[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:アクワイア/ゼロディブ
発売日:2008.06.26
ジャンル:3DダンジョンRPG
実勢価格:500~1,000円(中古価格)

評価:★★☆

[Review]2019.03.22

剣と魔法と学園モノ。

●ストーリー
 ある日突然現れた正体不明の地下通路群は、世界中を網の目の如く駆けめぐり、町や村、山や湖や砂漠をつなげて行った。好奇心か、射幸心なのか、人々は冒険者となってその迷宮に挑んだ。 時がたち、夢と神秘に彩られた「冒険者」という職業は、子供たちの憧れの的になっていく……。
 やがて、そんな子供たちのために、いくつかの「冒険者養成学校」が作られ、多くの少年少女たちが自らの冒険譚を夢見て今日も勉学に励んでいる。そして今年もまた、冒険者にあこがれる少年少女たちが、その門をくぐろうとしている。

●概要
 「天誅」などでおなじみのアクワイアが初めて発売した3DダンジョンRPG。開発はととモノ。シリーズ全作品や聖魔導物語などの製作を手掛けるゼロディブ。2007年8月設立のゼロディブにとっては今作が初作品。
 発売後にいろんなトラブルが噴出した作品であり、特に”既存ゲームのソースコード流用疑惑”については未だ発表もなく解決を見ていない。発表していないだけでバレバレなようなのだが。むしろ、解決を見ないまま10周年記念でリメイク作品を発売するという…

 今回のプレイについては、元となったと言われている「ウィザードリィ エクス2」との比較ができないので、そこで評価を落とすということは考えずに、純粋にオリジナル作品としてプレイしたという前提で評価した(つもり)。エクス2がそもそもレア化していてあまりに高いので、なかなか手を出せる状況ではないというのもあるんだけど(※2019年3月現在、中古で6,000円近くの値がつけられている)。

●基本システム
 ウィザードリィライクというかウィズそのまんまだが、ボーナスポイントを使った種族+職業のキャラクターメイキング・回避重視で難しめの戦闘バランス・レベルごとに回数制となっている呪文・キャラクターごとに管理する所持金。
 従来のウィザードリィでは見た記憶のないシステムとしては、素材を手に入れて合成する「錬金」がある。今作では敵が武器防具をそのままの状態で落とすことがほとんどなく、代わりに素材をたくさん落とすのでその素材を組み合わせて武器防具を作って装備するというのが基本線になっている。
 バッドステータスを治せる保健室にはお金を寄付すると同数の経験値に変わるという「募金箱」があるため、お金をどれだけ稼げるかが他のウィズシリーズに比べると高いのかな、という印象がある。手に入れたアイテムの鑑定にもお金使うしね。

 職業については、従来作品のようなステータスや装備品の違いのほかに固有スキルがついた。戦闘中にコマンドとして使えるものや、常時発動するものなど様々。上級職下級職がなくなり、職業の優劣がそこまではっきりつかなくなったように思うので、いろいろなパーティ組を考えられるようになったのは面白い部分かもしれない。

●戦闘
 ウィザードリィ系ではおなじみの複数グループと戦うターン制の戦闘で、一部敵は判別できるまで影のみのシークレットで登場するあたりも本家そのまま。防御力を上げると回避に直結するという本家アーマークラスの考え方もどうやらそのまま持ってきている様子。
 呪文についても本家同様の回数制で、最大9まであるレベルごとに覚える呪文と使用回数が異なる。MP制ではないので同じ呪文の乱発は不可、使いどころを考えながら進む必要がある。
 新しい要素としては、パーティ全員及び数人で発動できる「合体技」があり、道中様々な行動でたまっていく画面右上のテンションゲージを一定量使用して発動する。

 ウィザードリィプレイヤーならこんなもんだろうという、未プレイで飛び込むとなかなか厳しいかもな、というくらいの難度だろうか。厳しめだけどバランスはしっかり取られているように感じる。

●ダンジョン(地下道)
 いくつかの拠点が地下道によって結ばれているという設定で、チュートリアル的存在のトレーン地下道から始まり、クリア後のダンジョン含む全17の地下道を探索することとなる。
 それぞれの地下道はLEFT⇔中央⇔RIGHTの複数階層があり、各地下道の中央階層のみ専用マップになっているが、LEFT・RIGHTのマップは複数あるマップからランダムに出現するため、地下道に入るたびに違ったマップになるという仕組み。ランダムマップはすべて上下左右対称に作られており、マップ内にあるマジックキーを取って開錠することでショートカットが可能になる。

 浮遊スキルがないと侵入できないディープゾーンや呪文使用不可&常駐呪文を無効化するアンチスペルゾーン・何も見えなくなるダークゾーンなど、こちらもウィザードリィでおなじみのゾーンのほか、踏むとワープするワープゾーン、ダメージを受けるショックゾーンなども。
 ディープゾーン+アンチスペルゾーンの組み合わせもあり、呪文で浮遊スキルをつけているとアンチスペルで無効化されたあとディープゾーンに降りて即死(さすがに後半にしかないけど)。今作で踏破していない場所を表示するには超能力「迷宮念写」しかなくむやみに乱発できないため、この仕様はどうなのか…と思うところではある。

●薄いシステムフォロー
  シビアなゲームバランスだけど萌え系イラスト、おそらく「世界樹の迷宮」を意識したんだろうなあと思わせるゲームデザインな作品だが、難易度はそれとはまた違った形、基本システムのほうにも書いたが「回避重視のバランス」というまさにウィザードリィ。
  先に世界樹の迷宮があったので、難度についてはある程度想定していたプレイヤーも多かったんではなかろうかと思うけど、それにしてもこのウィザードリィライクなシステムに対してのゲーム内・説明書でのフォローがあまりに薄すぎる。明らかにウィザードリィをやったことがある人向けの説明で、攻略Wikiを見たほうが良いと言われるほどではさすがに困る。
 説明書にも最低限学科(職業)や種族説明・簡単なダンジョン説明はあるんだが、細かいところにほとんど手が届かないという状態。

●面白味を感じないダンジョンの作り
 ワープが大量に並んでいて正解以外はすべて入り口に戻されるというNo.21をはじめ、回転床だらけのマップ、ダーク・アンチスペルをとにかく敷き詰めましたみたいなマップなど、面白いと思って作ったのかな?と疑問を覚えてしまうマップがかなり多い。踏破率があるので全てのマスを埋めていくのもやりこみ要素の一つとなっているが、正直言って途中からかなりダルくなってくる。

●階層の多く手間のかかる各種コマンド
 アイテム受け渡しや移動・呪文の使用など、全体的にコマンドの階層が多くて操作が煩わしい。例えばアイテムの受け渡しだと、STARTボタンで「ステータス」に入ってキャラを選択、画面左のメニューで「道具」を選択し道具を選んで選択→渡す、方向キー左右でウインドウを切り替えてL/Rボタンで渡したい人に切り替えて左ウインドウから渡したいアイテムを選択、とこれだけの操作が必要になる。
 L/Rのウインドウ切り替えもLRのアイコンが表示されるだけでウインドウの色が変わるわけじゃないのでパッと見わかりにくく、最初の頃は誤操作を頻発した。
 同じようにアイテムの「鑑定」についても1個1個選択して鑑定を選んで、持ちきれなくなったアイテムを捨てるのにも1個1個選んで捨てて…と、なまじ素材アイテムをたくさん用意した結果総アイテム数が多くなったのが完全に裏目に出ている感がある。

 アイテムで言うと、「錬金」をするのに素材アイテムを全て所持している必要があるが、倉庫に預けたものも選択できるとなお有り難かった。倉庫に預けたアイテムを同じように取り出して…分配して…という作業がかなり面倒で…

●総評
 細かいことだと、文章送りも雑とか、ウインドウ開きも微妙にもっさりしているとか…。ひとまず経緯は置いといて、ベースが良くも悪くもウィザードリィなのだから大きな破綻がないのは当然の話なんだけども、どうにもそれを生かせていない感が半端ない。
 この手のダンジョンRPGは踏破していく作業感に面白みを感じていくものなんだと思うんだけど、そこまでたどり着かないというかね。