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ハード:Playstation Portable
メーカー:コーエー
発売日:2004.12.16
ジャンル:アクション
実勢価格:700~1,000円(中古価格)

評価:★★★

真・三國無双

 

 1vs多数のアクションゲームとして最初に大ヒットを収め、「無双系アクション」と呼ばれるまでに至った人気3Dアクションゲーム「真・三國無双」シリーズの携帯ゲーム機初作品。PSP発売のわずか4日後に発売された初期タイトルのうちのひとつ。

 今までの無双シリーズと思ってプレイすると、内容のあまりの違いに驚く。据え置き機でのシリーズと完全なる同名作品でありながら、基本である「一騎当千型」はそのままに、携帯ゲーム機らしい新しい試みを多数詰め込んだ作品となっている。

 まず一番大きいのは「ステージのエリア分け」。一つのステージを大きいフィールドにするのではなく、小さめのフィールドを複数組み合わせた「エリア」とした。陣地のようなもので、プレイヤーはこのエリアをひとつひとつ制圧して進んで行く。
 エリアには通常の「野戦場」エリアのほかに、体力回復&制限時間延長効果のある「兵糧庫」エリア・倒れた武将が復活できる「砦」エリア・そして占領されると敗北となる「本陣」エリアがあり、どの順番でエリアを奪取するのかが戦局に大きく関わるという内容となっている(今作では、武将が回復アイテムを落としたりステージ上で拾えたりはしないので、兵糧庫の使い方がかなり重要な要素となっている)。
 エリアでの戦闘が終わると、隣のエリアに移動できるフェイズに移行する。隣のエリアに敵がいると、自分の陣地であろうとエリア戦闘に突入する。

 エリアの制圧に必要なのは「軍の戦意低下」で、兵や武将を倒したり(倒されたり)することで減ってゆき、この戦意が0になった軍がエリア敗北となる。このエリア関連の仕組みは、後にガンダム無双でも採用された。ガンダム無双はひとつの広いステージの中にこういったエリアの代わりの「フィールド」が混じるというまた別のやり方だったが。

 エリア移動フェイズの最中はいつでもセーブすることが出来、タイトル画面からすぐに再開出来るようになった。プレイしたことのある方はわかると思うが、こういった無双系アクションゲームは1つのステージが大きなフィールドになっていて、倒す敵も多いことから1ステージにかかる時間がかなり長い。通常のプレイで大体30分くらい、レベルアップなどを目的とした討伐数稼ぎなどになると1時間近くになる場合もある。
 その点今作では、1エリアにかかる時間が数分程度なので、空いた時間に少しだけ…といったプレイにも対応できる。単純な本体スペック上の問題もあったのだろうが、エリアによってフィールドを小分けにしたこと・セーブ関連機能を充実させたことは、携帯ゲーム機向けらしい部分であり、よく考えられた内容だと思う。

 次に「兵糧による制限時間の導入」。エリアでの戦闘中・もしくは兵糧庫での回復時には兵糧(制限時間)が減っていき、兵糧が0になるとその時点で敗北となる。敵に占領されている兵糧庫を制圧すると、300秒ないし600秒増える仕組み。もちろん自軍の兵糧庫を失えば、同じように残り時間が減る。
 自軍陣地でもエリア戦闘に突入することを含めて、どういう順番で攻めていくか、兵糧庫をいつ奪いにいくのかなど、今までのシリーズとはまったく違った戦略の立て方が必要となり、ここも新しいアプローチで非常に面白い。

 レベルについても、今作ではステージごとにレベルが1に戻るようになった。ステージごとに1からスタートさせることで、どのエリアから進めていくのか…などの戦略性を求めた結果だろうが、せっかくレベルを上げて覚えたコンボなども次のステージではまた覚え直しになるなど、デメリットのほうが大きかったかな?と思う。

 副将システムもなかなか面白かった。4人まで副将を選び戦闘に参加させることが出来るもので、統率力によって連れて行ける武将に限りがあったり、副将自体の数も200人となかなかのボリューム。

 次に難点…というか気になった部分を。

 まず「敵軍の戦意を0にするとエリア戦闘に勝利する」という部分で、敵武将のトドメをさす前に敵軍の戦意が0になった場合でも、武将を倒す前にエリア戦闘に勝利してしまう。せっかく武将を倒そうと奮闘していたのに、倒すギリギリのところで敵軍の戦意が先に尽きてしまい、武将との戦闘が無駄になった気がしてしまう、といったようなことが見受けられた。
 これが本陣突入時にも同じことが起こってしまうというのがさらに問題で、本陣では敵軍の大将が出てくるにも関わらず、大将を倒す前に敵軍の戦意が0になってもステージクリアになる。極端な話、大将と剣を交えなくてもその他の武将や兵を倒しているだけで本陣を落とせてしまう。これはさすがに問題のある仕様ではないだろうか。
 兵を一定数倒して戦意を一定値以下にする+エリア内の武将(本陣であれば大将)を倒す の2つをクリア条件としたほうが良かったのでは?

 エリアについては他にも、同じステージの中でまったく同じフィールドが2箇所以上出てきたりするケースがある。仕方のないことだとは思うが、やっぱり見た目の印象として飽きやすくはなってしまうのかな、と。

 2つめ、「視点」について。このゲームでは、視点を直すのにLボタンで「自キャラの目の前の視点(よく言われるところの三人称視点)に戻す」ことしか出来ない。PS2/3のコントローラみたく右スティックがないのだから仕方がないのだが、問題はこの視点変更に若干のラグがあることで、おかげでどうにも使いにくい。
 それならば、せめて普段の視点がまともであれば良かったのだが、これがまたちょっと動くとすぐわかりにくくなってしまう。
 武将や守備隊長などの主要ユニットではキャラクターの上に名前が出るようになっているが、これについても場面場面でいきなり消えてしまうことがあり、これもわかりにくかった。
 総じて、もともとのカメラワークがそれほど良くない+視点を直す手段に乏しい ということで、いったん視点が自分に合わないものになってしまうと、そこからの復帰が面倒だというのが個人的なこのゲーム最大の難点だった。

 声がなかったりストーリー上でのムービーもほぼない。演出面ではどうしても従来シリーズと比べたときの差が出てしまっているが、自分はあまり気にならなかった(PSPというハード上、ここもある程度割り切って作ったのだろうと思ったので)。

 総評として、このゲームならではのいい部分と従来シリーズと比べたときの難点のそれぞれが多く、評価の非常に難しい作品だが、限られたハード上の問題の中で出来ることはやったと思うし、無双アクションの基本部分はきっちり作りこまれている。

 粗は多いが野心的。この内容をハード立ち上げすぐに出したことを評価すべきか。