターを動かす形が取られている。PS2ではかなり初期の作品だが、今でも十分堪能できるグラフィックの技術は必見。
 音楽は今回から植松氏単独ではなく、FF13でメインを努めることにもなった浜渦正志氏・TOBAL No.1やデュープリズムなどで活躍の仲野純也氏を加えての3人体制となったが、従来作品と変わらずの高いクオリティでゲームを支えている。

 まずは戦闘システムについて。今作は、IV以降のシリーズ作品でほぼほぼ使われてきた「ATB(アクティブタイムバトル)」を廃し、「CTB(カウントタイムバトル)」という形式に移行した。ATBの場合、コマンド選択時にも時間が止まらないことが大きな特徴となっていたが(ウェイト設定時を除く)、今作ではコマンド選択時は完全に時間がストップする。敵味方問わず行動順は画面上に表示されるようになり、敵の攻撃の先手を打って魔法をかけたり攻撃したりといった戦略が可能となった。
 最終的に仲間になるキャラクターは7名で、そのうち戦闘参加できるのは3名。この3名に関しては、コマンド時にL1ボタンでいつでも待機中のキャラクターと入れ替えることが出来、入れ替えたキャラクターが即行動に移ることの出来るシステムになっている。
 各キャラクターにはそれぞれ得意なモンスターが決まっていて、例えばティーダであれば素早い獣系の敵が得意とか、ワッカは空飛ぶ敵が得意・アーロンとキマリは甲殻系の硬い敵が得意・ルールーは属性攻撃に弱い敵が得意・リュックは小型機械系が得意…など。これにより、出てきたモンスターによって即座にアクティブなキャラクターを入れ替えて戦うというのが基本スタイルとなった。
 そのほか、各キャラに「オーバードライブゲージ」というゲージがあり、このゲージを満タンにすることで強力な特殊技を使えるようになった。今までのシリーズでも”瀕死のときだけ出せる”などの条件がついていたが、今回はゲージが溜まればいつでも発動可能で、特殊技を使わなければいつまでも満タン状態をキープできる。

 今作はキャラクターの”レベル”という概念は存在しない。戦闘に勝利すると「AP(アビリティポイント)」がもらえ、このポイントによって「スフィアLV」を上げ、「スフィア盤」という広大な盤面を移動しつつ(移動にスフィアLVを消費する)、成長スフィアを発動させて能力を上げるという仕組みになっている(成長スフィア発動には、戦闘終了後などに手に入る各種スフィアが必要)。
 ただ、このAPの入手方法が「戦闘でコマンドを実行したキャラのみもらえる」という仕組みのため、1回の戦闘で全員にAPを入手させたければ必ず7名をアクティブにして何かしらコマンドを実行しなければならず、相性の明らかに悪いキャラをわざわざ引っ張り出すことになったり、ユウナに至っては攻撃方法がほとんどないので(成長の仕方にもよるが)さらに扱いに困るという事態に。戦闘に参加しなかったキャラにもAPを割り振るような仕組みにはできなかったのだろうか。せめて半分入手にするとか。
 モンスターの数が従来作品と比べて少ないのも気になった。モンスター全体の系統がかなり少なくなり、出現の個体数や組み合わせのパターンも少ないので、同じような敵とどこででも戦ってるようなイメージになる。見た目で誰が得意なモンスターかが一瞬でわかるところはメリットなのだろうが。
 召喚獣は、今までは呼んで攻撃してもらって終わりという形だったものが、召喚獣個々にパラメータが与えられ代わりに戦ってくれるようになった(FF13も似たようなシステムだったので10をベースにしたのだろうが)。召喚獣にもオーバードライブゲージがあり、オーバードライブゲージを満タンにすると従来シリーズのような強力全体攻撃が発動する。強力すぎるための調整なのだろうが、後半のボス戦になると一撃でやられてしまうばかりになるのは微妙だった。

 武器・防具も今までとは大きく変わっていて、一般のRPGである「攻撃力」「防御力」の概念がなく、アビリティのつき方だけで種類がいくつも用意されている。ティーダの武器で言うと、”炎攻撃”アビリティがつくと「フレイムタン」に、”カウンター”アビリティがつくと「アヴェンジャー」に、といった具合。基礎パラメータアップや属性攻撃・防御などさまざまなアビリティを自分で装着することも出来るようになる(改造)。
 武器防具の改造に必要なアイテムと要求される数がかなり多く、それも購入できないアイテムばかりというのはちょっとなあと思った。アビリティが欲しいときに対応するアイテムを持つモンスターがいない!なんて事もしょっちゅう起こる。
 輪をかけてもったいなかったのが、なぜか武器防具だけソートが効かないこと。アビリティ装着にかかる負担が大きいこのゲームだと、”どの武具に装着するか”という武器防具の取捨選択が相当重要な要素になっており、その取捨選択がぱっと見効かないこのソート不可仕様は致命的だった(インターナショナルでは改善されたとのことだが)。

 ストーリー展開に関しては完全1本道シナリオで、各フィールドもほぼ1本道のため探索はほぼ望めない。ただ、まだ救いなのは、街などのポイントがそれほど多くないこと、最終的に飛空艇でいろいろな場所に戻ることが出来るようになること。飛空艇が単なるワールドマップ移動ツールでしかないのにはずっこけたが。あと、飛空艇での移動場所を選ぶときに、上下押しっぱなしでカーソル移動しないのにはイライラさせられた。何でわざわざ連打しなきゃならんのだ。
 ストーリーにあまり裏がなく、話をしっかり聞いていれば大体理解できる内容だというところも救いになっている。倒すべき相手「シン」も最初からはっきりしているほか、専門用語が相変わらず飛び交う世界観ではあるが説明がしっかりしていて複雑に絡まることがなく、世界も無闇に広げすぎなかったおかげでとてもわかりやすい。複数世界を飛んで回るようなゲームが多くなった最近のRPGとは違い、うまくコンパクトにまとめた部分については大きく評価すべき点かと思う。

 そういえば。試練の間でスフィアや台座を使ったパズルを解くシーンが何度かあるが、全方向にアナログスティックで動かすような操作系が基本なのに、上下左右から台座を押すという操作系とまったく合わない仕掛けを用意したのはこのゲーム最大の謎。このパズル部分はカメラワークも最悪で、一瞬で左右がわからなくなるなどザラにあり、このあたりはそもそもパズルを解く以前の問題。アングルを変えられないならせめてもう少しプレイしやすい視点にくらいは出来ただろう。

 このゲーム、せっかくの成長システムが通常プレイ時にあまり生かされてなかったこと(生かさなくてもクリアに支障がなかったこと)がどうしても引っかかる。何せ普通プレイではスフィア盤を(キースフィアを使わず)道なりに強化するだけで良く、改造や召喚獣強化すら使わずにクリアまで行けてしまうからだ。
 各種パラメータアップやアビリティ装着に奔走しようとしても、ひとつひとつにかかる負担が大きすぎる。例えばAP稼ぎで言えば「AP2倍」「AP3倍」「ドライブをAPに」などの役立つアビリティもあるのだが、そのアビリティ自体の入手が困難。
 アビリティ装着のための手っ取り早いアイテム集めに使われる「わいろ」コマンドも、実行に大量のギルを消費するためギル稼ぎが必須。そのギル稼ぎについてもオメガ遺跡のミミック倒しが有名だが登場数が少なく、他の方法は七曜の武器でのダメージ限界突破がほぼ前提など敷居があまりに高く、ちょっとやそっとで手が出せるレベルではない。
 結局、「キャラクターを強くしたいがために事前準備にキャラクターを強くしなくてはならない」(わかりにくくて申し訳ない)という、本末転倒な状況に。とにかく様々困難でなおかつとてつもなく時間がかかる。
  スタッフが同じと噂のXIIIと同じ感想になるけど、この強化関連に関してはやっぱりプロセスがおかしいというか、プレイヤーへの意識付けがうまくないと言うか…。無駄に風呂敷を広げすぎちゃった印象が強いんだよな。

 やりこみ要素を含めた魅力を体感できたプレイヤーが果たしてどのくらいいるのだろう?と考えると、通常プレイとやりこみ要素とのバランスはもう少し考えて欲しかったかなと思うところだが、グラフィックなどの基本から各種レスポンスを含めてとても良く出来ている作品。
 間口が広く人を選ばない作りで、PS2を代表するRPGであることは間違いない。さすがですよね。