[Data]
ハード:Playstation 4
メーカー:日本ファルコム
発売日:2017.09.28
ジャンル:ストーリーRPG
実勢価格:2,500~3,500円(中古価格)

評価:★★★

英雄伝説 閃の軌跡III

●プロローグ

「お前は、お前らはまっすぐ前を向いて歩いていけ……」
「ただひたすらに、ひたむきに前へ……」

—その言葉が、彼らの決意と覚悟を決めた。

 七耀暦1206年、春——あの内戦から1年半近く。
 大陸最大の都市、クロスベル自治州を併合し、数ヶ月後には北方のノーザンブリア自治州を併合したエレボニア帝国は宿敵、カルバード共和国を大きく上回り、名実ともに大陸最大の国家となっていた。
 その一方、帝国政府による中央集権化が加速し、税制も統一されることで、貴族に統治されていた地方は混乱・弱体化し、新たな問題も生まれつつあった。
 そんな中——かつて内戦で暗躍し、退けられた結社《身喰らう蛇》が、数多の猟兵団や共和国の動きに紛れるように、沈黙を守ってひそかに動き出し……

 時を同じくして、帝都西郊・リーヴスの街に、一人の黒髪の少年が降り立つ。
 《灰色の騎士》リィン・シュバルツァー。

 学生の身ながら、灰の騎神ヴァリマールの乗り手として内戦終結に貢献し、クロスベル戦線や北方戦役でも活躍した”若き英雄”——
 2月にトールズ士官学院を卒業したばかりの彼が、新たに”教官”としての道を選び、とある新設校へと着任したのである。

——トールズ士官学院・リーヴス第II分校。

 皇太子の入学を受け、本格的な軍事学校へと変革された本校とは対照的に、訳ありの貴族子女や問題児、外国人などを受け入れた”落ちこぼれ”の分校。
 分校長は、旧貴族連合軍の総司令だった《黄金の羅刹》オーレリアが務め——
 そして3つに分かれたクラスの中には、VII組《特務科》——リィンが担任を務める少人数の特務科クラスがあった。

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ「英雄伝説・軌跡シリーズ」9作目、PS3/Vitaで第1作が発売された「閃の軌跡」シリーズとしては3作目となる。PS4での同シリーズ展開は今作が初めてで、日本ファルコムのPS4作品としてはいずれもVita発売の同ソフトをリメイクした「東京ザナドゥ eX+」「イースVIII」に続いて3作目、オリジナル作品としてはPS4初の作品となる。

●ストーリー【続きもののためネタバレがあります】
 閃の軌跡第2章という表現がぴったりだろうが、前半はトールズ第II分校教官となったリィンと、その教え子となったユウナ・クルト・アルティナ(のちにアッシュ・ミュゼが参加)との特務活動がメインとなり、I・IIで訪れることのなかった(リィンとは別班が訪れていた)帝国西部を中心とした地域を回っていくこととなる。イメージとしては閃Iのストーリー展開に非常に近く、おそらくそのあたりを意識した流れにわざとしているんだろうと思う。そんな中、空の軌跡から何度となく出てきた悲劇の街「ハーメル」が初登場、さらに西風の旅団団長ルトガーの登場と、見どころはいくつか。
 そこに「旧VII組メンバーとの再会・合流」が加わるのだけど、2~3人ずつを複数回に分ける形はまだいいとして、毎度毎度ピンチの時にさっそうと現れるパターンを繰り返す。もはやお約束とは言え、お約束を作る側が狙っている、しかもそれがプレイヤーに丸見えというのはさすがにモヤモヤする。いくら何でもワンパターンすぎだからね…

 さて、2章では碧の軌跡・零の軌跡の舞台となったクロスベルが登場する。今回の新VII組にクロスベル出身者がいる以上どこかで絡んでくるとは思ったが。ジオフロントや旧市街以外を今のグラフィックでほぼ歩き回れる仕様には感銘を受けた。零・碧で登場したキャラもかなりの数今回出てこなかったが、将来的にリベールもこんな感じで歩き回れるとまた感慨深いんだろうな。
 3章以降は、衝撃の展開がガンガン挿入され、一気に盛り上がりを見せるところ。アッシュの銃撃イベントのすぐ手前に「呪い」について語られるが、全貌がまだわからないからふんわり感が強くて、これ大丈夫?っていう感が否めなかった。何せここまで戦争・軍隊と現実要素ばかりで来ていてファンタジーな要素は裏側に来ていたもので、ここに来てこの流れ?という…次回作に期待というところでしょうか。
 カレイジャス爆破はさすがにびっくりしたな。ミリアムはあれとしても、爆破されたメンツがこのままフェードアウトするとは思えないんだよなあ。何らかの形で助かってそう。特にオリビエは退場させていい人物じゃないからね…

 閃I・IIと終わり方どうなの…となっていた本シリーズ、IIIになってもとんでもない終わり方。巨いなる黄昏を止めに行ったはずが結果的に自ら引き金を引くリィン、I以上の鬱エンドで次回立ち上がりが心配。

●キャラクター
 旧VII組にはほぼいなかったタイプのメンバーが揃い、しかも人数も絞ったのでそこまで散らからずにスポットが当たったのは良かった点になるだろう。底抜けの明るさとクロスベルイベントで強烈な存在感を放つユウナ、意外といそうでいなかった優等生キャラクルト、前作までのキャラを見ているからこそトールズでの成長が楽しいアルティナ、ミュゼの一歩間違ったらウザいキャラになりそうだったけどギリギリ踏みとどまった感は素晴らしいバランス感覚だったように思うし、アッシュの不良キャラからいい子になるのが早かったなあ…からの衝撃的な流れなど、全体的にいいバランスと構成だったかと。

 そのほか、空の軌跡からティータが分校生として入り、途中零・碧のティオが入ってきたりと、過去のプレイヤーキャラの参戦も見られ始め、オールスター感が出てきた。まだ終わりでもないのにここまで絡ませていいのかな…という気もするが、まあ。
 プレイヤーキャラというところで行くと、新旧VII組全員の装備品・クォーツ管理を要求される場面があってさすがにちょっとだるかった。しかも全員しっかり備えないといけない場面もあるのでおざなりにもできず。

 プレイヤーキャラ以外で見ると、オズボーンやルーファスなどの重鎮はいいとして、レクターの強者感が作品を追うごとに消えていくのが何とも言えない。空の軌跡の時から類まれなる先読み能力で活躍し続けてきたわけだけど、ミュゼの登場で完全に同能力を潰され、どんどん小物化している印象。作品内の言葉を使うと「盤面を読める」人が多すぎて超人だらけになってきているので、一部キャラは埋もれざるを得ないのかもしれないけど。

●戦闘・クォーツ・クラフト等
 今回の新システムは「ブレイク」と「ブレイブオーダー」。今作では敵全てに「ブレイクゲージ」があり、攻撃を当てるとゲージが減少、ゲージが0になるとブレイク状態となって行動不能+アイテムドロップが確定するほか、100%崩しが入って追撃が出来る。FF13とかにも似たようなシステムがあったので、プレイ済みの方はそのあたりを思い出していただけると。
 2つ目の「ブレイブオーダー」は、崩しによる追撃で貯まるブレイブポイント(BP)を使って、一定時間味方全体に発動する有効効果を発動できるシステム。ブレイクダメージのアップや行動後の待機時間減少・各種ステータスの上昇・被ダメージの減少など様々なオーダーを発動できる。

 今作ではとにかく上記2つのシステムが肝になっており、この2つのシステムをうまく使えるかどうかで難易度がガラッと変わる。
 今作のボス級の敵はほぼすべて体力減少で「高揚」を使用するのだが、この高揚はHP回復+ブレイクゲージ全回復+攻撃力・防御力アップがかかるもので、使われると一気に戦局をひっくり返されるほどの効果がある。
 結果、高揚を防ぐには使われる前に倒すしかなく、ブレイブオーダーでブレイクダメージアップのオーダーを発動→ブレイクダメージの高いクラフトを連発し敵をブレイク状態に→待機時間減少のオーダーを発動→ブレイク解除前にタコ殴りで倒し切る という流れが鉄板になり、この流れにはまらないとかなりの苦戦を強いられる。

 具体的にはユウナの「スレッジハンマー」(ブレイクダメージ+300%・BP消費1とお手軽)+クルトの「太刀風の陣」(硬直0.3倍・BP2とこちらもかなりお手軽)の2つになるが、この2つのオーダーが再序盤から使えるうえに最終盤まで使い続けられる万能さ。これにブレイク時のダメージ上昇マスタークォーツをつけてしまえば、後半のボスですらブレイクから一度もターンを渡さずに勝利することまで可能。

 結果、アーツも必要なければ前作までの連携攻撃(ラッシュなど)もほぼ必要なくなり、軌跡シリーズあるあるの「新システムだけが前面に出る戦闘バランス」という形になってしまった。あくまで難易度NORMALを基準にした話ではあるが。
 いつものシリーズだとここまでとがったバランスは次回作で大幅に修正されるので、次はブレイクが超弱体化するだろうなと思っているのだが、次があるからそっちで直せばいいかみたいにも見えてきて、悪い言い方をするといつまでたっても進歩がないというか…。零→碧の時からそうでしたよね?っていう。

●音楽・グラフィック
 ジュノー海上要塞の曲「solid as the Rock of JUNO」がよく名曲として挙げられているが、手配魔獣の曲「Touchness!!」がビビっときた。たぶん今まで聞いた戦闘曲ではシリーズ1番かもしれん。クロスベルの曲も良かった。今までの作品のような代表曲というのはないようなイメージだけど、全体的な質は非常に高い。

 グラフィックについては、PS3からPS4へとプラットフォームが変わったことで劇的に改善された。特に人物グラフィックについてははっきりと違いが分かるほどで、全体的に頭身が上がって顔のパーツのバランスが整えられ、作品内で出てくるI・IIの回想シーンを見ると、ここまでグラフィック違ったっけ?となること間違いなし。

●総評
 安定して面白いんだけど、いろいろ心配なところが出てきたのも確か。オールスターすぎる感もあり、ここを次回作でどう完結させるのか…。ますます便利になったファストトラベル・イベントフラグがわかりやすく表示されるマップ・全体的なレスポンスの良さなど、基本的なところは痒い所に手が届く仕様、ここはさすがにシリーズを重ねている作品だけあって丁寧な作り。