[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2006.09.28
ジャンル:RPG
実勢価格:300~500円(中古価格)

評価:★★★★☆

[Review] 2017.03.16

英雄伝説 空の軌跡SC

●あらすじ(公式HPより)
 遊撃士に憧れる少女エステルは、兄弟同然に育ったヨシュアとともに正遊撃士となるため、生まれ育った故郷の街ロレントを旅立った。リベール各地を訪れるエステルたちを待ち受けていたのは、様々な人々との出会い、そして行く先々で起こる不可解な事件。数々の出来事が一本の糸で結ばれた時、リベール王国をめぐる巨大な陰謀が明らかとなる。
 様々な困難が立ちはだかるも、多くの人に助けられながらエステルたちは、リベールを揺るがす陰謀 ──クーデターを阻止するのだった。

 晴れて正遊撃士となったエステルとヨシュア。女王生誕祭の活気に沸く王都グランセルを歩きながらエステルは自分の中にあるヨシュアへの想いをかみしめていた。旅の途中、自分を支え続けてくれたヨシュアは、エステルにとって、これまで以上にかけがえのない存在となっていた。だがその夜、ヨシュアはエステルに自分の正体と過去を打ち明ける。そこで語られる驚愕の事実──。

「出会った時から……君のことが大好きだったよ。」
「──さよなら、エステル。」

そういって、少年は少女の前から姿を消した。少女の手元には少年のハーモニカだけが残されていた。
姿を消した少年を探すため、少女は旅立ちを決意する。

《身喰らう蛇》
 クーデターの背後で暗躍していた謎の結社は、ついにその正体を現してリベール全土に混乱を引き起こす。炎上する王都グランセル。迫り来る巨大戦艦。《輝く環》はその楔から解き放たれ、リベール王国は最大の危機を迎える。
 《結社》の陰謀を阻止するため、そして姿を消したヨシュアを探すため、正遊撃士となったエステルの新たなる旅が、今始まる──!

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ、英雄伝説第3期”軌跡シリーズ”1作目「英雄伝説VI 空の軌跡(Windows)」の”後編”。PSPでは初のUMD2枚組で発売された。前作空の軌跡FCエンディングからスタートし、姿を消したヨシュアを探す旅・そして姿を見せ始めた結社「身喰らう蛇(ウロボロス)」との戦いが繰り広げられる。
 前作のクリアデータを読み込んでスタートすると、前作のクリア内容(サブイベントクリア状況・レベル・装備品など)を一部引き継いでプレイを開始することが出来る。読みこまなかった場合でも、前作終了時の推奨レベルからスタートする。

●ストーリー
 今作の本筋はあらすじにもある通り「ヨシュアを探す」「結社の動向を探り、陰謀を阻止する」の2つ。前半は結社の全容がわからない状況で各地を巡って情報集めという内容なので、正直言って作り方を間違えるとダレてしまいそうなテーマだと思うが、ここをもう一つのテーマ「ヨシュアを探す」がうまいことカバー。ヨシュアにまた会えることを強く願い続けるエステルの心情をうまく捉えた会話・イベントでしっかり序盤~中盤を引き付けてくれる。
 エステルがヨシュアにようやく会えた時のイベントはセリフ・演出ともに屈指。これもFCのそれまでとエンディングを見ているからというところもあるんだけども…。こう見ていくと、FCとSCの切り方も見事だったなあと。

 後半は、今まで小出しになっていた結社の目的がはっきりと明らかになり、一気に物語が動き出すことに。それぞれ個人的な事情込みで動いていたというのもわかるが、さすがに小出しすぎるのでは…?という流れの良すぎ感は気になるところだが、様々な因縁は一通り収束。明らかに続編ありきな謎の残し方もまあ気になるといえば気になる。
 遊撃士と結社の実行役”執行者”で繰り広げられる因縁については、パーティに該当者を入れていなくても決着をつけてしまうので一部イベントが見られない可能性がある、という点がどうにも。無理やりにでもうまく絡ませていたこのシリーズにしては珍しいポカかも。

 終盤には、結社の陰謀によって一時オーブメントが使用不可になるという状況になり、リベール全土の移動が徒歩のみになったり、アーツが一時使えない状態になったりする。通信機を使えるようにするため各地のギルド支部を回るという明らかなお使い要素で歩き回るだけで相当な時間を使うほか、今作がマップでDisc1・2を分けている関係で、移動の仕方によっては何度もディスクを入れ替える羽目になる。容量等々仕方なかったのかもしれないが、残念と言えば残念。

 ちょっと話が外れるが、後半の浮遊都市「リベルアーク」に行きつくまでの流れやムービーなどなど、竜の巣を潜り抜けてたどり着いたラピュタっぽいなー…とずっと思いながら見ていた。軽々しく参考にしたのでは?とか言うつもりはないのだが、空中都市というのはロマンがあるなあと。

●音楽
 各街のBGMは前作と同じだが、フィールド音楽は新しくなった(空を見上げて)。前作よりも落ち着いた曲調になったが、長く聞いていられるフィールド音楽らしい名曲だ。通常戦闘音楽は前作のインパクトがさすがに強すぎたか少し印象が薄くなった感があるが…。戦闘だと、イベント戦闘音楽「Obstructive Existence」・後半の通常戦闘曲で空の軌跡のアレンジも入る「The Fate of The Failies」が印象深い。最終盤の近未来感漂う音楽の数々も必聴。

●オーブメントとクオーツ・戦闘
 それぞれキャラクターが身に着ける戦術オーブメントとそこに入れ込むクォーツはそれぞれバージョンアップし、それに伴いアーツも前作以上の上位アーツが登場した。クォーツによる能力増減も大きくなったので、前作よりは攻撃特化・アーツ特化を作りやすくなったような印象がある。とは言え、ATS(魔法攻撃力)を大幅に上げたアーツの強さは物理攻撃を上回るのだが。クローゼ・オリビエあたりはATSが大幅に上げられるので、下位アーツですら3,000近いダメージを叩き出せるようになる。

 戦闘については、前作で最終盤以外ほぼ固定されていたパーティキャラクターがある程度自由化され、固定キャラを除いては自由に入れ替えができるように変わった。ただ、前述した結社との因縁が絡んだ結果「固定されていないけど実質入れておかなきゃならない」ケースは多く、ストーリーの内容とパーティ自由化があまりうまく絡んでないように思える。
 その他、各キャラクターの技「クラフト」に2人以上のキャラで連携攻撃をかける「チェインクラフト」が実装された。攻撃範囲や威力があまり伴わなかったこともあってほとんど利用しなかったが、どうやら使い方によっては相当強いものであるらしい。

●そのほか追加要素
 前作ではイベントのみだった釣りが今作では本格的にミニゲームとして採用された。各地にある釣りポイントで魚を釣り、その魚を料理に使ったり釣り餌にしたりできるように。釣った魚を記録するコンプリート要素「釣り手帳」も登場。他には、FCでは改装中だったルーアンのカジノがオープンしており、メダルを買って楽しむことが出来る。

●総評
 後半のダルさ&ディスクの入れ替えがもったいない。FC・SCともに全く同じ内容でHD化+ディスク1枚となったバージョンがPS3で出ているので、未プレイの方が今プレイするならPS3版一択。
 ストーリーの素晴らしさはもちろんだが、基本となるシステム周りやテンポの良さ・音楽と大きな穴がないというのが大きい。RPG好き・特に一昔前のオーソドックスタイプがお好みの方にはプレイ推奨。