[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:マーベラスエンターテイメント/オーパススタジオ
発売日:2009.05.28
ジャンル:RPG
実勢価格:500~800円(中古価格)

評価:★★★☆

[Review] 2017.01.30

勇者30

●あらすじ(勇者30)
 突如魔王に襲撃された王国で、慌てた国王によりなりゆきで勇者に仕立て上げられた主人公。魔王が世界を滅ぼす「ハメツの魔法」を唱え終わるまでの時間はわずか30秒、勇者となった主人公は30秒の間に魔王を倒し、世界を救うことが出来るのか?

●概要
 500年もの永きに渡り繰り広げられてきた、人類と魔王との壮絶な戦いを4つの異なる視点から描いた作品。4つのモードはすべて女神暦と呼ばれる共通の時間軸で、違う世代の出来事が描かれる。ちなみに、30秒が半日にあたるという設定になっている。
 RPG形式で51体の魔王を倒す「勇者30」・父である王様の病気を治すため、30秒の門限を守り奮闘するシューティング「王女30」・夜が明けるまでの30秒間でモンスターを召喚しまくりミッションをクリアするリアルタイムシミュレーション「魔王30」・賢者がモンスター全滅の呪文を唱える30秒間賢者を守り続ける騎士を操るアクション「騎士30」の4つのモードがあり、どのモードから進めてもOK。4つのモードをすべてクリアすると、5つ目・6つ目の高難易度モードが解禁される。

 発売はマーベラスエンターテイメント(現マーベラス)、開発は「グルーヴ地獄V」などのオーパススタジオ。

●レトロ調のドットグラフィック
 キャラクターグラフィックやフィールドなどはすべてドット絵となっており、イベント場面でもドットグラフィックをそのまま拡大したものが使われる。PSPあたりからこのようなドットグラフィックを押し出した作品がいくつか出るようになったが、勇者のくせになまいきだ。が先に出ていたので、インパクトとしてはそれほど大きくなかったのが惜しいところか。

●勇者30
 30秒で敵を倒してレベル上げ+お金稼ぎ・武器防具アイテムの購入・イベントの進行すべてをこなす。×ボタンで体力を消費する高速移動のダッシュが出来る。戦闘は突っ込んでいくのを見てるだけの自動戦闘。
 お金を払うと時間をスタート時の残り30秒まで巻き戻してくれる「時の女神へお祈り」によって実質時間の延長が可能だが、1回延長してもらうごとに必要なお金が増えていくので、使いすぎも出来ない仕組みになっている。

 時間は容赦なく減ってゆくのでかなりせわしないプレイになるが、高いエンカウントにサクサク進む戦闘・ガンガン上がってゆくレベル。慣れてくると、ぎりぎりまで戦ってレベル上げをして、残り1秒未満で街に飛び込みお祈り…なんてことも簡単にできる。街の中だけは時の女神のサービス?により時間の進行が止まるので、ゆっくり進めることが出来るのもポイント。ダッシュを上手く使えばお祈りしなくてもきっちり30秒でクリアできるステージも多く、そこまでの組み立てを考えるのも楽しい。
 1ステージにかかる時間はほとんどが1分以内で、とにかくテンポ良いプレイが可能。1ステージ終了後のフィールドマップではどこでもセーブが出来るのでちょっとした時間にプレイといったこともしやすい。携帯ゲーム機らしいポイントだ。
 各ステージに設定されている「称号集め」も面白く、やりこみ要素も十分。さすがは表題になっているモードなだけはあるという感じ。

 称号集めなどで過去ステージに戻る際、その後のステージで手に入れている武器防具は使えないようになるのだが、1回1回装備しなおしが手動で、これを忘れると使えない武器防具のところが装備なしになってしまうのだけは惜しいポイント。せめて即装備画面に切り替わってくれるとありがたかったのだが。

●王女30
 画面上下左右から出てくる敵を打ちながら進んでいくシューティング調ゲーム。ミッションごとに様々な目的があるが、ほとんどは何かしら物を取りに行く形で、取りに行って城まで戻ってくるまでが30秒以内ということになる。十字キーで移動、○×△□のボタンがそれぞれ方向に対応しており、4方向に打ち分ける。赤いじゅうたん部分を歩くとお金が減る代わりに時間が回復する。F-ZEROの回復ゾーンが何となく近い感じ。

 正直言ってほとんどのステージでごり押しが可能で、勇者30に比べると作りこみはいまいち。画面がPSPの横長なのに縦スクロールのステージがいくつかあるのもどうかと思うところ。王女をはじめとしたキャラクター達は相当立っていて面白いのだが。

●魔王30
 美しき魔王が、何者かに操られた人間たちを結果的に救うことになるリアルタイムシミュレーション風味の作品。十字キーで魔王を動かしながら、○□△で対応の異なるモンスターを召喚し敵と戦わせる。魔王の周りには魔法陣が描かれており、魔法陣が大きい状態で召喚するとより強いモンスターを召喚できる。ダメージを受けたり連続で召喚すると魔法陣が小さくなる。その他、ステージ上に置かれた金の樽に触れると、所持金をすべて失う代わりに残り時間が30秒にまで戻る。
 ○はパワータイプ・□はスピードタイプ・△は遠距離攻撃(ショット)タイプと分かれており、それぞれパワータイプはスピードタイプに強くショットタイプに弱い・スピードタイプはショットタイプに強くパワータイプに弱い・ショットタイプはパワータイプに強くスピードタイプに弱い…という所謂「3すくみ」が成立している。敵も同じような3タイプがあるので、得意不得意を見ながら適切なモンスターを召喚していくということになる。
 途中入手できる四大精霊(魔王が勝手に四天王にする)は、ステージ上に配置され、手に入れるとRボタンで様々な効果を発動する。

 金の樽による時間の回復が「お金が少しでもあれば一律で戻してくれる」という仕様でペナルティがあまりに薄く、勇者30に比べて残り時間の緊迫感が希薄。こちらも勇者30ほどの熱中度にはなりにくいか。

●騎士30
 賢者をとにかく守り切る。今までの3モードと違って30秒を確実に守り切るという内容なので、時の女神の力を借りる場面はない。賢者を連れて逃げたり持ち上げて運んだり、ステージ上のものを拾って使ったり、罠を作ってしかけたり。様々なアクションで、賢者の30秒詠唱時間を作り、30秒経過することが出来ればステージクリア。賢者を連れて歩いている間や鐘の音による邪魔が入っているときは詠唱が進まず時間が経過しない。

 賢者をとりあえず逃がし続けてクリアするだけなら一番簡単なモードだが、クリアタイムによってもらえる称号が異なり、いい称号をもらうためにはかなりの戦略が必要とされる。ただそこまでやりこむほど面白さを感じるかと言われると。
 せっかく罠を作れるのに、あまりに役立たずで使う機会がほとんどない(というか使わなくてもクリアできる)というのも引っかかる。

●その後のモード:勇者300・勇者3
 4つのモードをクリアすると解放される高難易度モード「勇者300」。最終シナリオとも呼べるもので、300秒以内に時空が歪んで繋がった5つの時代の世界を冒険し世界中の仲間を集め、超魔王を倒すことが目的。5つの世界は60秒ごとに最初の大陸から順に時が止まっていく。1つ目の大陸は60秒以内・2つ目の大陸は120秒以内…という制限もつくこととなる。かなりシビアな時間制限で、各地に売っている武器防具の選択が大きなカギ。

 もう一つのモード「勇者3」は、勇者300クリア後に登場する最後のモードで、その名の通り制限時間3秒で魔王を倒すという超高難度シナリオ。マップは小さく、敵からもらえるお金も多い。そのため、1回戦闘→女神にお祈り→外に出て1回戦闘→お祈り…を繰り返してその間に武器防具を揃えるという超シビアなプレイが要求される。

●総評
 最終シナリオらしい難易度の勇者300・理不尽な難易度ながらも瞬発力でギリギリ何とかなるという快感も味わえる勇者3と合わせて、勇者シリーズが完成度としては群を抜いている。
 これは全体の特徴だが、スキップも超高速で繰り返しプレイも苦にならず、ロードも激速い。音楽もTHE ALFEEの高見沢俊彦氏をはじめ古代祐三氏・桜庭統氏などの豪華布陣。

 とにかく、目の付けどころが秀逸。全モードをしっかり楽しめるかと言われると…という面もあり、勇者系統に特化したほうが良かったのでは?という感もあるんだけど。ボリュームもそこまで大きくないので、手に取りやすいタイプのゲームなのではないかと。