[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2010.04.22
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:1,000~1,500円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2018.12.29

イース -フェルガナの誓い-

●プロローグ
 燃えるような赤い髪と少年の様にどこまでも澄んだ黒い瞳―。

 後の人々に世紀の大冒険家と呼ばれることになる若き冒険家、アドル=クリスティンは古代王国イースを巡る大冒険の後、まだ見ぬ新たな冒険の地を目指して親友である元盗賊のドギと共に世界各地を巡る旅に出る。

 それから約2年後―

 各地を旅する中、二人はとある街でドギの故郷・フェルガナ地方に関する不穏な噂を耳にすることになる。火山活動の活性化、突如出現するようになったという魔獣の群れ、領主の圧政に苦しむ領民の嘆き…

 「フェルガナで何か不吉なことが起きている―。」

 異変の真相を確かめるべく、ドギと共にフェルガナ地方を目指す事にしたアドルには、ある予感があった。
 何かが待ち受けているという、ほとんど威嚇的ともいえるほどの雰囲気が、フェルガナの地全体から押し寄せてきていたのだ。

 「さぁ、あと少しだ。行こうぜ、アドル。」
 ドギはそう言うと前よりも力を込めて船を漕ぎはじめた。
 アドルは、まとわりつくような予感を振り払うと舵を握る手に力を込めた。これより、遠きフェルガナの地にてアドル=クリスティンの新たなる冒険の幕が開ける…

●概要
 1989年、シリーズ唯一の横スクロールアクションRPGとして発売された「イースIII ワンダラーズフロムイース」を日本ファルコム自身の手によってフルリメイクした作品。イースVIのシステムをベースに様々なアクションを追加、さらなる進化を遂げている。
 初出は2005年のWindows版だが、PSP版は5年後の2010年発売と時間がかかり、よりによってシステムの新しい「Ys SEVEN」の翌年になってしまった。イメージとしてはVIとVIIのちょうど間くらいのアクションといった感じだろうか…

●基本操作
 ○ボタンでの攻撃(最大6連撃)をベースにしたシンプルな操作系で、VI同様にジャンプも可能。今回はストーリーが進むとダッシュや2段ジャンプも出来るようになっており、各ダンジョンもダッシュ+2段ジャンプを前提に作られている。
 後述のリングアーツによってジャンプの距離を延ばすこともできるので、2段ジャンプ+リングアーツでかなりの距離を飛び越えることが出来るようになった。ストーリー上は使えなくてもクリアできるが、アイテム収集や細かいサブイベントを見るには必須。VIのダッシュジャンプほどではないが、ジャンプ後のリングアーツ使用のタイミングを覚えるのにはちょっと苦労した。

 イースVIと比べると明らかに攻撃の爽快感が増していて、とにかくズバズバ斬っているだけでも楽しい。キーレスポンスが良いのが一番だろうけど、スピーディに動かせるってだけでも大きいね。
 ダッシュも方向キー2回or○ボタン押しっぱなしと複数の出し方がある上、「常にダッシュ状態にする」を選択できるオプションがあるのも親切。ボス戦で有効に活用させてもらった。

 あと、これはVIから引き続きの難点になるが、空中にいる敵に対してはどうしてもジャンプ斬り1・2発をちまちま繰り返す必要があり、しかも視点の影響もあって当たりにくい。爽快感という意味では阻害要因になっている気がした。

 もうひとつ、ブレイブゲージを貯めて△ボタンで発動できる「ブースト」が新しく導入された。ブースト発動中は攻撃速度が大幅に上昇+受けるダメージ半減&ノックバック無効の効果がある。ゲーム中盤以降は「Wブースト」に強化され、発動時に周囲ダメージ+ブースト発動中にHP回復効果が追加される。

●リングアーツ
 イースIIIのリングは廃止され、代わりに導入されたのがこのリングアーツ。3属性の指輪を付け替えて魔法を使うことが出来るもので、VIの剣魔法によく似ている。威力がそうでもないので敵に対して使う機会は少なく、「火」は一部ボス戦で必須、「風」はジャンプの飛距離延長で使う場面がそれなりに、「地」はひびの入った壁を壊す用、と使い道は結構限られる印象。

●グラフィック
 イースIIIではサイドビューだったものが3Dで表現され、雰囲気もしっかり再現されていて良好。時期を考えると、2Dの2頭身キャラがちまちま動くのは決して優れたグラフィックとは言えないが、まあイースだしという感じ。視点はトップビューというよりは多少手前からの見下ろし視点で手前奥が若干見にくく、足場にうまく乗れなかったりすることも。
 あとは溶岩地帯・エルダーム山脈などで一部見受けられる部分として、背景なのか歩けるのかがちょっとわかりにくい場所や飛び移れる崖なのかそうでないのかが判別しにくいところがあり、しっかり描画しているからなんだろうがちょっと気になった。

●歯ごたえのある難易度
 今回は回復アイテムという概念がないので、ボス戦ではWブースト以外では一切回復できない。イースと言えば特にボス戦はパターンがほぼ決まっていて「死んで覚える」を地で行くタイプのゲームだが、今作については全ボスがそれに当てはまると言っていい、それくらい難易度NORMALでもシビアなバランスになっている。
 まずボスの攻撃が何種類あるのか判明させるのに数回死んで、そこからダメージをどうやって与えるかで数回死んで…みたいな感じで、よほど腕に自信のあるプレイヤーじゃない限りは相当GAME OVERの文字を見ることになるだろうと思う。
  今回のボスは今まで以上に「ダメージを与えられるタイミングが決まっている」ものがほとんどで、攻撃を避け続けるターンと攻撃を当て続けるターンがはっきり分かれているので、かなり長丁場を覚悟しなければならない。

●ストーリー+イベントのフルボイス化
 フルリメイク作品ではあるもののストーリーはかなり細かく変更されているようだ。イースIIIをプレイしたのが相当前で違いを細かく覚えていないので、今度プレイしなおすか…。イースIII自体がかなり短い作品だったので今作も多少伸びてる気もするが短く、おおよそ10時間程度でクリアできるボリュームになっている。

 PCE版でもイベントのボイス化は行われていたが、今回もイベントはフルボイス。ドギの声が玄田哲章さんなんだけども、さすがに20代前半にしては声が渋すぎるのでは…。今回はニコラス司教の島田敏さん・マクガイア伯の大友龍三郎さん・ベルハルトの掛川裕彦さんと渋いところを多く集めた感じ。掛川さんは最近だとナレーターのイメージのほうが強いけども。
 今回のヒロインであるエレナは野中藍さん。PCE版が富沢美智恵さんでかなり大人っぽい声だったので、今回はどちらかというと幼い感じの声で大幅に変わった印象がある。絵柄もそれっぽくなったような。

●音楽
 イースIIIの音楽はもともと素晴らしかったが、今回はさらにアレンジされた良曲が揃う。「翼を持った少年」「バレスタイン城」はほんとに良アレンジ。PCE版のバレスタイン城が神過ぎてどちらが上か悩むところだけど。
 さらにこのPSP版では、オプションで「PC88版」「X68000版」に切り替えることも可能。さすがにこのグラフィックに旧BGMはそれほど合わないが、曲の出来自体は素晴らしいもので、このクオリティが30年前になるのか…

●武器防具の強化要素
 道中の宝箱や敵を倒すことによって手に入る「ラバール鉱」を使って、武器防具を強化することのできる要素が導入された。強化は2段階で、強化される数値は+1か+2とそれほど大きいものではないので、使わなくても進めてしまうくらいの位置付けに見える。
 …と思ってたんだが、ボス戦がいつも以上に詰将棋になる今作だと、与えるor受けるダメージが数ダメージ違うだけでかなりの違いになるため、結果的にMAXまで育てておいて損はない、ということになる。ラバール鉱最終的に結構余るしね。

●総評
 爽快感のさらに増したアクションでただただ動かすのが楽しい作品に。ボス戦の厳しいバランスは多少人を選ぶとは思うが、難易度設定はファルコムらしくいろいろと設定できるので、困ったら難易度を落とすのもアリだろう。
 個人的には視点による一部個所の見にくさが気になったのでちょっと評価を下げたが、安定の面白さがある作品には変わりない。