[Data]
ハード:Playstation 2
メーカー:スクウェア・エニックス/トライエース
発売日:2005.01.27
ジャンル:RPG
実勢価格:200~500円(中古価格)

評価:★★★

ラジアータ ストーリーズ

 人間と妖精族が共存する世界で、父親のような騎士になるため入団テストにやってきたジャック・ラッセル。将来性を認められての騎士団入団から始まり、ジャックは人間・妖精族の関係悪化によるそれぞれの種族存亡の戦いに巻き込まれてゆく。ジャックは人間側で妖精族に剣を向けるか、妖精族に身を処したヒロイン・リドリーとともに人間と戦うか…
 スターオーシャンシリーズなどでおなじみのトライエースが制作を担当・コミカルなグラフィックが発売当時から大きな特徴となっていた、スクウェア・エニックス発売のRPG。音楽はグランディアシリーズなどの作曲を手がける岩垂徳行氏。グランディアシリーズとは空気が違うので同じような作風は少ないが、一部ボス戦などの曲は岩垂氏らしい曲が見受けられる。

 戦闘はリアルタイムアクションで展開される作品で、この辺はさすがトライエースという感じ。パーティは最大4名になるが、主人公ジャック以外のキャラはいっさい動かすことが出来ず、すべてジャックからの「命令」という形である程度コントロールできる仕様。
 基本は○ボタンの攻撃と×ボタンの防御。攻撃を当てると画面左上のボルティゲージが溜まり、□ボタンで強力な攻撃「ボルティブロー」が発動(ゲージを10使用)。最大値100をすべて使う攻撃として、□+×で発動するカットイン付きの強力な攻撃「ボルティブレイク」がある。×2回で無敵時間のあるバックステップ・ガード後すぐに○か□でガード反撃ができる。R1にはロックオンが割り当たった。
 他には、「リンク」と呼ばれる陣形のようなシステムもある。リンクを発動させると、リンクに従って全員が陣形のように移動し、リンクごとに特殊効果が発動する。攻撃力や移動力が上がったり、回復したりとさまざまなリンクが存在し、戦闘をこなす度に習得していく。
 トライエースと言えば戦闘部分にかなりのこだわりを詰め込む会社だが、今作に関してはオーソドックスなものがほとんど。リンクが若干使いにくいところがあるくらいで、全体的にわかりやすい。

 こういうタイプのゲームにはどうしてもありがちだが、ほとんどの敵に対してごり押しが可能。今作の武器には毒や麻痺などの追加効果を与えるものが多いが、中でも一定時間動きを止めることが出来る「凍結」「石化」の追加効果がとにかく強く、この2つの追加効果を持つ武器で進んでおけば問題ないというレベル。このごり押しを単調と取るかわかりやすくて面白いと取るかはそれぞれだろうけど…
 基本簡単な部類だが、後半のボルティブレイク持ちの敵についてはかなり苦労する。ジャックのHPが0になると他キャラが生存していてもゲームオーバーとなってしまうのだが、一部敵のボルティブレイクは一撃死必至のものもあり、ジャックに向けて使われた時点で終了というパターンに。(対クロス戦で2500ダメージを食らった時はどうしようかと思った)

 マップはフルポリゴンで描かれ、独特なキャラクターグラフィックと合わせて見事な世界観の構築に成功している。エルフやドワーフなどが登場する一般的なファンタジー世界だが、ラジアータ王国内の建物のひとつひとつから各妖精族の住む自然などが細かく表現されており、グラフィックの水準は時期を考えても非常に高い部類。
 ゲーム中盤くらいからは様々な住民をパーティに引き入れることが出来るようになるが、その数は170名以上。仲間にならないキャラクターを含め、ほぼすべてのキャラクターに名前と専用グラフィック用意…と、ここは凄まじいこだわりを感じさせる。
 今作では実際の1秒がゲーム内の1分に当たるという時間の概念があり、住民たちはそれぞれのタイムスケジュールに従って1日を過ごしている。この時間の概念を体感できることがこのゲームの一つの特徴であり、キャラクターを引き出す良さでもあるだろう。他のRPG作品と比べても、住民一人一人のキャラクターが立っていて、印象に残る。
 仲間にできるキャラクターにももちろんスケジュールがあり、どの時間帯でも話しただけで仲間になってくれるキャラクターもいるが、大体は時間帯・場所が決まっていたりするので、住民それぞれのスケジュールを把握していろいろなタイミングでの声掛けが必要となる。一種のストーキングのような状態。

 ストーリー部分については、やはり中盤以降に出てくる人間か妖精かの完全分岐がポイント。どちらにしても、今まで関わってきたキャラクターのうち半分を敵に回すという展開になるわけで、どちらを選んだとしてもあまり後味の良い終わり方ではない。街中で普通に会話していた人物がザコ敵として普通に襲ってくるようになる、というのはなかなか斬新ではあった。
 妖精編については、それまでのストーリーがほぼラジアータ国内・つまり人間サイドで進んでいたことが響いていて、なかなか妖精側の心情を理解しにくい。ストーリーもすでに後半に差し掛かり全面戦争待ったなしというところで分岐が起こるので、理解する前にどんどん登場人物が倒されてゆく印象で、ちょっと置いてけぼり感がある。
 人間編については、妖精編ほどわかりにくくはないものの、登場人物のおかげか悪役感が強く、さらにリドリーと決別するというスタートもあって、こちらはこちらで何とも表現しにくいモヤモヤ感が漂う。ラストもラストだし。

 分岐後のストーリーは早ければ2~3時間ほどでクリア可能なボリュームだったが、ここがどうしても駆け足になったように見えてしまう。2つともクリアさせることをそもそも目的とするのならば、2周させるような作りにしてしまうとか、せめてもう少し分岐を早くするとか、いろいろ方法があったように思うのだが。

 マップが基本的にすべて横からの視点で描かれているのだが、奥や手前も含めて無理やりサイドビューにしたおかげで方向が本当にわかりにくく、マップも全体マップがあるだけ。向いている方向から満足に進行方向を読み取れないのはさすがにひどい。
 このマップで仲間になる住民のタイムスケジュールを追わせるというのがまた何とも。~時から~時までの間に~にいるキャラに話しかけて…とか、~日連続で話しかけて…など条件も幅広過ぎて、これをノーヒントでコンプリートするのは相当厳しいだろう。
 自分の部屋で寝ることで朝にすることが出来るが、なぜ朝に寝て夜にすることが出来ないのか、これも疑問。夜限定で会話が必要な場合の時間調整が夜になるまで待つ、というのはあまりにも面倒すぎる。

 そのほか細かいところだが、複数アイテム使用の際に1個利用→キャラ選択→アイテム選択画面に戻りまた1個使用→キャラ選択…と無駄な切り替えが必要だったり、ステータス画面に要素を詰め込み過ぎてワンタッチで装備や技画面に切り替えられなかったり…

 リアルタイムな時間経過による生活感とキャラクターへのこだわりが素晴らしかったのは間違いない。ストーリーも悪くない。ただ、かゆい所に手が届かない感が多分にあり、すごくもったいない。雰囲気はすごく好き。