[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:バンダイ/マイクロビジョン
発売日:2006.01.12
ジャンル:RPG
実勢価格:800~1,000円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2015.12.27

英雄伝説 ガガーブトリロジー 海の檻歌

 太古の昔、海辺に住んでいた「水底の民」は、メロディーを操り力に変える「共鳴魔法」を生み出し、繁栄を築いたと言われているが、900年前に歴史から突然姿を消した。
 音楽家レオーネ・フレデリック・リヒターは、この共鳴魔法の究極の形として伝承に残る「幻のメロディー」の再現に試み、見事にそれに成功、「水底のメロディー」と命名する。しかしその力が悪用されることを恐れたレオーネは、このメロディーを24個のフレーズに分けて石に刻み、これらを「共鳴石」と名付け世界のいたるところに隠した。
 北東の小国レトラッドにある小さな村ラコスパルマに住む演奏家マクベインは、魔獣に襲われるアクシデントをきっかけに共鳴石の場所が示された魔法の地図を発見。水底のメロディーを自分の手で奏でるために、マクベインは世界中に散らばる共鳴石を探す旅に出ることを決意する。マクベインのような演奏家になりたいと願う孫のフォルト・フォルトの幼馴染のウーナ・犬のリックを合わせた「マクベイン一座」の演奏旅行が始まった…

 英雄伝説シリーズ第2期「ガガーブトリロジー」第3作、『英雄伝説V 海の檻歌』のPSP移植。ガガーブトリロジーシリーズの最終作にあたる今作は、前作「朱紅い雫」の7年後となるガガーブ暦943年・大山脈「大蛇の背骨」の南側に位置するヴェルトルーナが舞台となる。
 「白き魔女」と「朱紅い雫」の2作についてはほぼ1話完結で作中でそれほど共通したものはなかった(ミッシェル・トーマスなど一部登場人物くらい)が、今作は前2作との繋がりが非常に多く、今作をプレイしてようやくわかる前2作の事実も多い。複数の作品を繋げた~部作という作品は特に珍しいものでもないが、ここまで見事に絡ませた作品はあまり思い当たらない。改めて白き魔女を再プレイして振り返りたいと思っちゃうものね。まだやってませんけども。

 単体で見るストーリーは、世界を廻ることにそもそもの目的が存在するという白き魔女に似たパターンで、そこから闇の太陽という世界を滅ぼす存在との戦いに進んでいく。今作で登場した人物・異界の存在と異界の月・エンディングまでの様々な要素が白き魔女へ繋がってゆく。単体でも素晴らしい内容だとは思うのだが、これらの伏線回収がなければどうだっただろうというところ。

 基本的なシステム周りは前作とほぼ同様。いいところも悪いところもそのまんまなので詳細は書かないが、構造的に明らかに見にくい建物や街並みは減ったように思われるので、癖のある動きもまあ許容範囲という感じになった。
 街と街の間の道がちょっと長めなこと・ストーリー上で往復する場面がやたらと多いこともあり、正直言ってちょっとかったるい。これには移動速度の問題なども絡んでいるが。

 戦闘についても前作とほぼ同様のターン式戦闘で、変わったのは必殺技の使い方と共鳴石の存在による「魔法の付け替え」。
 まず必殺技については、コマンドで選ぶのではなく、戦闘中にカーソル選択から□ボタンで任意で発動する形に変わった。敵の攻撃開始前に割り込みで発動させることも出来るようになり、割り込むと敵の攻撃がキャンセルされるおまけつき。自分が攻撃終了していてもお構いなしで発動。
  一見万能に進化したように思えるのだが、割り込んだ敵に対して攻撃するという謎の仕組みになってしまい、割り込まないで発動した時にはどの敵に攻撃するかを選択できなくなってしまった。結果ほぼボス戦でのボスターンキャンセル専用になったと言っても過言ではなく、”何となく使いにくい”という存在になってしまったように思える。
 魔法の付け替えについては、装備する共鳴石によって使える魔法が変わるというもので、RPGにはよくある形のもの。フォルト・ウーナ・マクベインの3人に最大4つしかつけられないが共鳴石は計24あるので確実に半分余ることとなり、ストーリー展開上付け替えが若干面倒な箇所があったのが惜しいところ。
 属性魔法2種の掛け合わせ「アンサンブル」は見た目も派手で良かったが、威力が派手さに追いついていないのであまり使える場面がなく、ここも惜しかった。後半はエル・フィルディン魔法や精霊魔法のほうが使い勝手が良い有様。消費MP上げてでももっと強くして良かったのでは?

 ターン制の弊害については前作同様。どうやら元のPC版は白き魔女と同様のリアルタイム進行だったようなので、わざわざターン制に変えなくても良かったのでは?と思わなくもない。前作よりも経験値が全体的にしょぼめで回数をこなす必要がある&道中長くてエンカウントしやすいことも相まって、戦闘テンポの悪さが前作より際立つ結果になっているのは何とかしてほしかった。

 難易度は前作と同じくらいだろうか。敵のクリティカル率が体感高めで、木人兵相手に低体力キャラが一撃死する場面が結構な頻度で発生したが、戦闘不能状態でも経験値はもらえる親切設計なうえ、各種回復アイテムが安価で買える(これはシリーズ揃っての特徴)ので、全滅さえしなければ何とかなる。100%逃走できるのも大きい。

 シリーズ3部作すべてに共通して言えることだが、ストーリーがすごいいいのに進めるのがかったるい。世界観上必要だと思われる道中の長さはまだ許容範囲としても、戦闘部分については何だかなあという。