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ハード:Playstation 3
メーカー:日本一ソフトウェア/ノラ
発売日:2013.07.25
ジャンル:ダークファンタジー・アクションRPG
実勢価格:600~1,000円(中古価格)

評価:★★★☆

魔女と百騎兵

●物語(Revival公式サイトより)
 どこかにある、ここではない世界でのお話

 大国に隣接した小さな森には、醜く悪しき「森の魔女」と、容姿端麗天才的な才能をもった「沼の魔女」がいました。二人は互いの魔力を競うように100年ものあいだ争っていましたが沼の魔女が伝説の兵士を、深淵の闇の中で見つけたことでその均衡は崩れます。

 ……キヒヒ。

●概要
 各地に隠された柱「ピラー・オブ・テンペランス」を花のように咲かせて世界を沼で埋め尽くすため、そして長年の宿敵である森の魔女マーリカを倒すため、沼の魔女メタリカによって召喚された伝説の兵士「百騎兵」。プレイヤーはこの百騎兵を操り、メタリカの指示に従うまま各地のピラーを咲かせるために戦う。その中で明かされる様々な秘密。世界を覆う沼とは、沼の魔女メタリカとは、百騎兵とは…

 発売:日本一ソフトウェア、開発は日本一ソフトウェアの子会社ノラで送る、ダークファンタジーアクションRPG。もともとシリーズ化する予定はなかったそうだが、最終的にはPS4で続編が、そして本作もPS4で「Revival」としてアップグレード版が発売されるなどの人気作となった。

●ストーリー・キャラクター
 ダークファンタジーの名の通りかなりブラックな表現と展開が特徴で、序盤から大量の伏せ字が襲い掛かってくる様には好き嫌いが出るだろうなあと思わせる。序盤はメタリカのわがままストーリーという感じだが、後半に進むにつれて少しづつ明らかになる陰謀や事実に少しづつ引き込まれてゆく。第4章あたりでほとんどの伏線を猛烈に回収した感はあるが、一通り納得できる終わり方だったのも好感。エンディングは全3種類あり、選んだエンディングによっては消化不良満載で終わるものもあるが。

 メタリカはもちろんのこと、アルレッキーノ・ビスコ・ルッキーニィ・マーニィと、メインキャラクターの使い方が秀逸だったなあと思う。終盤は新事実が明かされるたびに驚きを持って見ることが出来た。声優の演技もとても良く、特にマーニィの底抜けの明るさが非常に良いです。ストーリーを最後まで進めるとなおさらね…

 キャラクターで言うと、百騎兵がとにかくかわいい。魔女ドクトリンによると「山程もある巨体に13の禍々しい瞳、そして恐ろしき4本の腕を振るい、 口と股間から火を吹き怪鳥の如く大翼を羽ばたかせ、世界を渡り歩き破壊の限りを尽くす伝説の大帝」らしいのだが、生まれたのはちんちくりんな小さな魔法生物。会話も話せず、「ぷぁい」「わーらぱー」「わっきゅりん」「わぎゅ」などの簡単な言葉?のみ。
 肯定・否定・疑問・無視のみを表現する「セルフアサーション」というシステムが導入されており、ストーリー上で選択場面が何度かある。序盤は何だこのシステム?と思っていたが、後半上手く生かされるとは思わなかった。
 キャラクターデザインは日本一ソフトウェア作品ではおなじみの佐藤たけひと氏。いい仕事です。

●音楽
 音楽はこちらもPS2以降の日本一ソフトウェア作品でおなじみの佐藤天平氏。「らんらーららんらん」のフレーズが耳に残るニブルヘンネの魔女邸曲「Magical House」やエンディング曲など、ボーカル曲もうまく組み合わせた独特の世界観を作り上げている。アマタイア城内の曲「Moon Wars」あたりも、終盤の空気感と合わせて非常に良い。
 章ごとのエンディング「マギアージュ」を歌っているのは、ニーア レプリカントのボーカル曲も担当したエミ・エヴァンスさん。全く知らずにプレイしたのでこれには驚いた。

●基本システム:攻撃
 ×でダッシュ・□での攻撃を基本とするアクションRPGで、視点や方向は左スティックで変更可能。武器は「刀剣」「蝕台」「鈍槌」「古塔」「槍鎌」の5種類あり、その5種類の武器を最大5つセットすることで5連撃になる仕組み。武器のレアリティあり・使い続けることでのレベルアップあり・刻まれている数字の順番にセットするとチェインとなり攻撃力が上がる「賽の魔紋」システムもあり、全て生かそうと思うとなかなか悩まされる。R1ボタンで敵をロックオンすることが出来、基本はロックオンして攻撃がベースになる。

●基本システム:ギガカロリー
 百騎兵が供給される魔力が「ギガカロリー」で、マップごと最大100のギガカロリーを消費して百騎兵は活動することとなる。ギガカロリーは移動や攻撃などの際に消費されるほか、減ったHPの自動回復でも消費される。HPが0になったときには50のギガカロリーを失ってリスタートも可能。移動時・特にマッピング時に多くのギガカロリーを消費するため、1回のギガカロリーで全探索が終わることはほとんどなく、マップの途中途中にある小型ピラー「ピラー・オブ・フール」でいったん拠点に戻って再スタートという形が多くなる。

 ステージ内でのギガカロリー回復方法もあり、まずは敵を食べることでカロリーを回復する「捕食」。そして、敵を倒す・ステージ内の光るポイントで採取することなどで貯まるグレードポイントによるギガカロリーとの引き換えがある。捕食はゴミアイテム「ガーベッジ」を残し、後述のクイックストマックに一定数が収容される。

●基本システム:クイックストマック
 道中の宝箱を開けるか敵を倒すことで手に入る武器や消費アイテムについては、いったん百騎兵のクイックストマックに収容され、ピラー・オブ・フールで拠点に戻ることで初めて入手出来る形が取られている。ストマックの名の通り胃の形になっているところが面白い。
 このクイックストマックの収容量はストーリーを進めてストマックストーンというアイテムを手に入れることにより広げられる。

●グレードシステム・フィジカルリバレーション
 マップごとに敵を倒す・マップ上の光るポイントでの採取などで貯まる「グレードポイント」を使ったキャラクター強化+ギガカロリー補給要素「フィジカルリバレーション」がある。簡単に言うと「マップ限定強化」というものだが上手く使うと地味に大きく、ボス戦にも大きな効果を発揮する。当たり前のように貯まるので存在感がいまいちなくてどうにも忘れがちになってしまうが、後半の難易度高騰に対する一種の救済要素のような形になっているか。

●トーチカ
 ストーリー途中から使えるようになるトーチカは、百騎兵の残り99人分の力を使って使役することのできる「使い魔」のような存在。おとりに使えるものや遠距離攻撃・捕縛用など全8種類+移動専用の0型ジャンピーの9種類が存在する。
 これも後半になると使いどころがググっと増え、特に1系チビヘイと42系プロテムの使い勝手が非常に良く、ボス戦で大活躍する。

●そのほか
 セットすることで基本能力の変更や特殊能力の変更が行える「ファセットチェンジ」・敵や住民の感情を3種類で表す「ビヘイビア」、街の住居を制圧してアイテムを入手したりできる「ウィッチドミネーション」・敵の攻撃を直前でかわすことで一定時間無敵+周りの動きをスロー化する「ミスティカル・ダッジ」・消費ギガカロリーが増大するが百騎兵の能力が大幅に引き上がる「カオスリバレーション」などがある。

●難易度バランスはあまりよくない
 序盤は比較的簡単に進むが、5章あたりからぐっと難易度が上がり、12章に入るといくら何でも…という難度に。12章は全てのザコ敵攻撃で一撃死するというとんでもない章で、早く武器防具を最新のものに集めないと心が折れる。最新のものに集めても半分以上の敵は一撃死だけど…
 どうやらここを含めた難易度高騰がひどすぎたせいか、「カジュアルモード」という難度の抑えられたモードがアップデートで追加された。今回のプレイでは難度を落としたら負けだと思ってノーマルモードのままクリアしたが、この章はちょっとひどかったと思う。

●難点:武器収集要素の中途半端さと面倒な入れ替え
 武器にレアリティがあることは説明したが、このレアリティで武器の最大レベルが変わり、もっともレアな「レジェンダリー」だと最大99・次にレアな「エピック」だと最大50、「レア」は最大30、コモンは最大10となっている。
 本作は章ごとに新しい武器防具が登場するのだが、いくらレジェンダリーの武器が出てきたとしても結局章を進めて出てきた新しい武器のほうが攻撃力が高いことがほとんどで、高いレアリティの武器を手に入れる意味が非常に薄い。
 武器・アイテムも大量に手に入る上500個まで所持できるのだが、せっかくのソートが雑でわかりにくいのが残念。

 5種類の武器は全て「斬撃」「打撃」「魔撃」という3種類の攻撃属性に分かれており、大半の敵に弱点属性があるのだが、弱点以外は完全無効という敵が多くて頻繁に武器を入れ替える羽目になる。十字キー右ですぐ装備画面に入れるとは言えこの入れ替えは少々面倒で、特に賽の魔紋を意識したチェインを組んでいた場合はなおさら元に戻すのが面倒で、せっかくのシステムを殺しているように思う。(Revivalでは解消されている模様)

●難点:グラフィック水準・視点面
 どうやらフル3DのアクションRPGが初だったということで制作には相当苦労したらしく、発売延期を繰り返した作品であるらしいが、グラフィックについてはいろいろ苦心したんだろうなあと思わせる。
 人物グラフィックがのっぺりした人形のようになっていて正直高い水準にはなく、キャライラストが良いだけに残念なところ。

 マップの部分についても、前面のオブジェクトが透過されないので壁や木に邪魔されるという状態で、壁の多い建物の中などは苦し紛れのような真上視点がデフォルトになるなどしている。もっとも、下手に斜め視点にすると壁に邪魔されてキャラも見えない事態になるんだけど。

●詰め込みすぎなシステムと操作
 システム自体がとにかく多くて詰め込めるだけ詰め込みました感がある。後半になるとフィジカルリバレーションやカオスリバレーションなど救済措置として助かるものも多いのだが、全部をフルに生かし切れていたかと言われると…
 付随するところとして、この数々のシステムをワンタッチで使わせることにこだわったように思うが、LR+○×△□までフル活用する操作もちょっと詰め込みすぎな印象。

●総評
 キャラクター・ストーリー・音楽と世界観は非常に良い。システム面では、全体的に日本一作品らしい「欲張り」感があふれる作品。ただし、今作についてはちょっとここが裏目に出ていたように思う。これがいつものやり込み作品なら違ったのかもしれないが。後半のやばい難度も含めてかなり人を選ぶ作品なので、そこは覚悟したうえでプレイするべきかと。

 個別項目で書くほどでもなかったので割愛していたところだと、全体的にロード時間もかなり長い。TIPS表示でかなりごまかされている感じ。あとは強制リセットが数回あったのも勘弁してほしかった。たぶん攻撃時のエフェクトの出しすぎだと思うんだが。