[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:アクワイア
発売日:2011.05.19
ジャンル:アクションアドベンチャー
実勢価格:200~400円(中古価格)

評価:★★☆

AKIBA'S TRIP

●概要
 東京・秋葉原電気街を舞台に、カゲヤシと呼ばれる吸血鬼と人間の戦いに巻き込まれていく青年を操るアクションアドベンチャーゲーム。制作・発売は「天誅」シリーズや「勇者のくせになまいきだ。」シリーズなどでおなじみのアクワイア。秋葉原の各エリアをリアルに再現したマップが評判となった。

●非常に高い「秋葉原」再現度
 駅前や中央通り・裏通りなど全11のエリアを歩き回れる(UDXはUD+と名前を変えて1階部分が登場)。この手のゲームにしては足が少々遅めに感じるので、ダッシュなどあれば良かったかもしれない。
 1つ1つのエリアは狭いものの、実在企業とのタイアップによってかなりリアルに再現されている。実在する街の再現という意味では「龍が如く」に近いタイプだが、1エリアの狭さが災いして探索する楽しみは薄い。
 タイアップ企業は多岐に渡り、トキワムセン・ヤマダ電機・TSUKUMO・あきばお~・ドスパラ・ラムタラ・三月兎など店内での買い物が出来るタイアップ企業のほか、T-ZONE・クレバリー・TWO TOP・LAOX・とらのあな・スターケバブなど、入れたりはしないが実名でゲーム内に登場している企業も多い。
 タイアップしていない企業でも1文字違いで登場している(ソフマップ→ソフマックなど)し、細かい看板なども可能な限り再現している。この無駄な再現度の高さは必見で、看板から置いてあるものまで細かく見て欲しい部分だ。

 前述の通り、各エリアに買い物が出来る店(実在企業含む)も相当数あるのだが、店内マップが存在せず背景の違いだけ(その背景はかなりこだわってるが)になっているのがちょっと寂しい。しかも店員が普通の服を着ている(売り出し中などのたすきをかけているだけ)というのもしっくり来ない。ヤマダ電機に入ったのに赤いITウィッチまりあTシャツを着た店員が出てくるのはいくらなんでもおかしいだろう。ここまでこだわったんだから、せめてもうひと頑張りしてほしかったというのが正直な感想。

●ストリップアクション
 今作の目玉…というか基本が「ストリップアクション」。吸血鬼であるカゲヤシは日光に弱く、服を脱がせて肌を露出させることで倒すことが出来る(一部すでに露出しているのでは?という服を着ているカゲヤシもいるが)。ちなみにポリゴンモデルの出来の問題か、男女問わず下着姿になるがそんなにセクシーさを感じることはできない。みんな同じようなのっぺりした顔だしね…。

 今作ではキャラクターの耐久力=服の耐久力となっており、頭(上段)と上下服(中・下段)の3パーツにそれぞれ攻撃を加えることで服の耐久力を下げ(ダメージを受けた服は点滅する)、その後それぞれの服を脱がすか破くことで勝利する流れだ。
  △・□・○がそれぞれ上・中・下段攻撃で、店に販売されている本を買うことで技やコンボを増やすことが出来る。Rが回避・×がジャンプ。回避+攻撃でのカウンターや(服を即脱がせるカウンターストリップもある)起き上がり攻撃もある。
 攻撃ボタン長押しで相手に掴みかかることが出来、服の耐久力がない状態(画面上にボタンのマークが表示される)で対応するボタンで掴みかかると服を脱がせることが出来る。 他に耐久力を減らした服がある場合は画面上にボタンが表示され、対応したボタンを押すことで連続して脱衣を行う「脱衣コンボ」が発生する。

 タイミングをつかむのに若干苦労するものの、ダメージを与えると点滅したり対応するボタンが出たり、脱衣コンボも対応のボタンが出てくるなどしているので、操作については混乱することなくすぐ慣れる。コンボは続ければ続けるほどタイミングが難しくなる(速くなる)が、いつでも出せるメニューにより表示をストップできるという裏技的なテクニックも。

●vs多数に問題を抱える仕様
 今作は攻撃を喰らったときに無敵時間が一切存在しない。まあこれは悪いことではないのだが、敵が容赦なくコンボをしかけてくるので囲まれると一方的にボコられる。ふっ飛ばしや転ばせる攻撃に乏しいのもどうかと思うところで、こちらからの攻撃も一方的になる半面、相手からの攻撃も一方的になりがち。せっかくのジャンプもかなり高く飛んでいるはずがなぜか敵を飛び越えられない(ある意味リアルだが)。
 ロックオンがなく、Rを押すと敵の方向に向いてくれる機能はあるものの、複数の敵が近くにいる場合は思った通りの相手に向かないことも多々起こり、その間に別の相手から殴られるといったことも日常茶飯事。
  スキルの1つである範囲攻撃がvs多数の対策用だったと思われるのだが、出が遅いうえにそもそもの攻撃範囲が狭く、敵に近付いて出さなければならないし出す前に殴られ止められるという本末転倒な攻撃になってしまっている。よりによってコマンドも→←+攻撃と暴発しやすく、そもそも覚えないほうがうまく進めるのではないかと思えるほど。

 全体通して、「これって1vs1をベースに作ったんじゃないの?」という感想。無理やりvs多数に持って行っただけなような気がする。1vs1での戦闘は楽しいと思うんだが、多数相手だとちょっと理不尽なところが多く、後述の強化要素で強くなればいいじゃないみたいな投げっぷりが感じられてしまう。

●コレクター要素+強化要素
 脱がせた服や落とした武器はすべて装備品として入手できる。洋服屋「再建」に売ると売った服が全て店頭に並ぶほか、「+○」の補正がついたものを売るとジャンク屋で+分の強化アイテムを入手でき、任意の武器や服を最大+99まで強化することが出来る。
 メニュー上でコレクション具合が見れるとなお良かったと思うが、店に並んでいるのを見れば大体わかるのでまあ良しというところか。

 強化については、+のアイテムを売るとその分だけ強化アイテムが並ぶというわかりやすい仕組みに加え、今まで育てていた武器や服に関しても同じように+分だけ強化アイテムとして販売されるので確実に有効利用できるというあたりが良かった。
 敵から手に入る武器や服にも強化が付いている以上仕方ないのかもしれないが、同じ服でも1つづつすべてリストになるので売るときに1個1個選ぶ必要があり、大量に売りたい時がとてつもなくダルかったのはマイナス。

●ストーリー
 いくつか分岐のあるストーリーだが、最終決断がかなり後半にあるので何周もしなくても済むあたりは良い。いろいろな勢力を上手く織り交ぜた、アキバのオタク達による(無駄に)熱いストーリー展開は、今までにあったようでなかった感があり何だか新鮮。
 ストーリーも全体的な空気感も、正直言って好き嫌いの分かれる内容かとは思うんだけど、まあタイトルとパッケージ見りゃわかるよって感じだし、完全に”狙った”内容なので、タイトルとパッケ見て興味を引かれたならおそらく外すことはないだろうと思う。

●総評
  アクション部分が一番もったいない。特にロックオンの仕様は残念というほかなく、PSPのボタン数だから仕方なかったのかは不明だが、上手く割り振って入れて欲しかったというところか。
 ストーリーのところでも書いた通りだが、この狙った内容に少しでも引っ掛かる要素があるなら、秋葉原各地の探索だけでも十分面白さを見出せるだろう。いろいろと大味なので万人におススメは出来ないけど。