テイルズ オブ リバース
●ストーリー
「知」を司るもの『ヒューマ』、「力」を司るもの『ガジュマ』 遥か古代より存在する2つの種族。
かつて大いなる苦難に見舞われたヒトは互いに協力し、カレギア王国という名の1つの国を築いた。代々ガジュマの王を戴き、その統治のもとに続けてきた長き平和と繁栄。しかし、ある日を境にカレギアの平穏は突如として崩れ去る。各地で起こる異変に多くの命が失われ、建国以来未曽有の混乱に陥った人々は、それを時の国王ラドラスの崩御と重ね『ラドラスの落日』と呼んだ。寒気厳しい北辺の村スールズの青年ヴェイグもまた、『ラドラスの落日』により大きく運命を変えられてしまう。
それから1年-
心を閉ざしたヴェイグの前にそびえる巨大な氷塊。その中には1年前と全く変わらぬ姿のままで、幼なじみの女性クレアが閉じ込められていた。クレアを閉じ込める氷は何を試みても溶けることがなく、ヴェイグにはただ見守り続けるしか術がなかった。そんな無力感に苛まれていたヴェイグの前に奇妙な2人組が現れる。2人の出現に自体は動き始め、やがてヴェイグはスールズを旅立つことに…。
さまざまな境遇のヒトと出会う旅の中、やがて直面するカレギアの抱える問題。その答えを探し、ヴェイグたちは揺れ動き、傷つきながら、己と他人の心に正面から向き合うこととなる。ヴェイグは、そしてヒトは答えを見つけることが出来るのだろうか。
●概要
ナムコ(現バンダイナムコゲームス)の人気RPG「テイルズオブ」シリーズ作品で、後に”マザーシップ”と呼ばれるメインタイトルとしてはシンフォニアに続いて6作目。
技や魔術・呪文で使用していた「TP」の廃止、アイテム以外にメインの回復手段がほとんど存在しないなど、戦闘では今までになかった試みが多数取り入れられている。
●再び2D+3Dになったグラフィック
デスティニー2までと同じく、フィールドは3Dポリゴン・街の中などは2Dで表現されている。街の中は動くオブジェクトこそ少ないものの、様々なオブジェクトに相当数のテキストが用意されていて、特に家の中では置いてあるものに対して○ボタンを押すと至るところで解説が表示される。街ごとの特徴もわかるようになっているので、街に着いたら家の中で○ボタンを押しまくり、しらみつぶしに解説テキストを探すのも楽しいだろう。フィールドの3Dグラフィックについても、シンフォニアからさらに見やすく順調に進化している印象。
演出はあまり進化していない…というかチープなところが目立つというか。敵からの攻撃を受けた時に大したエフェクトもなく全員瞬時に倒れる…なんてのはいい例で、セリフとフルボイスにかなり助けられているというのが正直なところか。
●ストーリーについて
前作のシンフォニアでも「人間・エルフ・ハーフエルフ間での人種差別問題」というのがストーリーの根幹にあったが、今回はもっとわかりやすく「ヒューマとガジュマの民族問題」がメインテーマとして語られる。
途中この問題が深刻になった時は、全国各地を飛び回って種族同士の醜い争いをいくつも目撃することとなるが、ここがなかなか生々しい。ここまで踏み込んでくるのは不快に思う人もいそうだが、ここまで突っ切ってくれるとむしろ良いかな、と個人的には思う。街によっては階級制度や明らかな人種差別を行っているところもあり、ストーリーにも上手く絡んでいる。
主人公ヴェイグがシリーズ初と言ってもいい暗いキャラクターで好き嫌いありそうだなとは思うが、全体的に色々抱えていたものが旅の途中少しづつ晴れてくるのが丁寧に描かれていて、主要キャラ全員一通りスポットも当たるし、このあたりはシリーズを重ねているだけあってこなれてきたなあと。
その他、よく名場面に上げられるクレアの「ピーチパイ演説」はフルアニメーションで、作る側も相当こだわったんだろうなあと思わせる出来。この場面だけが注目を浴びるが、それまでのクレア・アガーテを見ているからこそ引き立つものであって、ぜひ通してプレイして演説を見てほしいな、と。
●戦闘(3L-LMBS)...従来とは全く違う立ち回りが必要
今回のシステム名は「3ライン・リニアモーションバトルシステム」で、前作シンフォニアでグラフィックをフル3Dに変えたばかりだが、本作はデスティニー2までと同様の2Dグラフィックに戻った。代わりにシステム名通り、手前・真ん中・奥の3つのラインを自由に移動しながら戦うことのできるシステムとなり、背後に回り込んだり、挟み撃ちにしたりと言ったことが味方敵双方やりやすくなった。
大きな特徴となっているのが「HPの回復方法」。、本作ではそもそも回復専門の術技がほぼ存在せず、相手に術技の攻撃を命中させたり、敵を倒すことでHPが回復する仕様となっている。他にもシリーズおなじみのグミ系アイテムでの回復もあるが、単価が高くて序盤はまとまった数の購入がそもそも難しく、最大所持数もシリーズおなじみの15個までと大量に持てないので、術技による回復をきちんと理解できないと、かなり厳しい戦いを強いられる。
もうひとつ戦闘中に意識しなければならないのが、キャラステータスの「く」の字で表現される「ラッシュゲージ(RG)」と呼ばれるもので、キャラクターの興奮度合いを表すパラメータ。このRGは前進したり攻撃を命中させる・受けることなどで上昇し、上昇すると攻撃力が上がる。逆に後退したりガードしたりすると減少、減少すると防御力が上がる。上記行動以外にも、□ボタン+上下で上昇・下降させることも可能。
さらに重要なのが、「RGが上昇すると術技や敵を倒すことによる回復量が減少する」という仕様。しかもRG最大時はHP回復量が0になる。逆にRGが最低の状態だと、敵を倒しただけで最大HPの1/3近く回復することもあるほど。今までのように前進して敵をガシガシ叩いているだけでは回復出来ずに苦しくなるだけ、ということになるわけだ。
RGの横にある4つの◇はフォルスゲージ(FG)と呼ばれ、それぞれ上下左右の4方向+×ボタンで発動する術技に対応しており、FGが貯まった状態で術技を発動すると高威力かつHP回復量が高くなる。特技はFGが最大ではなくても発動できるが、術はFGが満タンにならないと発動できない。今までのテイルズシリーズ作品は術技を使うのに「TP」と呼ばれるポイントを使用していたが、今作では方向キーごとに登録した4種類の術技は使い放題となっていて、ここも今までになかった新しい要素となっている。
RGを低めに保ちながらFGを貯めて術技を発動させ体力を回復、戦況によってはRGを高めに推移させて攻撃特化に…などという立ち回りが求められるが、敵に攻撃を当てるとRGは自動的に増えていくので一定に保つというのは困難で、RGがどのくらい溜まっているかを都度確認しながら上げ下げを繰り返すという、慣れるまでは難しい立ち回りを要求されることとなる。回復アイテムをまともに持てない序盤に回復方法がよくわからずやられてしまう、というのをかなりのプレイヤーが体験することになるのではないかと。
説明書に戦闘での回復方法の記載はあるし、道中いつでも見られる「バトルブック」でも今回の仕様は確認できるのだが、今までいろんなRPGをやっていた層からすると回復魔法やアイテム以外での回復方法にどれだけの効果があるのかがピンと来ないわけで。RGと術技を使用した時の回復量の関係について、説明書やバトルブックを見てもよくわからないのが一番痛い。
ただ、今までのシリーズ作品の中では戦闘のバランスやAIの動きの良さはピカイチで、仕組みを理解できれば間違いなく一番面白い。
味方のAIも的確に動く。前作までのように突っ立ってばかりとか逆に闇雲に突っ込んでいったりといったことも見られない。敵のパーティ編成も良く考えられているし、3ラインを有効活用して後列に集中攻撃してくる敵や背後に回り込み挟み撃ちを狙ってくる敵など、ザコ敵であっても気を抜けない戦いが最初から最終盤まで続く。
●スキットに頼りすぎな感あり
シリーズおなじみのキャラクター同士の会話システム「スキット」だが、今回もかなりの数が用意されている。新しい会話が発動するタイミングも前作からわかりやすくなって、会話量もかなりのものになった。
ただ、新しいストーリー進行があるたびに5~10個ものスキットがいっぺんに登場し、メインのストーリーで語ったほうがいいような重要な会話までスキットに頼っているような場面も多く見られ、場面場面で5回も6回もスキットを連続で見る必要があるのには少々うんざりさせられた。
ストーリー途中の合間合間でキャラクターを深掘り出来る何気ない会話…というのがスキットの本来の趣旨ではないかと思うので、このような使い方は無駄に水増しされているだけで、良いとは思えなかった。次回作で要改善といったところか。
●総評
今までのテイルズシリーズの中でも異質の面白さというか、デスティニー2以上に人を選びそうな作品というか。自分はこの戦闘をかなり評価しているが、みんながみんな評価できる内容ではないだろうなあと…。前知識を入れたうえで一度プレイしてほしい作品ですけどね。