[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:イースマイル
発売日:2012.04.24
ジャンル:RPG(シミュレーション)
実勢価格:1,000円(ダウンロード専売)

評価:★★☆

[Review]2018.11.28

俺に働けって言われても

●ストーリー
 海と大陸が広がる世界エトワール。そこでは、魔法塔と呼ばれる世界中に溢れるマナを使った通信技術が発達し、人と人とが離れていても連絡を取り合うことが出来た。
 そんな世界の大陸の一角にある村アルデバラン。そこの借家に住む成年は、働くことをせず、親に養ってもらい自堕落な生活をしていた。しかし、突然の親の死によって一人で生きることになった成年。家賃を払う資金もない成年は、大家の提案のもと、ある仕事をすることを決意する。

●概要
 親の死によって、自分で稼がなくては借家を追い出されてしまう主人公。しかし家からは出たくない。そこで大家の提案で始めることになった仕事は「冒険者派遣業」…
 冒険者を雇いパーティを組み、ダンジョンを探索させてアイテムを獲得、そのアイテムを売ることで収入を得て家賃や冒険者の給料を支払う、冒険者派遣シミュレーションゲーム。公式表記上はRPGだが、直接冒険者を操ることはなくただ見守るだけなので、舞台以外のRPG要素は非常に少ないと言える。メインキャラクターデザインはなぐも。氏。

 制作したイースマイルはゲームクリエイターの派遣を行っている人材派遣会社で、自社の宣伝も兼ねての制作だったとのこと。

●できること
 出来ることは主に「冒険者を雇用すること」「村の設備を建設・増設すること」「冒険者のパーティ編成と派遣先の設定」の3つ。(それ以外にも細々としたものはあるけど)

 まず雇用については、当然雇うこともそうだし解雇するのも含まれる。ゲームスタート時は6名までの冒険者を雇うことが出来、後述の施設の1つ「宿屋」を増設することによって人数を増やすことが出来る。
 2つめ、村の設備についてだが、スタート時は武器屋・防具屋などの施設もない状態なので、まずはそういったお店を作っていき、冒険者たちの装備を整える作業が必要となる。さらには「魔法塔」の強化により派遣できるダンジョンの数を増やしてゆく。ダンジョンによって目安となる冒険者の強さ(レベル)が変わるので、冒険者を育てて強くしていきながら、アイテムを売って設備を整え、行き先を増やして高価なアイテムを入手…というのが基本的な流れになって行く。
 入手したアイテムはそれぞれの店に売ることで材料としてストックされ、新たな武器防具・アイテムの開発が可能になる。メインのアイテムは敵を倒すと手に入る「マナ」で、敵それぞれ固有のものが入手でき、様々な武器防具の素材になる。
 モンスターにも「3すくみ」「レア」「ボス」と要素が分かれ、3すくみは倒した数によって分布が変化しそれによってマナの売却額が変わっていったり、レアは1日スタート時にランダムに発生。ボスは各ダンジョンに必ず1匹おり、1回倒すと3日は復活しない…など、単に倒せばいいだけではないという作りになっていて面白い。

 最後、パーティ編成について。パーティは最大5名で5つまで作ることが出来る。ただ、最初の段階では最大6名までしか冒険者を雇うことが出来ないので、組めるのはせいぜい2~3パーティというところ。パーティを多くして派遣先を増やせば入手アイテムを増やせる、でも全滅してしまうリスクも増えるので、このあたりはプレイヤー次第。ちなみに全滅した場合、1日終了後のリザルト画面で「回収費」としてお金を取られる。

 主人公であるプレイヤーは毎日上記の行動を行って冒険者たちを管理する。1日1ターンで1ヶ月30日あり、30日が経過して月頭になると家賃・給料の支払いが行われ、この時点で所持金がマイナスになるとゲームオーバー。最初の4ヶ月間はマイナスの状態でも続行できる「猶予期間」があるので、実際にゲームオーバーになるのは5月1日の決算時から。

●軌道に乗るまでの楽しさと乗ってからの退屈感
 軌道に乗るまでの試行錯誤は非常に楽しい。特に今作では「家賃を払えなくなった段階でゲームオーバー」でありそこまでに黒字にもっていく必要があるため、パーティをいくつ組んで、どこのダンジョンの敵を倒してマナを手に入れて売って…と考えながら進めていく必要があり、ノンストップで進められるテンポの良さも合わせてなかなかの没入感がある。
 ダンジョンもミニマップのような簡易マップをじっと眺めるのみだが、少しづつ探索によって埋まっていくのを見るのはなかなかに楽しく、自分でマッピングを埋めていくのと似た楽しさを味わえるというのは面白かった。

 しかし、そこから一定期間を過ぎて「家賃を払えない状況にならない」、つまり軌道に乗った状態になってくると、延々とパーティをいろんな場所にちりばめて素材を稼ぎ武器防具を作って増設して・・・しかやることがないため、言い方は悪いが飽きてくる。

 経営や街づくり系のシミュレーションでも、後半になってくるとやることがなくなってただただ発展していくのを見守るだけに…なんてことがよく起こるもの。ただし、これらは発展していくのが目に見えてわかるので、眺める楽しさというか放っておく楽しさがあると思うんだけど、今作はパーティ編成などでずっと動き続けなければならないので下手に放っておけない。すると今度はシステム回りの乱雑具合が目に付くという。

●システム回りの不親切さ
 アイテム売却について。店は「武器屋」「防具屋」「道具屋」の3種類があり、それぞれの開発に素材やマナを必要とするのだが、それぞれの店に材料を売らないとストックされないという仕様のため、必要な素材を各店に振り分けて売らなければならない。
 なのに、手持ちすべての素材やマナをまとめて売るのはできるが、選択した素材・マナだけを全部売るということが出来ないので、1つ1つ選択するか必要のないものまでセットで売り払うかどちらかしかなく、ものすごい非効率。
 お金を稼ぐにも開発するにも、とりあえず手に入れたものを売るしかないというゲームなので、ここはこだわりを持って作ってほしかった。

 もう一つはパーティ編成+派遣時。派遣先設定が「手動で設定 or 前日の行動の繰り返し」しかなく、パーティが増えてくるとかなり面倒な操作を要求される。パーティの編成自体も画面上仕方ないのかもしれないけど見にくく、一昔前のPCゲームを思い出すような作り。

●総評:目の付け所はいいけど
 さすが自社で派遣をやっているだけはあり目の付け所は良かったと思うし、いろんな要素にいろんなパラメータを散りばめて単調にさせないよう努力したのはすごい伝わった。けど、結局いろいろと整理できないまま発売したみたいな印象。
 そもそもフルプライスのゲームじゃないのでってところもありますけどね。1,000円と考えたら相当考えられてるゲームだと思うんで。