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ハード:Playstation 2
メーカー:ナムコ/ナムコ・テイルズスタジオ
発売日:2004.09.22
ジャンル:RPG
実勢価格:400~500円(中古価格)

評価:★★★★

テイルズオブシンフォニア

●ストーリー
【今より4000年も昔……】
 勇者ミトスは聖地カーラーンにおいて古代戦争を終結させることに成功した。戦争を終結させたミトスは女神マーテルと契約し、戦乱の原因であったディザイアンを封印して人々を苦しみから救った。

【時は流れ現代……】
 平和を享受し、世界が忘れ去っていた邪悪な闇--ディザイアン。勇者ミトスによって封印されたはずのその邪悪な存在はひそかに力を蓄え、復活していたのだった。
 命の源である「マナ」は搾取され、世界はこれまでにない厄災に襲われる。人々はただ待っていた、女神マーテルの信託を受けた再生の神子がディザイアンを封印し、苦しみから解放してくれるその日が訪れるのを……。
 人々の希望は信託の村イセリアで暮らすたった1人の少女に向けられていた。少女の名はコレット。彼女は闇に覆われたこの世界を救うという使命を帯びた再生の神子であった。

【そして、神託の日は訪れる……】
 コレットと幼なじみのロイドたちを中心に導かれる名も無き勇者たち。
 彼らの果てしない世界再生の旅がいまここに始まろうとしていた。

●概要
 ナムコ(現バンダイナムコゲームス)の人気RPG「テイルズオブ」シリーズの第5作。2003年にゲームキューブ専用の完全新作タイトルとして発売され、PS2では性能面などの都合で出せないと明言していたにもかかわらず、さらっと1年後にPS2版を発売したことで当時話題となった作品だ。
 2003年の時点でPS2の完全優位は動かず、しかもそれまでのテイルズシリーズがすべてPS陣営で発売されていたこともあり、TOD2までプレイしていたシリーズユーザーからすれば「何でゲームキューブで出した?」という感じだったと思うので、まあ順当な移植と言えばそうなのかもしれないが。
 2008年には本作の2年後を舞台とする続編「テイルズオブシンフォニア -ラタトスクの騎士-」が発売され、2013年には2作をセットにして両作共HD画質に対応したPS3移植版「テイルズオブシンフォニア ユニゾナントパック」が発売された。

●完全3Dグラフィックへ
 前作TOD2まではフィールドのみ3Dで街の中などは2Dで描画されていたものが、今作からは町やダンジョン内なども含めて全てが3Dポリゴンとなった。3Dの描写はTOD2から大幅に進化したものの、代わりに処理落ちまでセットでついてくるようになってしまったが。特に空を飛んで移動できるようになったあたりからがなかなか厳しい。
 街の描写も3Dになったのだが、2Dでの表現がかなり細かくて良い出来だったので、正当な進化なんだろうけど面白みがなくなった感はある。特に前作で良かったのが「触れて楽しめるオブジェクトの数々」だったが、今作ではほぼなくなってしまった。ここは残念。

 キャラクターももちろんフルポリゴンとなり、藤島氏の絵を上手く生かしたキャラクターが動き回る様は見ていて楽しい。作り慣れてないせいもあるのだろうが演出はかなりチープで、しょぼい爆発エフェクトに脱力必至。せっかくムービー挟められるんだからもっと有効に使えば良かったのでは…

 GCからPS2に移った最大の問題点はフレームレートだそうで、GC版では60fpsだったものがPS2では30fpsと半分になったそうだ。こちらだけプレイしている分には当然問題は感じられないが、GC版をプレイすると驚かされるんだろうな。

●戦闘【ML-LMBS】
 今回はマルチライン・リニアモーションバトル(ML-LMBS)。シリーズ初めての「奥行きのあるフィールド内でのバトル」となった。ターゲットとなった敵に対して直線で進んでいくので動かし方は過去作までの2Dのそれと変わらないものの、見た目から大きなインパクトがあったのは間違いない。後列にいた敵に対しての対処がどうしてもややこしかった今までと比べても大きな進化だ。

 前作TOD2のシステムはいろいろ詰め込んだ結果取っ付きにくい感が否めなかったが、今作では一転して元に戻した形になった。さすがに相当批判が来たのかな。3Dにしたことで今までとは戦略が異なっているので、ここでリセットしたのはいい判断だったと思う。
 味方のAIがあまり頭が良くないのか、やみくもに突っ込んでいくキャラが多くて中盤以降魔法を使われる敵が多くなると苦労することに。プレセアとかはわからんでもないが、コレットやリフィル・ジーニアスまでがんがん突っ込んでいくのはどうかと思う。なぜか攻撃をせずに待機しているような場面が頻繁に見られるのも気になる。自分で動かしている分には前作よりわかりやすくて楽しい。

 新要素もいくつかあるが、まずは道中手に入れられる「EXジェム」を使ってキャラクターそれぞれに固有のスキルを装着することのできる「EXスキル」が初登場。このスキル装着によってキャラクタータイプ(Sタイプ・Tタイプ)が決まるという要素も追加された。
 まずEXスキルに関しては、移動速度アップやパラメータアップなど常時発動するもの・攻撃回数増加やステータス防御など戦闘中常時発動するもの、一定確率で復活するなど確率で発動するものの3種類に分かれ、全部で4つ装備することが出来る。
 EXスキルにはレべル1~4まであり、それぞれ該当レベルのEXジェムを装着してからそこにスキルを選択する形。複数スキルの組み合わせで発動する「複合EXスキル」もあり、なかなか奥深いシステムとなっている。
 難点としては、ステータス異常無効化などの強力な複合EXスキルをつけるには3~4つを揃えなければならないため、結果強いスキルを入れるならカスタマイズの範囲が狭まるというところか。

 キャラクタータイプに関しては、単体攻撃力重視の「S(ストライク)」と範囲やヒット数重視の「T(テクニカル))に分かれ、上記の装着スキルによって、戦闘ごとにどちらかに振れていく形になっている。各キャラクターはこのタイプによって覚えられる特技が変わるという仕組みも。そこまで意識しなくても進行にはそれほど問題ない要素だけど。

●ストーリーについて…あらすじ機能が便利
 前作同様のちょっとおバカな主人公という位置付けでスタートする今回の主人公ロイドだが、カイルよりはまだ言動がまとも。リフィルやジーニアスという、序盤からうまくまとめてくれるタイプのキャラクターがいたのも良かったところだろうか。
 展開は今までのシリーズの中でもかなり重め。キャラクターそれぞれを深堀りしていく形は今まで通りだが、そこに各キャラクターが背負わされる様々の”差別”が印象的に入ってくる。わかりにくいという意見もあるようだが、個人的にはちゃんと主要キャラクターにスポットが当たる上、変に贔屓のないこの展開は好きな部類だった。
 強いて気になった点を言うと、キャラそれぞれの抱えている部分をもっとメインのイベントに寄せてくれるともっと良かったかもしれないなあ、とか。リフィルなんかはサブイベント見てないと理解度が半減する勢いなのにそのイベントが期間限定だったりとかするし。
  キャラ同士の会話「スキット」も前作に比べるとわかりやすくなり、左下にスキット発動タイミングが表示されるになったりとパワーアップしており順当な進化が伺えるが、これも期間限定やら場所限定やらが結構多くて、ある程度世界中巡ってスキットを見まくっていればいいんだろうけど、そういうプレイヤーばっかりかな?とは思った。

 今作から加わった新要素、メニュー画面からいつでも過去のストーリーを文章で確認できる「あらすじ」機能がすさまじく便利。今作ではストーリー展開の中で「どういう順番で進んでもいい」という自由進行タイプの展開があるため、あれ、いくつ回るんだっけ?とかそういうときにもあらすじで解決できる。
 進行で言うと、闇の神殿の場所を示してくれるのが進行上関係のないミズホの里の人であるなど多少不親切なところはあるが、まあ許容範囲だろうと思う。ミズホの副頭領からは何か新情報があればすぐ教えるぞ、とは言われているわけだしね。

 しかし、コレットの声が水樹奈々さんだったとは…。よくよく聞けばわかるんだけど、このタイプの声はなかなかやらないよね?

●大分改善された世界観
 レアバードにより早い段階で空を飛べるようになったこと、常時右下にミニマップを表示できるようになったことなどで、やっとフィールドをしっかり使う作品になったなと感じる作りになったように思う。
 エンカウントをシリーズ初めて歩き回る敵に触れると戦闘開始となる「シンボルエンカウント」に変えたことも奏功しており、歩き回りやすいフィールドになったと言える。フィールドにぽつんと置いてある宝箱などは前作から引き続き疑問の残る仕様だけども。

 敵勢力に関しても、最初から人類全体を敵にしている勢力(ディザイアン)や種別による差別問題を頭から持ってきていることで非常に大きなものとして認識させることに成功しており、ここも今までのシリーズ作品と比べると大きな進化を遂げたと言えるのではないか。

●音楽
 今回はシルヴァラントとテセアラの2つの世界で担当する作曲者を変えるという手法だそうで、シルヴァラントは主に田村信二氏、テセアラは桜庭統氏が作曲した。全体を通して良曲揃いだが、レアバードの曲は聞きまくったので印象深い。
 初代「ファンタジア」と共通の世界観を持っている作品ということで、対精霊戦の戦闘曲は「FIGHTING OF THE SPIRIT」のアレンジ曲という熱い展開で良い。

●総評
 ここまでのテイルズシリーズの中では間違いなく一番取っ付きやすく、誰にでもおススメできる作品。テイルズシリーズらしいさまざまな収集要素やサブイベントも豊富なので、シリーズ経験者はもちろん、テイルズシリーズの最初の一歩としても良いのではないかと。