[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:D3パブリッシャー/インテンス
発売日:2010.02.04
ジャンル:トラップアドベンチャー
実勢価格:1,000~1,500円(中古価格)

評価:★★★

密室のサクリファイス

●あらすじ
 地底奥深くに建造された巨大な生活施設『ファウンデーション』。

 いつ、何の目的で作られたのか。誰が、そこへ人々を導いたのか…。真実は長い年月の間に風化し、その歴史ははるか昔に消え去ってしまった。ここには、もう地上の世界を知る者はいない。今や、地中に存在するこのファウンデーションだけが人々にとっての『世界』となっていた。
 そこを突然襲った『異変』が5人の少女たちの運命を変えた。無人となった『世界』。時折襲い来る大振動。崩落する壁や天井。費えてゆく水や食料…。取り残された5人の少女たちはその過酷な状況の中で生き残らねばならなかった。
 今、ファウンデーションは崩壊の危機に立たされている。そして、少女たちにも最後の長い試練の時が、今、訪れる…

●概要
 地下施設「ファウンデーション」に残された5人の少女を主人公とし、ファウンデーションからの脱出を目指すトラップアドベンチャーゲーム。会話イベントの間に脱出ゲームが挟まるのが大きな特徴で、場面場面で様々な場所を選択し、アイテムや暗号の解読を駆使して切り抜けていく。
 発売はSimpleシリーズでおなじみのD3パブリッシャー、開発はPS3・DS・3DSを中心にSimpleシリーズの脱出アドベンチャーゲームを数々手掛けるインテンス。この後、スピンオフという形でダウンロード専売タイトルが2作出ている。

 ストーリー進行は5人それぞれをメインパートとする「ステージ」で分かれており、序盤は順不同で進めていくことになる。後半は選ぶ順番によって5人の生死が変わり、それによって選択できるステージやステージ内の会話内容などが変化、同様にエンディングについても各キャラクターの固有エンディングなど複数に分岐する。
 一度エンディングまでたどり着くと、それまでにクリアしたステージまで戻ってやり直しが出来るようになり、任意のステージから違うルートを辿れるようになる。併せて、一度クリアしたステージで会話内容が変化していない場合は文章・会話のスキップが利くようになる。

 各ステージ内ではアドベンチャーシーン(会話イベント)の後、1つ~複数の脱出ゲームが挟まる。内容はフリーのFlashゲームでよくあるタイプのものとほぼ同様で、画面内を選択してアイテムを手に入れたり、アイテム同士を合成したり、暗号が書いてあるものを見つけて暗号を解き、所定の場所に数字やアルファベットなどを入力して解除するなどして進めていく。

●ストーリー展開
 5人の少女以外のほぼすべてが突然消え去ってしまったという地下世界の中で、それぞれの過去と絡めた先の見えない焦燥感もうまく表現され、どんどん先を読みたくなる。繰り返しルートを辿っていくことで見えてくる新しい展開の流れも良く、エンディングまで含めて納得のいくものがほとんどだった。全体的によく考えられたストーリーだと思う。
 脱出ゲームパートにかかる時間によっては中だるみではないが間の空く時間が長くなるので、ストーリーをテンポ良く楽しめるという状況にはどうしてもならない場面が出てくるというのが残念なところではあるのだが。

●音楽・グラフィック
 種類が少なくて同じものを何度も聞くことになるので飽きは来やすいかと思うが、謎解きに合った主張しすぎないBGMの数々はとても良い。謎解きによっては相当な時間同じ音楽を聴く羽目になるだろうが…

 ギャルゲーチックな見た目ではあるが展開でそれっぽい部分はほとんどなく、シャワーシーンが1回あるくらい。ほとんどが1枚絵での構成なので凄いキレイとかいうわけではないのだが、まあ十分な水準だろうという感じか。グラフィックによってすごくかわいい感じとそうじゃない崩れた感じがはっきりしているように見えるがどうだろう。
 演出は正直言うともう少し頑張ってという感じで、特に頻繁に起こる地震の演出がほぼ文章のみ、たまに揺れているような1枚絵が出るだけという寂しいもの。せめて音声入れるとか画面の揺れを入れるとかして欲しかったなと。

●脱出ゲーム
 本作のメインとなる脱出ゲーム。PCで何かしらの作品をプレイしたことのある方なら何となくわかって頂けると思うが、よく考えられてるなあというトラップも多い半面、かなり理不尽なものや何でこんなところに暗号が?という謎のトラップなども多い。今作の脱出パートも既出の脱出ゲームと同じような作りとなっていて、良くも悪くもフリーゲームの延長線という印象は拭えない。
 ただし、1ステージにつき必ず1種類以上・全部で50以上もの謎解きが登場するためバリエーションは相当考えられていて、スライドパズルから暗号文を読み取っての謎解き・数独やマインスイーパ・ヒット&ブローまで登場する豊富さは一見の価値あり。

 ただ、ヒントという概念がないので詰まったときの対処が非常に厳しく、後半になるにつれてノーヒントクリアがかなり難関となってくる。暗号の難しさもそうだが、アイテムも米粒より小さいくらいの見た目で判別困難なものもチラホラあり、見つけるだけで一苦労。このあたりも、先に書いた通りの”良くも悪くもフリーの脱出ゲーム”であり、人によっては相当イラつくのでは。

 「手術」ステージのバルブ設定とか、「永遠」ステージの本暗号解読とか、「羽」のかけら作成とか…個人的に相当苦労した結果攻略Wikiをチラ見する羽目になったステージはこんな感じだが、最後までヒントなしで完了したプレイヤーはどのくらいいるんだろう?

●基本システム
 先に書いた通りの既読スキップありだが、文字送りの速さをデフォルトから変えられないのがちょっと引っかかった部分。微妙な遅さで、連打したくなる程度の速さと言えばいいか…。
 既読スキップに関しても、遡れる範囲が少ない・カーソル選択時のメッセージまで既読範囲に入るので、同じメッセージを繰り返し表示させやすい脱出ゲームパート時はほとんど使い物にならないなど、あと一歩感がどうしても残る。
 あと、既読の文章はスキップできるが脱出ゲームのスキップが出来ないため、分岐をやり直しする度同じ脱出ゲームを何度もプレイさせられるのには閉口。5章・6章あたりのステージだと平気で4~5回同じ謎解きを繰り返すことになる。全スキップだとさすがに面白みがないと考えたのかもしれないけど、せめて再プレイするかを選択できるようにするとか…
 ステージによってフラグを立てなくても解答さえわかっていればいい場合とそうじゃない場合とが分かれているので、どこでもショートカットが出来るわけじゃないというのも引っかかるところで、プレイ時間の間延びにつながっている感が。

●総評
 脱出ゲームにストーリーをつけて…というのはありそうでなかったものなので、ここは新しいアプローチだったと言えると思うのだが、後半はさすがに難しすぎて1ステージにかかるクリア時間がかなりのものになってしまい、ストーリーを純粋に追うという頭にどうしてもなっていかなくなってしまった。
 そういった意味でも、これだけしっかりしたストーリーを入れ込んだのならヒント機能はあっても良かったのでは…と思ってしまう。これが脱出ゲーム特化ならノーヒントで解け!とぶん投げてもいいのかなと思うんだけども。

 ボリュームもまずまずあり、脱出ゲームパートにめげなければなかなか楽しい作品ではあるので、ギャルゲー?というところで敬遠していた方+脱出ゲームの自信のある方はぜひ。