[Data]
ハード:Super famicom
メーカー:イマジニア/イマジニアズーム
発売日:1993.12.17
ジャンル:スポーツ・野球
実勢価格:100~400円(中古価格)

評価:★★★★☆

[Review] 2012.05.05

ドラッキーの草やきう

 ZERO DIVIDEシリーズなどでおなじみのズームが、イマジニアと組んだ会社がその名も「イマジニアズーム」(そのまんまだが)。この会社はズームのキャラクター「NECO」を使ったゲームを「ドラッキー」と名前を変えていくつか発売したのだが(NECOの本名がNECO・DLUCKYなことによるもの)、今作「草やきう」はそのイマジニアズーム第1作となる作品である。
 プレイしていた当時は上記の事実を知らず、ドラッキーに良く似た生物がなぜZERO DIVIDEに出てきているんだ…?と本気で思っていた。
 ちなみに、タイトルが「草やきう」なのは、ドラッキーが”きゅ”を発音できないためだそうだ。

 ネコのドラッキーや犬のポチ・熊のごろう・オットセイのおときちなどさまざまな動物キャラクターが登場し、それぞれのキャラクターがいい動きとゆるい台詞回しでいい世界観を作り上げている。個人的に好きなのは特訓で登場するレックスとポン次郎(マイナーどころだけど)。

 チームは全9チームあるが、ラスボス的な存在である「タブクリア・エンパイヤ・ヘルサンダー・デストロイヤーズ」を除く8チームがプレイヤーが選べるチームとなる。このチーム名でもうわかった方もいるかもしれないが、今作は日本コカ・コーラ社の協賛を受けており、8チームのチーム名には全てコカ・コーラ社が1993年当時に販売していた商品名がつく。
 主役のドラッキー率いる「コカ・コーラ ドラッキーズ」は定番として、上記のタブクリアや「ベジータベータ デヴィットローラーズ」「ハイシー ガンボス」など、現在では販売されていない懐かしの飲み物もある。多数の味で人気があったHI-Cはまだしも、ベジータベータあたりはかなりマイナーな部類に入るんだろうと思うが…
 7回の通称「ラッキー7」時には、各キャラクターが自チームの飲み物を飲み干すコマまで用意すると言う充実ぶり。タイアップゲームは数あれど、ここまで前面に押し出すゲームはそうそうないだろう。

 ゲームメニューは、自チーム以外の7チームを倒し、最後に待つエンパイヤ・ヘルサンダー・デストロイヤーズを倒すまでをプレーする「勝抜RPGドラマ 草やきう」・他ゲームで言うところのオープン戦と同じ1試合のみの対戦「エキサイティング公式一発戦。」・4チームづつに分かれて対戦する「オールスター 4チーム対抗やきう合戦」・バッティング及び守備練習が出来る「特訓!」の4つ。公式一発戦と特訓モードではチームの能力を上げることもできる。

 草野球がベースのため、プロ野球ほど選手交代ルールがきっちりしておらず、いったん交代でベンチに下がった選手を再び代打などで起用することが出来る。やろうと思えば、「出塁→代走を出してベンチに下げさせる→次の打者の時に代打でまた登場→出塁→…」というコンボをかますことだって可能(もちろん出塁できればの話&スタミナをだいぶ消費するが)。

 基本的な操作や画面はファミスタをベースにした基本的なもの。守備時にはファインプレー(飛び込み)がかなりの距離になったり、2段ジャンプ出来たりはするが。すぐ覚えられる操作系なのと、動きが非常に良い。
 打撃についても左右の打ち分け含めて非常に打ちやすい。ミートポイントが狭く、遠くに飛ばせるようになるにはコツがいるように思うが、理不尽に難しいことはない。
 「魔球」「打法」という、ウルトラベースボールシリーズでよく見たような必殺技要素もあるが、確実に決まりすぎて面白みには欠けた(実際には2段ジャンプでむりやり取ることは出来るが、タイミングはかなり難しい)。本編が意外によく出来ているということもあり、そもそも使わなくてもいいという位置付けに収まってしまった感はある。

 ミートポイントの問題・CPUがそれほど頭が良くないことなども合わせ、(とくに能力の低い序盤は)打撃戦にはほとんどならない。おそらくここぞの必殺打法で点を取っていくような戦い方になるのではないだろうか。打者走者の足の速さを生かしたセーフティバント攻めも面白い。

 正直なところ、ルールをいろいろ拾っていくと単なる「何でもありな大味な野球ゲーム」で、走者の足の速さと送球スピードが噛み合ってなかったりとか、ミートポイントの問題等々、野球としてのバランスがいいかと言われると実はそうでもない。
 このころ発売の野球ゲームはほぼプロ野球を舞台としたゲームだったが、現実に存在するものをベースにして作られていたので、もちろんプロ野球のルールに沿わないといけないし、プレイヤーもプロ野球をどこまで再現できているか?という視点に目が行く。その点、今作は「現実に存在しないキャラクターを操る草野球ゲーム」であり、ある程度野球になっていれば、リアルに作る必要なんてどこにもない。
 投球では、どのピッチャーも軽く180~250km/hというとんでもないスピードボールを投げられる。守備では数mは滑る勢いでファインプレーの滑り込みをするし、数十mは飛んでるんじゃないかくらいの凄まじい高さの2段ジャンプも出来る。ライナーをキャッチすると数mはボールに押されて後方へ流される。打法では月までかっ飛ばせるような打球が打てるし、そんな打球を2段ジャンプでフェンス?に激突しながらキャッチすることだって出来る。

  普通の野球では考えられないようなむちゃくちゃな内容ばかりだが、これが”リアルに作る必要がないからこその産物”なのだ。もちろん、ベースとなる操作や動きなどの基本部分がきちんとしていないと意味がないのだが、その点でもこのゲームはそつのない作りとなっていて、プレイしたくなる魅力を十分に秘めている。
 一般的な野球ゲームとしてのバランスと比べることなんてもはや無意味。肩の力を抜いてプレーできる、異色かつ素晴らしいゲーム。オススメ。