[Data]
ハード:Playstation 4
メーカー:日本ファルコム
発売日:2017.09.28
ジャンル:ストーリーRPG
実勢価格:2,500~3,500円(中古価格)

評価:★★★

英雄伝説 閃の軌跡IV -THE END OF SAGA-

●プロローグ

『———それでは始めるとしよう、リィン』
『世界を絶望で染め上げる、昏き終末の御伽噺を』

昏黒の闇に、彼はひたすら蹲っていた———
戻ることのない輝き、帝国にまき散らされた呪い。

いくら悔やんでも悔やみきれず。
いくら問いかけても答えは返ってこない。

大切なものを守れず、取り返しのつかぬ事をした己に絶望し、
”贄”となった運命さえもただ従容と受け入れる。

それが《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーの成れの果てであった。

———そして、世界は終焉に向かって動き始める。
エレボニア帝国という史上最大の軍事国家は
《大地の竜》(ヨルムンガンド)の名の下に世界を呑み込み始め……

世界もまた、最悪にして最低の最善手によって
巨竜を絡め取り、その首を落とさんと動き始めていた。

その劫火によって宿望を成就せんとする黒き意志と
主の計画のため手段を選ばぬ蛇たちの狙いを識りながら。

『———だったらあの人の胸倉を掴んででも
 違うだろう、そうじゃないよって分からせる!』
『それがあたし達にしかできない
 ”役目”なんじゃないんですか!?』

———その言葉が、擦り切れた魂に再び火を熾した。
エレボニア帝国、トールズ士官学院《VII組》。
身分や立場、国籍すら超えて集められ、
二代目も加わった曰くつきにして”最高”のクラス。

彼等は立ち上がる———終焉に諍うために。
彼等は前に踏み出す———光と翼を取り戻すために。

『さあ———”全員”で見届けてやるとしようぜ』
『この最悪で、クソッタレなお伽噺の結末をな』

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ「英雄伝説・軌跡シリーズ」10作目、エレボニア帝国を舞台にしてきた「閃の軌跡」シリーズとしては4作目となる”完結編”。

●ストーリー【続きもののためネタバレがあります】
 率直に言って「緊迫感があまりにない」の一言。オズボーンはラストにしか出てこないだろうなとは思っていたが、それ以外の敵役でまともに敵役していたのがルーファスくらいだったもんで、全体的に新旧VII組に対しての期待が前面に出ていて、どう考えてもマイナスに作用しそうなイベントがないまま話が進んでいく。
 レクターについては前作でも指摘したけれども今回も結局挽回できず、せっかくクローゼにルーシーまで登場させたのに、悪役にもなり切れず何のために立ちふさがったのかもよくわからない感じに。これはクレアも同様だけど。
 ジョルジュやシャロンなんかもそうで、結局こちらへの配慮というか心情が滲み出ているので、こりゃ最終的に戻ってくるなというのがすぐわかってしまう感じだし…

 地上で数百万人が死ぬかもしれない大戦争を控えているのに、世界を救うはずの彼らの動きが「試練」だの「相克による1vs1」だの言われても。もちろん、そこに至るまでの街中の変化はさすがだなと思いましたけどね。ストーリーが進むごとに召集令状が来て彼出されていく一般市民。最終的にはハロルドさんも軍服来てたしね。
 そもそもリィンたちメンバーは帝国にとっての邪魔者であり大手を振って歩けるはずのない人たちなのに、どこの街でも何の問題もなく歩けてしまうっていうのも緊迫感を削ぐ原因になったかなと。
  その後最終相克に入って起動要塞に突撃するとなって、直前にミシュラムに乗り込んで完全休息というストーリー展開もちょっと疑問だった。今までの軌跡シリーズの流れ上、どこかでボーナスイベントというか完全休息イベントを入れ込んでくるのは必然だとは思うけど、戦争本格開始前に乗り込んだほうが良くないか?と率直に思ってしまった。相克の都合上、闘争を起こしてないとダメなんだっけ?
 オズボーンに会って話を聞くことで、なぜ緊張感がなかったかというところも何となく理解できるようにはなっているので、結果これもオズボーンの望んだことなんだと一応納得はできるんだけど。

 進め方というところで行くと、「…のためにも!」「おー!」みたいな場面が何度繰り返されたかわからず、「おー!」も「おおー!」だったり「応!」だったりと安定せず。似た展開多くて食傷気味なのに、全員揃って同じようなセリフ回しになるからまた?ってなる。VII組としてずっと一緒にいるからという言い訳もあるかもしれないが、どんどん全員のセリフ回しが似てくる感じがして、これはダメでしょさすがに、と思ったよ。

 いろいろ苦言を呈したけども。それでも、最後の大団円は良かった。ヴァリマールの最後のセリフにぐっと来て、リィンもようやく本エンディングで報われたなって感じだし。絵師さん渾身のパノラマイラストも素晴らしかった。このエンディングはなんだかんだ全て吹っ飛ばしてくれるインパクトがあったな。空/零碧/閃とプレイし続けてきて良かったな、と素直に思える部分だったかなと。

●キャラクター
 いきなり開始からエステル・ヨシュア・レン・ロイド・エリィ+キーアパーティとかオールスターキャストすぎて驚きだったが、その後も鉄機隊にゼノ・レオニダスまで参戦、最終的にプレイヤーキャラは40名近くまで膨れ上がる。
 新旧VII組以外のメンバーはクォーツが固定なのでまだいいが、それでも15名以上のキャラの装備やクォーツを管理しなければならないのはなかなかに骨が折れる。もちろんメインで使うキャラは決まってくるのだけどね。

 新旧VII組に関して言うと、新VII組各メンバーが良かった、特にリィンを取り戻す第1章が。それに比べると旧VII組はとにかく意気消沈してしょんぼりしてた感があり、その後それぞれのメインイベントで多少取り戻した感はあるにせよ、新VIIに比べると残念は残念だった。I・IIで散々スポットが当たったから、バランスという意味では仕方なかったのかもなあとも思うんだが。

 今まであんまり触れなかったけど、今回の「絆イベント」はわかりやすい仕組みに変わってリィンハーレムを作りやすくなった。描写としてしっかりカップル化したのは旧VIIだけで、新VIIは今後も見守る的な感じに納まってたのは何より。

●戦闘・クォーツ・クラフト等
 前作で猛威を振るったブレイクがやっぱり弱体化し、1ターンでブレイク解除になったことで頻繁に狙うものではなくなった。前作でもそうだったのかもしれないが、今回はいろいろやっていくと最終的に「回避パーティ」が一番強いという結論になりそう。装備品やクォーツ次第で回避率+100%越えに持っていくことが可能で、これにカウンターダメージ大幅アップのマスタークォーツ「シリウス」を組み合わせると、カウンターダメージ数万を簡単に乱発できる。
 特にカウンターの範囲が広いフィーにシリウス+ゴーズをつけると、一人で特攻していけるレベルに。クルトやリィンも回避率を高くしやすいので、最終的にはこの3人にアリサ+ラウラを入れてラウラのオーダーで押し切る…がほぼ鉄板だった。アリサもロゼッタアローの火力がやたら強く、クラフトだけでも普通にメイン火力として使える。

 アーツもアーツでオーダーを組み合わせるとかなりの強さなので、クォーツ付け替えさえしっかりやっていればどんなパーティにしてもそれなりの強さにはなるが、最近の流れのクラフトゲー解消とまでは行かなかったかな、というのが正直なところ。

●総評
 ファルコムの近藤社長が2015年のインタビュー記事(→GAME WATCH)の中で、軌跡シリーズの進捗について「帝国編が完全に完結したところで、6割から7割になると思います」と発言しているので、おそらくもう1~2シリーズくらいは出るものと思われる。
 その舞台がカルバードになるのか、はたまたノーザンブリア・ジュライ・レミフェリア辺りになるのかは不明だが、あまりにオールスター感を出しすぎた閃シリーズのあとをどのように進めていくのか、楽しみよりも不安のほうが先に来る。今作で全部完結ならこれで良かったんだけどね。いい意味で裏切ってくれる次回作に期待しよう、ここまで来たら何だかんだプレイするだろうし。