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ハード:Playstation Portable
メーカー:日本一ソフトウェア/システムプリズマ
発売日:2010.02.18
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:500~1,000円(中古価格)

評価:★★★☆

クラシックダンジョン~扶翼の魔装陣~

●あらすじ(公式HPより)
 ある人は、そこに宝があるという。ある人は、そこに倒すべき敵がいるという。またある人は、そこにロマンがあるという。
  『そこ』は、世界のはてか、いどの中、はたまた、トイレのドアのむこうがわ。
 あらゆるところからたどりつき、さまざまな地へとつながる世界-

 人はその世界を、【マノアカズ】とよぶ…

●概要
 向こう見ずな少女プディングがお宝を求めてたどりついた謎の地「マノアカズ」。心配で追いかけてきた幼馴染のソウマとともに、マノアカズの探索を始めることになるが、探索を進めるうちにどんどん迷い込んでくる人物達。マノアカズとはいったいどんなところなのか。

 レトロ調のドットグラフィックとBGM・簡単な操作性と日本一ソフトウェアならではのやりこみ要素もふんだんに加えたアクションRPG。制作のシステムプリズマは2016年に日本一ソフトウェアに吸収されているが、それまではフォグや日本一ソフトウェア発売タイトルをメインに開発を行っていた。
 マノアカズからは様々なダンジョンに入ることが出来るが、1つ1つのダンジョンは1分~5分程度でクリアできるような短いものがほとんどで、携帯機らしい短いプレイが想定されたものとなっている。ゲーム途中に加わるランダムダンジョン・通称「ランジョン」は99階までというかなり長丁場を想定したもので、じっくりプレイにも対応する形。

●レトログラフィック・BGM
 まずはここから。PSPでは「勇者のくせになまいきだ。」とか「勇者30」をはじめとしたレトログラフィックゲームがいろいろと登場したのでさすがに目新しさはないが、BGMまでレトロ調に変えられるというところまで踏み込んだのはなかなか面白い。
 このレトロ調を生かした「キャラメイク」要素があり、オリジナルキャラをドット絵で作成できる。縦横が18×18とそれほど広くないのでまだ作りやすいとは言え、正面・左右側面と後ろの4方向それぞれ作る必要があるのはなかなか骨が折れる。ただ楽しい。

 BGMは、通常BGMと同じBGMを8bit調にしたレトロ調BGMとを選択できるようになっている。グラフィックと合っているのはもちろんレトロ調のほうだが、通常BGMの出来が非常に良いのでどちらをメインにするか迷う。ゲーム音楽ベスト1000常連の「風を切って」「異邦の騎士」をはじめ、序盤に流れることの多い「ダンジョン」「till dawn」「命をつなぐ水」「cosmic piper」など良曲が揃う。全体的に民族調を意識したような曲が多く、合う人にはとことん合うような感じがする。「The Explosion」もいいですねえ。

 サントラがどうやら販売終了しているらしく、現在30,000円以上とかいうとてつもない値段がつけられている。

●基本操作
 方向キーで移動・○で攻撃・×でジャンプ・□で盾を構える防御・△で技/魔法。Lで登録技の変更(最大3つまで登録)・Rがダッシュ。ダッシュ中に□でスライディングが出来る。操作自体はそれほど難しいものはなく、すぐ慣れる。
 重要なのはダッシュと防御の使い方。ダッシュはもちろん早く移動できる手段だが、ダッシュ中は防御力が半分になる。ダンジョン内のいたるところに設置されている「罠」の存在が本作ではかなり大きく、踏んだ時に受けるダメージもダッシュ時に増幅するようになっているので、後半はむやみにダッシュを使わないほうが良い。序盤~中盤はがんがん踏んでいってもそこまで問題にはならないが。

●装備
 武器は下記3種類。
 ①剣:3連攻撃可能。ダメージのブレが少なく安定した攻撃が可能。
 ②鈍器:斧・棍棒など。ダメージのブレが大きく安定しないが、最大ダメージは大きい。溜め攻撃が出来る。
 ③杖:遠距離属性攻撃が出来る。武器によっては3Way攻撃も出来る。
 振りが割と早く3連攻撃のできる剣が一番バランスが良いのかと思いきや、3連攻撃の隙が大きい+前進して罠に突っ込んだりすることが多いなどの理由で、通常攻撃は鈍器が一番使いやすい気がする。杖は正直言ってほとんど使い所を見いだせず、これは使えるものなのか…と思っていたが、魔法の詠唱時間が半分になるらしい。なるほど。
 ほか、装備品は鎧と盾。武器も含めたすべての装備品には「称号」がついており、ついた称号によって能力がアップしたり、売値が上がったりする。1つの装備品につき24の称号があるので、全ての称号を集めるという収集要素にもなっている。

●魔装陣
 今作の目玉となるシステムで、真ん中に主役(操作キャラ)・主役の周りに脇役を配置することによって、主役の能力を大幅に強化できる陣形を作る仕組み。配置できる人数や場所はレベルアップなどにより覚える魔装陣によって異なり、1人~最大8人までの配置が可能。配置場所の外側には脇役マスとリンクする「アーティファクトマス」があり、ここに専用アイテム「アーティファクト」を配置することで主に主役能力のアップが行える。脇役を配置するマスにはレベルアップ時の能力補正がかかるマスもあり、脇役を育てることを重点に置くのか、主役の能力アップを重要視するのかで選ぶ魔装陣が異なるなど、いろいろな進め方が出来るのが面白いところだ。

 魔装陣での脇役は主役の盾となり、敵から攻撃を受けた際には魔装陣の外側に配置されたキャラからダメージを受けていく。脇役のHPが0になると脇役についているアーティファクトの効果もなくなるため、主役の能力が大幅に低下してしまう。つまりこの魔装陣システムの肝は「ダメージをいかに受けないで進むか」だ。
 序盤はあまり考えなくても適当に装備しているだけで進めるのだが、後半のステージやランジョンをまともに進めようと思うと、この魔装陣をかなり詳しく理解できないと必ず詰まる。とてもよく考えられているシステムだがゲーム中で圧倒的に説明が不足していて、もう少しチュートリアルでもあったらなあと思うところも。

 せめて魔装陣ごとの特徴を簡単に表記してくれればいいのだがそれもないので、魔装陣一つ一つをじっくり眺めて特徴を自分で掴まなければならない。魔装陣の名前である程度予測できるものもあるが。

●後半は罠避けゲーに
 後半ステージやランジョンに入ると罠の数が尋常ではなく、しかも受けるダメージもかなりのものに。踏む以外に起動の方法がないのもどうかと思う。せめて目の前の罠を起動できる技を用意するとかしてほしかった。武器を振ると発動するとかねえ。
 ダッシュ時に防御力が半分になる(=罠で受けるダメージもほぼ倍化する)仕組みも相まって、後半はダッシュを使うのが危険すぎてほぼ歩き一辺倒に。連続でダメージを受けるバーナーの存在もやばすぎる。
 何かこう、罠対策を頭に置かなきゃいけないステージがあまりに多すぎて、もう少し敵とのアクションをメインに据えてくれても良かったんじゃ…と思ってしまう。ただでさえ後半の敵は強いんだから尚更ね。

●総評:良くも悪くも日本一らしい作品?
 日本一の作品はPS2時代から「やりこみ」をメインに置く作り方をする作品が非常に多いが、本作もランジョンクリア・LV/ステータスMAX・装備品/魔装陣集めといろいろなやりこみ要素を用意している。操作も簡単なので、とにかくもくもくとダンジョンに行って敵を倒しLVを上げアイテムを回収し…という繰り返し。テンポも良く苦にならない。
 ストーリーの話をしなかったが、何しろ完全に空気。セリフ回しも好みがはっきり分かれそうなあたりは難点と言えばいいのかどうか。無駄に長いストーリーを挟まないのでテンポの良さには貢献しているけれど…

 ストーリーを追う(メインダンジョンクリア)だけだとプレイ時間はおそらく20時間を切るくらいかと思うが、ランジョンクリアを含めると倍以上に膨れ上がる。目指すところにもよるがボリュームもまずまず、音楽の良さも含めてプレイする価値の十分ある作品。もくもくと繰り返すダンジョン潜りが苦にならなければ。