[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:バンダイ/マイクロビジョン
発売日:2005.06.02
ジャンル:RPG
実勢価格:800~1,000円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2015.09.27

英雄伝説 ガガーブトリロジー 朱紅い雫

 神々の眠る地、エル・フィルディン。ここでは、光の神・バルドゥスを信仰するバルドゥス教会と闇の神・オクトゥムを信仰するオクトゥムの使徒との争いが続いていた。親を早くに亡くした兄妹アヴィンとアイメルはバルドゥスの本拠地カテドラールで育てられていたが、オクトゥムの使徒によるカテドラール襲撃により生き別れとなってしまう。
 8年後、逃亡後の育ての親であった慈悲の賢者レミュラスが老衰のため息を引き取る。死の間際、賢者ディナーケンがアイメルの行方を知っていると打ち明けたことから、アヴィンは友人マイルとともにアイメルを探すため旅立つことを決意する…

 英雄伝説シリーズ第2期「ガガーブトリロジー」第2作、『英雄伝説IV 朱紅い雫』のPSP移植版。PSPでの前作「白き魔女」から半年後にリリースされた正統続編作であり、制作ももちろん前作同様のマイクロビジョン。
 巨大な大地の裂け目「ガガーブ」の西側に位置する「エル・フィルディン」が今作の舞台となる。前作「白き魔女」はガガーブ暦992年を舞台としていたが、今作はガガーブ暦936年を舞台としており、前作から56年前の物語ということになる。

 ストーリー展開は前作よりもかなり重ため。仲良い幼馴染の巡礼の物語と生き別れになった兄妹の物語では入りがそもそも全然違うというところはあるが、見守られながら成長していく物語だった前作と比べると、主人公アヴィン自らが切り開くというところは「相反するテーマ」だったのかな、と感じるところがある。
 前作よりも悪人が悪人らしくはなったが、それでも裏にいろいろ抱えているという描写もしっかり完備されているあたりはさすがと言うか。もう少し突き抜けても良かったとは思うけど。
 これは前作もそうだけど、敵味方問わず全体的にキャラの印象付けがうまいなあと。パーティーキャラクターだけでも結構な数が出てくるが、メインヒロインやマイル以外のキャラにも自然に(かつ頻繁に)スポットが当たるようになっていて、すんなり印象付けられる。最終盤の展開がベタすぎて笑ったが、うまくまとめてきた。

 グラフィック関連は、フォントが見直されたかかなり見やすくなったのと、街の作りこみが前作よりされている印象。各地に宝箱も点在するようになるなど、一定の探索要素も増えた。
 3Dを生かしたグラフィックは前作同様だが、段差のある街並みが多くて通れるところと通れないところの見分けが難しく、最序盤の王都フィルディンからいきなり歩きにくいほか、斜め手前からの視点が仇となる箇所がかなり多い。
 今作も障害物を自動で避けていく動きが変わらず、カウンター越しの会話に苦労することも前作同様。変に避けた結果段差の下に落ちてしまうことが起こるなど、前作以上にこの自動避けの相性が良くない。前作はオンオフできればいいのでは?くらいの感想だったが、今作に関してはもはや「ないほうが良かったのでは…」というレベル。

 前作でセミオートだった戦闘は、今作では視点はそのままのコマンド選択式ターン戦闘に切り替わり、ごくごくオーソドックスなものとなった。移動や魔法の発動に結構シビアな範囲設定がされたこともあり、攻撃が当たらない&魔法がかからないことが頻発することとなってテンポはかなり悪くなった。魔法や必殺技のエフェクトも良くはなったがエフェクト自体が長いものが多くなり、ザコ敵狩りがかったるい。魔法や特殊攻撃については、相変わらず敵が倒された場合のオートターゲットがなく、無駄に1ターン消費することになるのもどうかと思うところ。
 戦闘に範囲指定+移動の要素があるゲームはたくさん存在するが、こういうのはターン制ではないものでこそ生かされるもので、攻撃(魔法)範囲に敵がいない場合に移動だけで1ターン使用してしまうのでは使いどころがないし、単なる戦闘の間伸びになる。そういった意味では、前作のセミオートのほうがまだ納得のいく仕様だ。
 細かいところだが、戦闘中のカーソル記憶があるともっと良かったかなと思う。魔法をかける際に毎回魔法→魔法種類→カーソル何個も動かして…の繰り返しになるのが結構大変だった。…というか、これって前作ではできていたはずだが?
 難易度は適度に調整され、ザコ・ボスに関わらず後半になるにつれ攻撃力が大幅に上昇。前作では全く必要なかったパラメータアップ系の魔法が有用になっただけでも、少なくともヌルい感じではなくなった。ボスにもう少し歯ごたえが欲しかったところか。攻撃はそこそこ強いが体力が少なく、全員の必殺技を叩き込めば1~2ターンで終わってしまうボスがほとんど。
 パラメータアップ魔法が掛かるとキャラの周りに円系のものが回るエフェクトが入る(上昇パラメータによって色が異なる)が、キャラが重なったりすると誰にかかっているのか分からなくなる上、コマンド選択時はエフェクトがすべてストップするので回っている場所によってキャラに隠れてしまったままになることもあり、とにかく誰にかかっているかの判別がややこしい(ちなみにこれは前作からそうだが、必要な場面が多くなった今作のほうが目立つというだけ)。

 …というところで、ストーリーは前作よりもしっくり来た。雰囲気作りはさすがだなと思う反面、そのほかの部分での粗が目立つ。結局はストーリーにどれだけ評価できるか(まあこのくらいの粗なら…と納得できるか)というところになるだろう。