[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2011.9.29
ジャンル:RPG
実勢価格:400~800円(中古価格)

評価:★★★★☆

英雄伝説 碧の軌跡

●プロローグ
 クロスベル自治州──
 エレボニア帝国とカルバード共和国に挟まれ、大陸有数の貿易・金融都市として発展してきたこの自治州は、とある狂信的な宗教団体が引き起こした事件によって危機を迎えた。
 マフィアの抗争すら巻き込んだその事件は、謎の薬物「グノーシス」で警備隊が操られたことにより絶望的な状況に陥ったが、警察に設立された「特務支援課」などの活躍によって無事解決され、平和は取り戻された。
 教団やマフィアと関係していた帝国派・共和国派議員たちも一掃され、新たな市長を迎えたクロスベルの未来は明るいかと思われたが、激動の時代を迎えたゼムリア大陸において、それは一時の安息に過ぎなかった。

 高まりつつある帝国・共和国からの干渉と圧力。大陸全土を巻き込みかねないような”動乱”の兆し。最強の猟兵団《赤い星座》と、東方系シンジケート《黒月(ヘイユエ)》、-そして謎の結社《身喰らう蛇(ウロボロス)》。 全ての導火線がクロスベルに集まる中、太古の時代へと遡る真実と、解き明かされなかった数々の謎の真相が、今、ここに明かされる-

 これは-”壁”を乗り越えようとする全ての人々に贈る、「同じ時代を生きていく」ための物語である。

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ、英雄伝説第3期”軌跡シリーズ”の1作で、英雄伝説VIIの後編にあたる。「零の軌跡」からちょうど1年後に発売された零の軌跡のエンディング後を描いた作品であり、前作のあらすじを作中いつでも「PRESTORY」で参照できる。
 碧の軌跡のところでも書いたが、今作からWindows版での発売がなくなった。PSPでの正規「軌跡シリーズ」は今回が最後の作品で、次回作「閃の軌跡」はPS3とPSVitaでの発売となる。

●前作を超えて重厚なストーリー
 今作では、新市長となったIBC総裁ディーター・クロイスが提唱した「西ゼムリア通商会議」を軸にシナリオが進行する。零の軌跡で浮き彫りになっていたクロスベル自治州の危うさが、この碧の軌跡のストーリー上で多くの緊迫した場面を生むこととなるのだが、この怒涛のストーリー展開は見もの。
 序盤は特務支援課新メンバー加入から支援課専用導力車の導入…と比較的おとなしく進行するのだが、赤い星座登場から通商会議、その後のディーター提案と、2章あたりからはインターミッションを除いて怒涛の展開が待っている。

 軌跡シリーズは空の軌跡FCから順番にこなしてこれが5作品目になるが、ストーリー展開はこの作品が一番好き。もともとテンポが良くて進めやすい作品ではあるのだが、ここまで先を見たい見たいと進めた作品は久しぶりだ。最終的にはかなり予想しない方向に話が吹っ飛んでいく感はあるが、まあこんなところかと。ネタバレになるから詳しいことは避けるけど、今回の展開でハガレンを思い出したのは自分だけではあるまい。
 インターミッションではプレイヤーキャラ全員+サブキャラの水着姿が見られるという、前作のドレス姿を超えるサービス要素が用意されている。全員そろって美人でいいですね。エリィは王道で好きだけど、ノエルかなー(どうでもいい)。

 前作で残った謎は一通り解決を迎えるものの、またも次回作を匂わせるような終わり方をしているあたりは何とも…実際に閃の軌跡が出たわけだが。空の軌跡もそうだったが、1作1作が作りこまれている反面とにかく長いので、違う側面や続編を見たい!という気持ちと、この長さがあと何作続くんだ…という気持ちと。

●フィールドアクション
 フィールドアクションについては、フィールド上に木箱などの壊せるオブジェクトが新しく導入され、壊すと一定確率でアイテムが手に入るようになった。普通に進めているとなかなか手に入りにくい魔獣の~系や各種料理の材料なども手に入るため、ちりも積もれば…的な要素ではあるのだが、そこら辺の道中に普通に木箱やツボが置いてあるという違和感というか無理やり感がどうしても残る。
 せっかくだから、ダンジョンの中のギミックアクションとして使えたりとかすると面白かったかも。ワイルドアームズみたいな。

●音楽
 相変わらず良い、としか言いようがないのが困ったところだが、レベルは引き続き非常に高い。前作から使われている曲もあるが、クロスベル市内を中心に多数差し替えになっている。今作だとクロスベル市内の通常曲「新たなる日常」なんかは特にそうだと思うが、「プレイを邪魔されずいつまでも聞いていられる」タイプの曲を繰り出すのはつくづくうまいなあと感心させられる。

●戦闘・クオーツ・クラフト等
 ここに来て、クオーツには大きな変更点が加わった。それがオーブメントの中央に1つ付けられるようになった「マスタークオーツ」で、装着するだけで基本ステータスにプラス補正がかかるほか、マスタークオーツ自体に「アビリティ」も追加され、「戦闘開始から数ターン能力アップ」や「回復アイテム・魔法の効果アップ」などの効果が得られる。
 そのほか、経験値によるマスタークオーツ自体のレベルアップ要素も追加され、レベルを最大の5まで引き上がると「マスターアーツ」と呼ばれる戦闘全域効果のある特殊なアーツも使えるようになった。

 そろそろマンネリ化の来ていたクオーツ関連にアクセントを加える大変良いシステムだとは思うんだが、マスタークオーツのレベルアップに必要なクオーツ経験値取得が「キャラの取得経験値の1/10」という少なさなのが気になる。普通に進めると終章ギリギリくらいまで最大レベルのマスタークオーツがほとんど出てこない状態で、属性値以外の有用性をいまいち認識しにくい。その代わり、マスターアーツはどれをとってもチート級の能力ではあるのだが…

 戦闘については、アーツやクラフト・全体攻撃などのエフェクトをSTARTボタンで省略できるようになり、テンポが大幅に向上。今回採用の最上位攻撃アーツなどがとにかく長いので、非常に良い変更点だ。
 そのほかクオーツについては、「美臭」「鷹目」などのクオーツ効果が装備しているキャラのみ→パーティ全体へと拡大していたり、「鷹目」では敵の向いている方向が分かるようになったりと、地味ながら良い変更点が多い。

●やりこみ・実績など
 これは前作とほぼ同様で、支援要請をクリアすることによってもらえる「DP」での捜査官ランク(今作では”上級”捜査官ランクに変わっているが)や、レシピ・本・クオーツ集めなど、数々の収集要素および実績開放要素がある。相変わらず本集めが難解で、半分近くがタイミングを逃すと取り直し不可。
 新しいものとしては、今回から支援課に配備された導力車のカラーリング変更がある。各地の家などに平然と置いてある本から入手するのだが、これも本と同様取り直し不可のものも。

●総評
 緊迫の展開・安定したシステム回り。零の軌跡と同様、軌跡シリーズプレイヤーであればプレイしない理由がないというレベルでまとまっている。グラフィックは今見ると若干厳しい点がないわけではないが、こちらも現在かなり値段が抑えられているのでオススメ。