[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2006.09.28
ジャンル:RPG
実勢価格:300~500円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2017.04.24

英雄伝説 空の軌跡 the 3rd

●あらすじ(公式HPより)
浮遊都市《リベル=アーク》崩壊より半年後── 
エレボニア帝国東部、クロイツェン州の中心都市バリアハート。その郊外にある飛行船発着場に、風変わりな一人の青年の姿があった。

彼の名は、ケビン・グラハム。
七耀教会の神父であると同時に、古代文明の遺産《アーティファクト》の調査・回収・関連事件の処理を行う《星杯騎士団》に所属する騎士である。
「《ルシタニア号》……ラインフォルト社が満を持して世に送り出した豪華飛行客船か。」
「は~、これで任務やなかったら思う存分、大空のバカンスと洒落込むところなんやけど。」

各地の貴族や成り上がりの大金持ち。大枚をはたいて二等客室のチケットを買い求めた市民たち。
──浮き立ちざわめく乗船客に混じって、長いタラップを渡るケビン。
ラインフォルト社製の大型エンジンが重低音を響かせ、全長120アージュの巨船が、ゆっくりと大空に浮かび上がる。

それが──新たなる冒険の始まりだった。

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ、英雄伝説第3期”軌跡シリーズ”1作目「英雄伝説VI 空の軌跡(Windows)」の”後日談”。前作SCで初登場した七耀教会神父のケビンを主人公に、突然取り込まれた謎の場所”影の国”での戦いを描いている。SCのクリアデータを読み込むことでアイテムが入手できるなどの特典がある。
 ほかにも、FC・SCで登場したキャラクターの外伝エピソードが多数収録され、SC終了後のエピソードやFCのもっと前のエピソードなどを見ることができるようになっている。

●ストーリー
 話のメインになるのは、「なぜ影の国というよくわからない場所に前作のパーティキャラなども飛ばされてきたのか?」「影の王とは何者なのか?」というところ。
 それを解き明かすのがケビンの過去にまつわる今回の本筋ストーリーになるわけだが、このストーリー自体はとても良いものだったと思う。SCから登場したケビンの謎めいた部分や心を開かない理由・生い立ちからリースやルフィナとの関わりなどが章頭を中心に細かく示される。まあ、結果いろんな意味でケビンの独り舞台だったというところをどう見るか…

 舞台は完全に影の国だけ、影の国の中に「再現されたリベール各地」が登場するものの、結局現実世界は一切登場しないという展開はさすがにちょっと驚いた。前段の「影の国って何?」という疑問が後半まで解決しないので、前半はよくわかんないけどとりあえず潜ってけばいいか…石碑(セーブポイント+回復+お店を兼ねる)もいろんなところにあってえらい親切だなあ…という淡々と進む感が大きく、後半いろいろわかって来てからの盛り上がりに至るまでがちょっときつい。

 サブストーリーに関しては、各地に点在する「扉」を開くことで見ることが出来る。年代の違うエピソードをどうやってメインストーリーに絡ませるのか?というのはスタート前から疑問だったが、扉を開くだけで見れてしまうのでメインストーリーへの絡みもへったくれもなく、扉の存在意義自体いまいちわからないまま終わった感も。
 一部イベントでは次回作以降にも繋がると思われる登場人物やエピソードもあり、内容自体はどれも良かったが、レンのイベントだけはどうかねえ…。もともとPC版での内容が内容だけにコンシューマで全再現できなかったのは理解できるんだけども(内容はニコ動などで見ることができます)、さすがに削りすぎて何が言いたいのかさっぱりわからない内容になってしまった。

●音楽
 前作までとの共通音楽もあるが、相変わらず高品質。戦闘曲ではフィリップ戦・リースで圧倒的存在感を発揮した「Overdosing Heavenly Bliss」がもちろん素晴らしいが、おそらくシリーズ中最も美しい通常戦闘曲「Determination of Fight」も、拠点「隠者の庭園」も、各層の音楽も、音楽単品で評価するならシリーズ3作中トップと言ってもいい。
 最近気づいたのだが、軌跡シリーズサントラはAmazonプライムミュージックに入っていたので、プライム会員の自分は聞き放題!今まで曲選が全く合わずにまるで使ってなかったが、今後使う機会が増えるかも。つーかファルコム音楽大量に入ってるんですね、これも先ほど気づきました…

●戦闘関連・サポートアビリティ
 今回はパーティキャラクターが最大16名になり、うち4名を連れていくことになるのだが、残ったメンバーの中から1名を「サポート」として設定することができるようになった。キャラによってパラメータアップや取得セピスアップ・アイテム取得率アップなどに分かれており、何だかんだ役に立つ。

 オーブメント・クオーツには大きな変更点はないが、敵から貰える1戦闘当たりのセピス量が最大300に増えたので集めやすくなり、上位のクォーツを作りやすくなった。1ラインでの配置が可能なクローゼ・レン・オリビエは相当楽しい組み合わせにできる。

 前作以上に速い敵が多く、SPDパラメータをおざなりにしたまま進むと中盤以降どんどんサイクル遅れで難度が高騰。前作までほとんど使った記憶のないクロックアップ(SPDアップ)が大活躍。駆動2以上のクオーツも必ず実装したいところだが、属性値が低くて…。能力アップ系もここまで多用したのは記憶にないが、あるとないとでは難易度がガラッと変わることだろう。
 上記の傾向さえ理解して対策していればそれほど難しい敵はいないが、カシウス・ブライト戦だけは大苦戦。さすがの強さというべきか…

 前作までほどはっきりとした弱キャラはいないように思うが、クラフト後の再行動がとてつもなく速いリシャールがおそらく一番使いやすいと思われ、逆に今まで強キャラ筆頭だったエステル・ヨシュアが埋もれた感。クラフトの使い道というところで見ると、アネラス・ジョゼットあたりが少しかわいそうな感じかなあ。

●そのほか追加要素
 前作のミニゲームだった釣りとカジノがそのまま継続採用されたほか、クイズ・闘技場・3Dシューティングが新たなミニゲームとして追加されている。クイズは問題数が少ないので何回かのトライで問題自体を覚えてしまえるレベルだが、内容は相当難しい。

●総評
 メインストーリーの狭さ・サブイベントのコンタクトの雑さが前半は特に大きく出てしまった結果、「これって3作目なの?外伝作なの?」という疑問が噴出することに。最初から外伝・ファンディスクとしてアピールしていれば序盤のもやもや感は減ったかもなあと思うので、ちょっと3作目だの英雄伝説VIIにつながる作品だのというメイン部分を推しすぎたのではないかと。

 基本システムは十分完成されており、面白い作品であることは間違いない。