[Data]
ハード:Playstation 3
メーカー:スクウェア・エニックス/キャビア
発売日:2010.04.22
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:3,000~3,500円(中古価格)

評価:★★★★☆

NieR RepliCant (ニーア レプリカント)

●プロローグ
 遠い未来。滅びゆく世界。
 死をもたらす黒き病。兄と妹。壊れし日常。消える命。
 封印されし書物。轟魔の力。
 呪われし存在「マモノ」

 犠牲。差別。抱擁。別離。破戒。記憶。
 狂気。光。救済。崩壊。巨人。黒き力。

 翻弄される運命と、最後の代償。

●概要
 スクウェア・エニックスから2010年に発売されたアクションRPG。開発は「ドラッグオンドラグーン」シリーズなどを開発したキャビア(2011年にAQインタラクティブに吸収され消滅。そのAQインタラクティブもキャビア吸収からわずか半年後にマーベラスに吸収されマーベラスAQLになる)。
 PS3では本作「レプリカント」、そしてXBOX360では「NieR Gestalt(ニーア ゲシュタルト)」と、同じ発売日で主人公の異なる別作品として2作同時リリースされたことも発売当時は話題となった。実はまったくの別作品だと思っていたのだが、主人公が違うだけで中身はほぼ同じということで、あ、これで2作プレイしなくてもいいのか…と思ったものだが。わからんよなあこんなの。
 ゲシュタルトは海外市場を見据え、主人公が少年ではなく年齢のもっと上の父親になった。海外ではレプリカント仕様のものは発売されなかったのだが、結果海外ユーザーの評価は「レプリカントのデザインが良かったのに…」というところに落ち着き、「ヘタに海外仕様に寄らないで普通に作ってれば良かった」ということだったようだ。
 とにかく若い人を出したがるいわゆる和ゲーと呼ばれるものの評価は海外で結構賛否あるようなんだけども、それも扱うテーマによる、ということなんでしょうね。

●ストーリー
 ドラッグオンドラグーンのEエンドで崩壊した母体の魔素によって世界中に白塩化症候群という病気が蔓延、人類滅亡の危機に瀕してからおよそ1400年後の世界が舞台となる。ドラッグオンドラグーンの続編「2」はAエンドのその後を描いた作品ということなので、DoDシリーズのパラレルが今作といったところか。
 まず、最後の最後までプレイしてようやくたどり着いたエンディングがこれかい…となった、DoD驚愕のあのEエンディングから続編を作ろうというのがとんでもない発想と言わざるを得ないが、時系列から何から良く作り上げたものだと。

 敵は一貫して「マモノ」と呼ばれる存在とそれを統べる魔王となり、さらわれた妹のヨナを助け出すという王道ストーリーが展開されるのだが、これを見事にひっくり返す仕組みが用意されている。これはプレイしてほしいとしか言えない(もしくはどこかでネタバレを見るか)が、全体に漂う”いいモヤモヤ感”は「キノの旅」を思い出す。途中サウンドノベルに変わったりする作りも(好き嫌いはあるだろうけど)非常に面白いところだ。中身のメタ具合も必見。

 後述のサブイベントをこなすのに結構な時間を要するが、メインイベントだけ一本で進めていくとボリュームは少なく、おそらく20時間程度でクリアできるのではないだろうか。クエストオールクリアで35~40時間くらいか?

●グラフィック
 2010年という時期を考えてもものすごい高い水準というわけではなく、キャラクターの表情が若干怖いとか細かいところはいろいろあるが、逆にその水準が雰囲気に合っていて良かったという気も。それでも、平原や各神殿・砂漠の街などそれぞれの拠点はアングルにもこだわりを感じさせるし、個人的にはこのくらいキレイなら十分。最近PS2~PSPあたりの年代ばかりをプレイしていたというのもあると思うけど…
 無双系アクションでおなじみの後方視点がほとんどだが、一部上からの俯瞰視点になったり横スクロールになったり、バイオハザードを意識したと公式が明言している視点もあるなど、いいアクセントになっているところがある。

●音楽
 作曲は岡部圭一氏。ゲームでは「エスプガルーダ」「鉄拳シリーズ」など、アニメやJPOPにもかかわる作曲家だそうだ。鉄拳シリーズであればどこかで聞いているはずだが…
 特徴的なのは”ボーカル曲が圧倒的に多い”という点で、しかもすべてが架空言語で作られている。作詞と歌はエミ・エヴァンスさんという方でイギリスと日本のハーフとのこと。歌声もとにかく素晴らしいが、耳障りのいい架空言語の歌詞がまた凄い。
 主人公の村で流れる「イニシエノウタ」は、歌っている人(デボル)が近くにいると歌が聞こえて遠くなるとインストに変わる。こういった細かい演出も良く、そもそもの曲が非常に良いので酒場に入り浸りたくなるという。

 もうひとつ、同じメロディラインをいくつかのバージョンで作るという手法を取っている。個人的に非常に好きな手法で、FF13やサガフロ2などを手掛ける浜渦真志氏が得意としているものでもある。飽きにくく作るのが大変なやり方かと思うが、ひとたび乗り越えると圧倒的な存在感になる。場面場面の曲の使い方も良く、「曲を聴けば場面が思い出される」というのが見事。

●サブイベント・釣り
 ゲーム中には数々のサブイベントが存在し、「クエスト」という形で受注する。「○○を何個集めてきてくれ」「○○を探して/持って行ってくれ」などのお使いイベントがあまりに多くて拠点の行き来だけで相当の時間を要するのはどうかと思うが、印象に残るクエストも多く、単なるプレイ時間の間延びという要素に留まっていないあたりが素晴らしい。

 サブイベントのついでになるが、各地の釣りポイントで釣りを楽しむこともできる。主にクエスト潰しと序盤の金策に使うくらいというところが残念で、せっかくだから料理とかで使えたり食べられたりすると面白かったのでは。

●アクション
 武器は序盤の少年期から使える片手剣と、青年期に入ってから使えるようになる槍・両手剣の3種類あり、□の攻撃と△の特殊攻撃を使い分ける。R1で防御・R2は回避・L1とR1に道中取得できる魔法をセットして使える(それぞれキーコンフィグで変更可能)。
 3種類の武器に関しては、圧倒的に槍が強い。両手剣とほぼ同じ攻撃力に加え、△の突き攻撃が高い攻撃力に加えてひるませる性能まで優秀で、これだけでほとんどの敵にごり押しが可能。両手剣は広い攻撃範囲によるなぎ倒しが快感なもののそれを生かせる場面が非常に少なく、片手剣については手数の多さを考えたとしても弱い。ある程度槍の使い方を縛らないと、難易度NORMALの話にはなるが相当簡単なゲームになるのが…

 魔法についても、結局通常攻撃(特に槍)が強すぎることもあって使いどころが限られ、一部ボス戦で半ば強制的に使わされる以外は別になくても問題ないというレベルに落ち着いてしまっている。エフェクトはどれもこれもかっこいいだけに惜しいところ。

●収集要素
 武器や魔法・防御回避行動には”ワードエディット”と呼ばれる言葉を追加して能力を上げるシステムがあり、それぞれ前後に言葉を加えることができる。言葉を加えてよくわからない文にするというのはなかなか新しかったが、やっていることは他ゲームでいうところのアクセサリ追加と変わらないので新鮮味としてはどうかというところ。言葉自体はかなりきわどいものもあり、特に後ろのワードは「に、殺す、殺す、殺す」 とか「が、心臓を抜き去る」とか。

 ワードは全92種類あり、取得率表記もある。取得についてゲーム中にヒントとなるものはなく、しかも取得できる場面が決まっているものもいくつかあるため、全取得はかなり困難を極める。特に青年期最初限定のものは取り逃すと再取得が不可能なので悲惨なことに。
 先に紹介した「クエスト」も取得率表記あり。こちらも少年期のみのものが半分ほどあり、逃すと再取得不可。これも周回の都合上取り逃すとどうしようもなく、何かしらの助けがあっても良かったような気はするが。

●総評
 アクションや成長要素などの部分はそれほど特筆すべきものはなく、どちらかというとストーリーやクエスト・音楽などの「ゲーム全体の空気」に相当寄った作品。アクションは全体のバランスも含めて今一歩という感じだけど、それ以外の魅力が非常に高い。ストーリー・世界観についてはかなり上位に食い込む作品かと思う。