[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2006.09.28
ジャンル:RPG
実勢価格:200~500円(中古価格)

評価:★★★★★

[Review] 2017.02.24

英雄伝説 空の軌跡FC

●あらすじ(公式HPより)
 遊撃士(ブレイサー)。それは民間人の安全と地域の平和を守ることを第一の目的とし、魔獣退治・犯罪防止に従事する者たちのことである。特定の国家に帰属することなく中立的な立場から活動する遊撃士は、幼い子供たちの憧れの職業でもあった。リベール王国ロレントの街近くに暮らし、遊撃士の父をもつ少女エステルもまた、遊撃士への憧れからその道を志した者の一人だ。
 彼女は兄弟同然に育ってきたヨシュアとともに遊撃士を目指して修行に明け暮れていた。ある日、エステルの父カシウスの元に一通の手紙が届く。手紙を読んだカシウスは急用が出来たと言ってエステルとヨシュアの二人を置いて旅立ってしまう。準遊撃士(見習いのこと)となっていた二人は、カシウスが引き受けるはずだった遊撃士としての仕事を代わりに引き受けることになった。

 この時代。人々の生活は導力器(オーブメント)と呼ばれる技術によって支えられていた。50年前の導力革命によってもたらされた導力器は、飛行船をはじめとするさまざまな技術に応用され、人々の生活を飛躍的に豊かにしていった。その一方で、多くの国々は導力器を用いた兵器の開発にしのぎを削り、覇権を狙う国々の思惑が交錯する中、大陸は混迷の様相を見せていた。
 そんな時代にあって、列強のはざまで誇りある独立を保つ小国リベール。そのリベールを舞台に、主人公エステルと彼女を取り巻くさまざまな人々との人間ドラマが展開し、エステルは遊撃士として、人間として大きく成長していく。

 新たな世界、新たな人々を通して描かれる、拓かれし時代の物語。

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ、英雄伝説第3期”軌跡シリーズ”1作目「英雄伝説VI 空の軌跡(Windows)」のPSP移植タイトル。軌跡シリーズは今作を含めてここまで8作品が発売され現在もシリーズ続行中。移植(マルチプラットフォーム)が毎度多いのが英雄伝説シリーズの特徴だが、今作もWindows版から始まってPSP・PS3・PS Vitaと4機種で発売されている。
 「空の軌跡」の名称では3タイトルが出ており、今作「FC(First Chapter)」が第1作。続編に「SC(Second Chapter)」「the 3rd」がある。

 ファルコムお得意の西洋ファンタジー世界を舞台とするオーソドックスなRPGで、前3部作同様に作り込まれた世界観と魅力的なキャラクターが揃う。メインとなるストーリーのほかに、主人公2名が所属することとなる遊撃士ギルドからの依頼をこなすサブイベントが多数あるのが特徴となっている。
 基本フィールド画面は回転も可能なフルポリゴン+クォータービューだが、キャラクターは2Dで描かれる。キャラクターの動きは非常に細かく、イベント時の動きも多彩で生き生きしたキャラクターを見ることが出来る。

●ストーリー・キャラクター
 前回のガガーブトリロジーシリーズもそうだったが、もともと1作で終わらないことを前提として作られたということもあって、今作の主な舞台となるリベール王国はもちろんのこと、近隣の国々・遊撃士協会との関係性・百日戦役・導力とオーブメント…と、世界観の作り込みは相当のもの。空の軌跡だけで3部作・その後も続行中というのは最初に紹介した通りだが、この第1作の時点でそこまで見越して作っていたのだろうか。

 父を探すことがメインストーリーとして存在し、手掛かりを探す目的も含めて各地域を回って正遊撃士を目指す…という展開自体はガガーブトリロジーシリーズでも見た進め方で、ファルコムお得意なのはわかるが…。同じように、元気娘のエステルと若干押され気味だけど冷静なヨシュアという組み合わせも、白き魔女のジュリオとクリスの関係性に近いのでは…と思ったりしなくもない。
 何にしても、キャラクターにしっかり会話をさせて印象付けて、という部分についてはもはや”こなれている”と言ってもいいほどの出来で、キャラクターの動きの良さ・セリフの多さは特筆すべき部分。エステル・ヨシュア以外のパーティキャラは都度離脱と再加入を繰り返すが、ここも適度な再登場具合。いろいろとうまい。

 メインストーリーの間に任意で進めることが出来るサブイベントも種類が多くいろいろと歩き回ることになるので、時間はかかるが世界観を彩る要素としては成功している。ギルドが基本何でも屋に近いポジションなので、魔獣を倒すだけにこだわらない様々なミッションがあるというのもまた良い。

 キャラの性能というところで見ると、HPのあまりに低いティータだけが残念なところで、後述のクオーツによる強化でもさすがにカバーしきれず。自分の進め方にも問題があったのか近距離メインのキャラが最終盤に使いにくい状況になったため、結果オリビエやクローゼ・シェラザードあたりを重用する結果になったが、これが概ね正しかったのかどうかは不明。あと、クローゼはケンプファーが強い。

●カスタマイズ要素/オーブメントとクオーツ
 各キャラクターが持つ「戦術オーブメント」に「クオーツ」と呼ばれる回路をセットすると、「オーバルアーツ」と呼ばれるこの世界での魔法に当たる能力付与やパラメータアップ・そのほか特殊効果などが得られる。
 クオーツに属性があり、同じ属性のクオーツを配置することで強力なオーバルアーツとなる仕組みのため、適当に配置していると後半苦労することとなるが、使っていくうちに何となく理解できるようなレベルだ。
 細かいところだが、オーブメントのクオーツ配置リストと使えるオーバルアーツが同じ縦並びかつクオーツリストの下に位置しているため、移動中に回復系オーバルアーツを使いたいときにカーソル移動が若干煩わしかったので、ここは改善希望というところ。

●戦闘
 敵(魔獣)がフィールド画面上をうろついていて接触すると戦闘に突入する、いわゆる「シンボルエンカウント」を採用している。魔獣の後ろから接触すると先制攻撃・逆に自キャラの後ろから接触されると先手を取られる。
 戦闘画面はクォータービュー視点(視点の回転が可能)でマス目と移動の概念がある、ちょっとしたシミュレーションマップ風味。画面左側には敵味方すべての行動順が示されており、ある程度先を予測しながらの戦略立てが可能。この行動順に関しては、一部の特技などで遅らせたりキャンセルをかけたりといったことも可能だ。
先に紹介した「オーバルアーツ」のほかに、攻撃を当てたり受けたりすると溜まるCP(クラフトポイント)で発動する戦技「クラフト」と、CP100以上で発動出来る強力な戦技「Sクラフト」がある。Sクラフトに関しては任意のタイミングで割込み発動も可能(Sブレイク)で、各キャラのSクラフトを連続で発動させるなどの使い方もできるようになっている。これは前作「海の檻歌」でも似たようなことが出来ていたので、継承といった形になるだろう。
前作同様、移動にターン消費するだけというケースが出てくるが、アーツの距離制限がなくなるなど攻撃範囲は全体的にかなり調整されたようで、違和感は少ない。

 HPが0になった時点で自爆し近くのキャラにダメージを与える敵やアーツで属性攻撃をしないと苦労する敵が多く、結果オーバルアーツを無碍にできない作りにしているのはなかなか面白い。とは言え、これは自分の育て方の問題だったのかもしれないが、終盤になるにつれてオーバルアーツ頼みになってしまったのはちょっと引っかかる部分。通常攻撃の当たるダメージがあまりに少なく、ザコ敵相手でもアーツとSクラフト頼みという状況になってしまった。
 あとは、1回だけ全攻撃無効という効果を持つアーツ「アースウォール」が強すぎた感も。これはある意味救済要素なのかしれないが。

●音楽
 プレイ前から「みんなで決めるゲーム音楽TOP100」を見ていたので、戦闘音楽「Sophisticated Fight」のオシャレな感じは知ったうえでプレイしていたのだが、それ以外もFalcom Sound Team jdkの凄さをただただ実感する曲の数々だった。
 フィールド曲「リベールの歩き方」・各町の音楽・ダンジョンや森に至るまで、印象に残る曲が本当に多い。ここまでの高品質を揃えて来られる作品はそう多くないだろう。ちなみに、PSPガガーブシリーズも曲自体は良かったと思うんだが、音源がしょぼい感が出ていたんで…

●親切な手帳システム
 準遊撃士になった段階でもらえる「ブレイサー手帳」は、オーブメント・クオーツの細かい説明やオーバルアーツ一覧・ストーリー進行のメモなど、説明書も兼ねた優れもの。同じく、食べた料理を記録して材料から作れるようにする「レシピ手帳」・出会った魔獣を記録する「魔獣手帳」はコンプリート要素も。△+方向キーというボタンの使い方も良く、PSPのボタンをうまく生かしているなあと感心した。

●総評
 魅力的なキャラクターにストーリー・バランスの取れた戦闘・素晴らしい音楽・インターフェースも一通りよく考えられている。名作と言って差し支えない高いクオリティ。今作だけでクリアまで30時間以上を要するのだが、これでまだ1作目というボリューム感が強いて言えば難点か、くらい。