[Data]
ハード:Playstation 3
メーカー:スクウェア・エニックス
発売日:2009/12/28
ジャンル:RPG
実勢価格:2,000~3,000円(中古価格)

評価:★★★☆

FINAL FANTASY XIII

 スクウェアが誇る大作RPG・FFシリーズもついにHD画質へ。発売前から(体験版の時点で)圧倒的なグラフィックと浜渦正志氏の音楽の評判は素晴らしく高かったのを覚えている。日本だけで190~200万人はプレイしているんだろうから、そこらへん中にレビューもあふれてるとは思うんだが、自分なりのFFシリーズの捉え方とその評価を並べていきたい。

 今回の13も、今までのFFシリーズとか明らかに違う「冒険要素」を多数収録している。FFシリーズってのはドラクエと違ってある種の「新鮮さ」で持っている(前にFF8のレビューのときにも同じことを書いたが)と思うので、12のときも賛否はあったにせよ戦闘含めてシリーズ作品とは思えないほど数々の変更を行っているし、それ以前の作品についても、シリーズに縛られないいろんな冒険と、シリーズらしいニヤリとくる部分の素晴らしい組み合わせ。このバランスがFFを支えてきているのだと個人的には思う。

 システム面で一番の肝となったのは、やはり戦闘とオプティマシステムだろうか。今まで戦闘にもいろいろな味付けをしてきたFFシリーズだが、今までで最も考えられた戦闘システムだろう。アクション性が高い内容で明らかに難度が高い(特に中盤以降)のには賛否あるだろうが、個人的にはもうちょっと練りこめばシリーズ中最高の戦闘だと思う。

 オプティマシステムについて。まず、戦闘中にキャラクターの特性を変えられるというのは、戦闘中にジョブチェンジが可能だったX-2以来。ATTACKER(アタッカー・直接攻撃)・BLASTER(ブラスター・魔法攻撃)・DEFENDER(ディフェンダー・防御)・HEALER(ヒーラー・回復)・ENHANCER(エンハンサー・味方強化)・JAMMER(ジャマー・敵弱体化)の6つのロール(役割)がある。
 これが2人もしくは3人パーティーになると「オプティマ」と呼ばれるロールの組み合わせになる。リーダーだけはプレイヤーが動かすが、あとの2人は設定されたロールを自動でこなす。プレイヤーはこのオプティマの組み合わせを6つまで設定し、戦闘中に都度オプティマを変えながら戦いを進めるといった具合。

 このシステムは、とりあえずAIで動く他のキャラクターがどこまで動いてくれるのかが最大の鍵。設定したロール通りに動いてくれないことにはまったく意味がないのだが、そういった部分ではこのゲームはよく調整されていた。ヒーラーやエンハンサーがリーダー含めて複数になったときも、回復が被らないように自分のカーソルがきちんと合うようになっているなど、戦闘のスピードを殺さないようにかなり調整されていると感じた。
 あとこのゲームに限らずRPGによくあるパターンとして、強化系や弱体系の魔法は割と使わなくても進めてしまうことが多い(キャラクターそのものの強化で何とかなってしまう)のだが、今作では強化・弱体を使うことで(戦闘に時間はかかるが)明らかに難度を下げることが出来る。

 次に難点。戦闘に参加するキャラクターが入れ替わると、登録したオプティマがすべてリセットされるのはどうかと思う。後半になるとなくなるが、序盤は頻繁にキャラが入れ替わり、2人パーティーになったり3人パーティーになったりする。そのたびにオプティマを毎回毎回セットし直すのはさすがに面倒だった。これについては何か対策出来たのではないだろうか。1回作ったオプティマはワンタッチで呼び出せるようにするとか。

 戦闘に関しては、連続で攻撃することで溜まるチェーンゲージと呼ばれるゲージを上げていくことで、与えるダメージを極端に上げる「ブレイク」が導入された。アタッカー・ブラスター×2(ラッシュアサルト)でどんどんゲージを上げていき、ブレイクしてからの大幅ダメージアップはとにかく爽快。相手ののけぞり(やられ?)モーションも大きくなるためほぼ一方的に攻撃が出来る。これは素晴らしいシステムだと思う。ただ、中盤以降はブレイクすることを前提にしたHPが馬鹿みたいに高い敵が多すぎる上、ブレイクするまでに時間を要する敵も多い。モンスターの攻撃力上昇も含めて後半は無理やり難しくしたような印象があった。

 戦闘については惜しいなーと思うところが他にも多々あるのだが、まず範囲攻撃があるのにその範囲に攻撃できるか、範囲に攻撃されるかどうかがほぼ運頼みというところか。エリアブラストやラ系・ガ系の魔法など数々の範囲攻撃があるにもかかわらず、移動したりさせたりが出来ないというのはおかしい。
 リアルタイムでかつ自キャラの移動や敵キャラクターを集めたりといったことが出来る戦闘システムのゲームにグランディアがあるが、グランディアの場合は移動に1回分のコマンドを使う(他のコマンドよりは次の行動までの時間は短いが)などこちらはこちらで難点があり、むしろ1回のコマンドで3回以上の動きが出来るFF13のシステムのほうが、移動させるのには最適だったのではないだろうか。これだけアクション性を持たせたなら、移動にATB1つ使わせて、一定時間の間はプレイヤーが自由に戦闘フィールドを動けるとかしても面白かったかも。

 各種ステータス系が見にくい(特に敵の)のも個人的には難点。瞬時に判断が必要な今回の戦闘において、小さなアイコンですべて表示するってこと自体に無理があるような気がする。自分たちに関しては名前の隣に出てくるからまだいいものの、敵に関しては毎度出ているわけでもない(カーソルを合わせたとき&誰かが攻撃したとき)ため、ジャマーでかけた状態系魔法が敵に効いているかどうか、すぐに判断が出来ないのはけっこう致命的だと思う。攻撃時の敵選択で左下に敵の名前が並ぶんだから、そこの右側にステータス変化のアイコンつけても良かったのでは?

 次はフィールドについて。いろんなところで散々言われていることだが、今作では中盤までのフィールドがほぼ一本道で構成されている。たまに分岐がちょっとあるくらいで、分岐の先は大抵トレジャーボックス(宝箱)。探索という要素はほとんどないと言っていい。これに関しても賛否さまざま(どちらかというと悪い評価のほうが多いようには見えるが)だが、個人的には、これはこれでありなんじゃないかと思う。最初のハングドエッジのマップなど、いくらなんでもという露骨な一本道過ぎる部分があり、そこでむやみに評価を落とした感がある。中盤以降のマップは一本道なりに作りこんであった。
 あと、トレジャーボックスの中身が素材やアクセサリばかりだったのも印象を悪くしたのではないだろうか。大半はセーブポイントの店で買えてしまうのだから。そのほか、一部ダンジョンで同じような場所を延々と進まされるのには参った。一本道はまだいいが、こういうダンジョンは単純に飽きる。

 世界観やストーリーに関して。グラン=パルスはそこそこ良かったものの、コクーンがちょっとおざなりすぎるかなと言うのが個人的な感想。完全な一本道なのは上にも書いたとおりだが、最終的に行ったことのある場所に戻れるわけでもなく、感情移入度がかなり低くなる。コクーンの中にあるさまざまな施設や町がどういう地形で成り立っているのかがまったくわからず、印象が後半以降どんどん薄れてくる。そもそもはコクーンのための戦いのはずで、話の展開と進め方に矛盾を感じずにはいられない。そういった場所を死ぬ気で守りたい!となる主人公達にもなかなか共感しにくい展開になってしまうのは残念なところかと思う。グラン=パルスも広い世界のはずだが、結局大平原のインパクトに留まった感があり、せっかくの広大な世界観をうまく生かせていない。

 キャラクターの心情部分についてはがんばっていると思うが、ある程度仲良くなってくる前のホープの逆恨み中学生っぷりとか、最初の方でのヴァニラの無理やりな明るいキャラ付けとか、これからの長旅にどうなのよ?っていうキャラ設定には正直疑問。最終的にはみんな仲良くなってめでたしめでたし、でいいのかこれは。こういった頑張りはあるものの、全体的な世界観としてみた場合、オートクリップを見ないことにはすべてを理解しきれないのが痛い。
 それから最後。ネタバレになるから詳しいことは書かないが、えっそれでいいの的な。それって解決したことになるの的な。あと主人公ライトニングだよね?的な。なんか色々と中途半端なままでとりあえずいいかみたいな終わり方はどうなのかと…

 もう1つ、FFで外せないのは”キャラクターや各種アイテムの育成”。古くはクラスチェンジ(ジョブチェンジ)や熟練度から始まり、毎度毎度新しい育成システムを作り上げてきたこのシリーズはやはりとてつもないゲームだと思うのだが。

 今回はクリスタリウムによるキャラクターの強化と武器・アクセサリの強化が該当する。クリスタリウムの強化に関しては、正直なところFF10のスフィア盤とさほど変わらない。キャラごとに強化できる内容が違うくらいで。まあこれは仕方ないだろうと思う。戦闘が絡むRPGである以上、戦闘では何かしら得るものがないと面白くも何ともない。EXPによるレベル制にするか、それ以外のポイントで強化するか、入手できるアイテムによる強化のみに絞るかくらいしか選択肢がないのでは。

 ただ、武器・アクセサリの強化に関してはかなり問題ありと感じる。特に武器の強化はかなり重要な要素のはずだが、ストーリー進行の中で強化についてほとんど触れられないために重要度がいまいち伝わらないのと、強化のプロセスがおかしい。

 まず重要度についてだが、これについては「ストーリーにまったく関連しない」ことが原因であることは間違いない。FFだと特にVI~VIIIあたりがいい例なのだが、VIは魔石+召喚獣・VIIはマテリア・VIIIはGF(ガーディアンフォース)と、成長するキーアイテムがそのままストーリーに大きく絡むため、ストーリー進行の中でどんどん強くなったり、強いアイテムが手に入ったりすることに矛盾がない。
 それが今回はクリスタリウムはまだしも武器強化に関しては”強化できますよ”で終わってしまうから、強化したほうがいいのか何なのかわかりにくい。説明書とチュートリアルで何とかしてくれみたいな投げやり感が目立つ。

 次にプロセスだが、敵もしくはトレジャーボックスから入手できる素材の数はさほど多くなく集めるのにかなりの時間を要するため、結局楽に武器を強くしようと思ったらショップで素材を買うことになるのだが、普通にプレイしていただけではお金は大して貯まらない。
 つまり、普通に進めていくと武器やアクセサリのレベルはそこまで上がってこない。生体素材のボーナスなどをうまく使ったとしても、主力3人の武器をそれなりに強く出来るかどうかすら微妙な程度。これっておかしな話じゃないか?普通にプレイしている人は普通に強化出来るが、寄り道したい人・極めたい人向けには一気に強化できる寄り道を用意しておくとかするのが正しいやり方だと思うのだが。
 そういった意味で寄り道として冥碑ミッションを持ってくるならわかるが、冥碑ミッションをクリアしたところで得られる素材は知れたもので、この辺の感覚が良くわからない。これだと強い敵を倒すだけのためにあるお使いイベントだろう。もうちょっときちんと考えていたら、せっかくのミッションをもっとうまく使えたのではないか?

 基本FFシリーズは今作に限らずほぼ一本道だ。しかし、ある程度おちゃらけた…というか寄り道的な部分が随所にあって、そういった部分もうまく世界に入り込ませるのがFFの得意分野であったはずだ。少なくても一昔前のFFシリーズは、脇を飾る場所ごとのキャラクターであったり少しのお遊び要素だったりがうまいこと展開に溶け込んできていた。
 いろんな場所にプレイヤー自身が向かい、その場所にいるキャラクターや施設に接することで世界観が作られていくものだと思う。今回は、世界観のところで書いたようにコクーン内には中盤以降一切戻れず、場所ごとに印象に残るようなものが特にない(主役級キャラのイベントのみ)。主役級のキャラクター以外が完全におざなりで印象に残るキャラクターがほとんどいない。すべて通り道。
 せっかくのグラン=パルス以降の自由度も、決して高いとは言えない。冥碑ミッションに関してももっとうまく使えた(武器強化のところを参照)し、広くない世界でもグラン=パルスをもっと意識付ける方法はあったはず。

 …ということで、このゲームの”一本道”の最大の難点はフィールドマップが一本道で探索が…ということではなく、進行を一本道にして全体的な地形の成り立ちも特に明記せず、しかも登場するいろんな街や施設の印象付けをしなかったがために、結局「全体的な世界がまったく見えてこない」ことにあると思う。
 どうも今回のFFは製作陣があまりにまじめすぎたのかなーと…。まじめに一本道を作ったらこうなりますっていう典型のような気がする。

 最後に、浜渦氏の音楽はとてつもないクオリティでここは素直に賞賛したい。同じメロディラインで多数の曲を作る方法はサガフロ2でもやっていたが、つくづくこの人は本当にうまいなーと思う。