[Data]
ハード:Super famicom
メーカー:スクウェア
発売日:1995.03.11
ジャンル:RPG
実勢価格:100~1,000円

[Data2]
ハード:Wii[Virtual Console]
配信日:2011.04.26
配信価格:900Wiiポイント

評価:★★★★★

[Review] 2012.04.11

クロノ・トリガー

 ガルディア王国のリーネ広場で始まった「建国千年祭」。幼馴染ルッカが開発した転移装置を見るため、クロノは広場を訪れていた。リーネの鐘の前でぶつかった少女マールとともに転移装置を見に行くクロノ。マールは自ら転移装置の実験台となるが、そのときマールの持つペンダントと転移装置が共鳴を起こし、マールは謎の空間に吸い込まれて消えてしまう。クロノはそのあとを追って、謎の空間へ飛び込むのだが…
 未来を滅ぼした謎の巨大生命体「ラヴォス」から未来の世界を救うため、クロノたちが現代から原始時代~未来まで5つの時代を行き来する中で各時代の混迷の根源を正していくRPG。

 スクウェア開発のゲームにドラクエでおなじみの堀井雄二氏をストーリー監修に加え、イラストにこちらもおなじみの鳥山明氏を採用するという、エニックス色を加えたスタッフ勢は当時大きな話題となり、「スクウェアとエニックスのコラボレーション!」みたいな記事が雑誌(特にジャンプ系)などで飛び交っていたのは良く覚えている。まあ、坂口博信氏と合わせたプロジェクト名が「ドリームプロジェクト」だったが、このネーミングからして、メーカー側からちょっと煽っていた感があったなとは思う。
 実際のところ、メインどころのスタッフでエニックス勢は上記2人しかいない(他の細かいスタッフはわからないが)ので、コラボレーションというにはさすがに無理があったが、それでも当時からRPG2大メーカーと呼ばれていた両社のスタッフが1つの作品に関わるというのは史上初であり、95年の春商戦を大いに賑わせたことは間違いない。後にこの2社が合併してスクウェア・エニックスになるなんて、当時誰が想像しただろう。

 発明家であるルッカやそれ以降の登場キャラはまだしも、中世に飛んで速攻刀を振り回せるクロノとか弓扱えるマールとか、RPGとしてのスタートにちょっと問題を感じないわけではなかったが、ラヴォス登場からの謎の解明・プレイヤーキャラそれぞれに当てられたサブイベント・過去に起こしたことが後の世代にリンクするタイムパラドックス要素・すべては今のゲームであれば簡単に実現しそうな内容だが、当時は全てが新鮮だった。

 ゲームシステムはオーソドックスなもので、特にメニュー周りや登場アイテムなどの基本要素はほぼファイナルファンタジーシリーズに準じた内容となっている。
 各キャラクターの移動がマス単位(キャラ単位)ではなくなり、これによって斜めに走ったりすることが出来るようになった。非常に地味な要素だが、技術力のいるものだったに違いない。SFC後期はグラフィック関連でスクウェアが他社の1歩2歩先を行っていたが、基本的なグラフィックのきれいさはもちろん、細かい部分もこだわっていたよなあと思うところだ。
 フィールドマップはミニチュア調でエンカウントはなく、街のショップや宿屋なども直接マップから入るようになっている。各時代ともにグラフィックもなかなか細かく描かれていて、自分の行動によってマップが変わったりもするなど、このミニチュアマップが効果的に作用していた。古代・浮遊大陸の美しさは今でも色あせないものだと思う。

 戦闘に関しては、FFシリーズとコマンドやATB(アクティブタイムバトル)などの基本部分を同じにしつつも、オリジナルな要素を詰め込んだ内容となっていた。中でも、戦闘突入・終了時に画面の切り替えがなく完全シームレスで展開されたことは大きな特徴だったと言える。2DのRPGではどうしても移動時のキャラグラフィックがこじんまりとしていてそのまま戦闘突入とは行かなかったのが常だったが、このゲームでは移動時のグラフィックがそのまま戦闘にも参加し、しかも動きもなかなかに多彩だった。

 戦闘関連ではもうひとつ、各キャラの魔法・固有技のほかに「連携技」と呼ばれる2人・3人による連携攻撃が加わったのが特徴で、固有技のグラフィックを有効活用した迫力ある戦闘に一役買っていたと言える。

 難点がないわけではなく、範囲指定攻撃の使いどころが非常に薄いことが主に挙げられる。せっかく敵キャラクターが動き回るようになっていて、それに合わせて横縦一列や範囲攻撃まで用意したにも関わらず、使いどころがほとんどない。対ボス戦に至っては、ボス敵が複数になった場合は範囲攻撃が当たらない程度に離れており、こちらでも使い道がない。自分の周りだけに攻撃できるものもあるが、自分が自由に動けないのに自分の周りだけに範囲指定をされたところでどうしようもなく、ほぼ運頼みに近い状況となってしまう。
  範囲攻撃をまともに活用しようと思ったら、スクウェアであれば「ライブアライブ」みたく若干シミュレーション風味にするより方法がなく、いっそのこと範囲関連は全て取っ払っても良かったんじゃないかとすら思う。

  総じて簡単でわかりやすく、シームレスも含めてテンポも悪くない。強いて言えば魔法のエフェクトはもうちょっと簡略化してくれても良かったなーと思うくらい。

 そして、クロノ・トリガーと言えば「つよくてニューゲーム」の存在を忘れることは出来ない。クリアしたときのレベルや装備類を引き継いだ状態で新しくストーリーを始められるもので、1回目のプレイでは時の最果てに行けるようになってからラヴォスに挑戦できるが、このつよくてニューゲームではスタート直後から挑むことが可能となる。
 この”ラヴォスに挑むタイミング”によってエンディングが変わる、いわゆる「マルチエンディング」を採用しており、SFC版では通常のエンディングと合わせて12種類のエンディングが用意された。中には「ドリームプロジェクト」の開発室のようなお遊びエンディングも用意されている。
 一部メッセージのこもったものやお遊び要素はいいとして、ストーリーの流れ上どうしても作らなきゃならなかったと思われるエンディングもあり、12種類もいらなかったというのが正直な感想。あとタイミングがシビアすぎるものもあり、検証しようにもラヴォスを倒すのにかなり時間がかかるためその気を削がれてしまうのが残念。ゲーム中どこかでヒントが欲しかった。
  今作は全体的にクリアまでの時間が短い(普通に進めると20時間かからないくらいでクリア可能)ゲームだが、このつよくてニューゲームの存在があって成り立つボリュームとも言える。

 音楽については光田康典氏が担当、氏の作曲初作品であり、それまでの植松さんや伊藤さん等とは違った世界観の曲を作り上げている。メインテーマを始め、「時の回廊」や「黒の夢」・シルバードの音楽など名曲揃い。

 バーチャルコンソールなどでこのゲームを体感したプレイヤーも多く、今は名作の声が多く聞かれるゲームとなったが、当時はダブルミリオンタイトルでありながら評価は真っ二つに分かれており、賞賛ばかりではなかった。せっかくの2社の融合なのに、いいところをそれぞれ打ち消しあってしまったのでは?という声も多く聞かれていたのは事実だ。
 まあ、自分は子供心にそんな2社がどうこうなぞ思うわけもなく、純粋に世界観にうまく溶け込める優秀なゲームという感想しか持っていなかったが。

 難度の面も評価は二分しているが、総じて簡単という人のほうが多いと思う。このゲームの場合はATBの使い方によって(アクティブかウエイトか)によっても大きく変わるほか、戦闘スピードも変えることができるので、「デフォルトでプレイした場合は普通、ウェイトは超簡単」という言い方が正しいだろう。自分が久々にプレイした感じでは、属性防御がうまくわかってないと一部ボス戦が辛いかもしれないな、と。大体が封印された箱関連のアイテムなので、サブイベントクリアありきで進まないとそこそこ難しくなるような印象だった。

 1995年はSFCの最後期に当たり、ハードの力を力一杯使った名作が多数登場したが、このゲームはその名立たるものだったと思う。次世代機が続々と登場する中、SFCの底力を見せ付けたこのゲームは代表作にふさわしい。
 当時は内容以上に製作スタッフ面がクローズアップされてしまった節があったが、今プレイする方に関しては、そんな色眼鏡なくプレイできるはず。ぜひ一度、体感して欲しい。