[Data]
ハード:Super famicom
メーカー:ポニーキャニオン/オリジン
発売日:1992.04.03
ジャンル:RPG
実勢価格:100~400円

評価:★★★★★

[Review] 2012.05.06

ウルティマVI ~偽りの予言者~

 2DフィールドRPGの元祖とも言われる、見下ろし視点のパソコン用RPG「ウルティマ」シリーズ第6弾「Ultima VI the False Prophet ”U6”」のSFC移植版。
 コンシューマゲーム機では、III移植版「恐怖のエクソダス」とIV移植版「聖者への道」がFCで発売されたが、VはNES(海外版ファミコン)でしかリリースされなかったため、日本ではVをすっ飛ばしてVIが発売される事態になった。大まかなストーリーはそれぞれ独立していたとは言え、スタートからロード・ブリティッシュが「地下世界から助けられた」(Vはロード・ブリティッシュを地下世界から救う話)と話し始めるなどしており、何の話??となることは必至。
 事情は良くわからないが、NES版で出たものを日本語版で出せない理由があったのだろうか?それとも、単純に売れないと判断されただけだろうか。

 現世で暮らすアバタールの前に、突如現れた赤いムーンゲート。ムーンゲートに飛び込むと、アバタールは待ち受けていたガーゴイルの一団に捕らわれ、祭壇の上で生贄に捧げられる寸前のところをデュプレ・シャミノ・イオロに助けられる。ブリタニアはガーゴイルの侵略を受けており、ロード・ブリティッシュの命によりガーゴイルたちから神殿を取り戻していくアバタールだが、ガーゴイル侵攻の原因がアバタール自身にあるということ・ガーゴイルの世界が消滅の危機に瀕していることがわかり…
 明確な悪役が存在し、その悪役を倒すこと・ロード・ブリティッシュ及びブリタニア世界を救うことが基本目的だった今までの作品とは違い、今作は悪役だと思っていたものが実はそうではなかった、という新しいテーマを持った作品となっていた。

 当初の目的は「ガーゴイルから8つの徳の神殿を開放すること」と提示されてはいるのだが、開放する順番が決まっているわけではない。そもそも、ゲーム開始時点で持っているムーンオーブで主要な場所にすぐワープできる(ガーゴイルの街にまですぐ飛んでいける)ため、基本的に自由な進め方が出来る。

 ダンジョンや建物以外のフィールドは一切切り替わらないのも特徴で、家や城などの建物もフィールドと同じサイズで表現される。街と街の間には広いフィールドが用意され、朝から夜へという時間の流れもある(1歩1分)。もちろん夜になると視界が狭まる。このようなさまざまな要素が、”ブリタニアを冒険する”という感覚を持たせてくれる。ムーンオーブがあるので、それを使えばわざわざ街と街の間を歩いていく必要もないのだが、これだけのフィールドにムーンオーブを使うのはもったいない。時間をかけてでも、歩いて移動することをオススメする。

 原作ではキーワードを入力して住人と会話する形が取られていたが、今作ではいくつか出てくるキーワードを選んで会話する。会話の内容によって新たなキーワードが出てくるなどするため、ほぼ総当りでキーワードを提示して会話していくことになるのだが、これが「作業」と感じないのがこのゲームの凄いところ。
 セリフ一つ一つが考えられている。テキスト数が圧倒的に多く、判で押したような当たり前のセリフは少ない。本筋に関係する話は多くないが、一人ひとりが手抜きなく、話すのが苦にならない。時間の概念があるので、時間帯によっては仕事場にいたり、夜になるともちろん就寝していたり。細かい部分の作り込みが見事で、プレイヤーを飽きさせない。ウルティマの凄さを実感できる部分だ。

 もうひとつ、このゲームならではの特徴となっているのが「カルマ」と呼ばれる数値。このカルマ値は「善行」により上がり、逆のことをすれば下がる仕組み。一般的なRPGでは民家の中を調べてアイテムを入手するという行為がもはや当たり前だが、このゲームでは民家に置いてあるアイテムを手に入れた場合「盗んだ」という扱いになってカルマ値が減少する。冷静に考えれば、民家に置いてあるものを勝手に持って行くんだからそりゃそうだろうとなるが、今までのRPGとは何なのかという疑問を抱かされる部分でもある。
 ほかにも、無害な動物に攻撃を仕掛けるなどの行為をした場合・戦闘でアバタールが死ぬなどの場合もカルマが下がる。このカルマが一定値以下になった場合、クリア条件を満たせなくなってしまうという落とし穴が待っている。民家にあるアイテムの中にはレアアイテムもあるため、カルマを少し犠牲にしてでもレアアイテムを取るのか、難しい判断を迫られる場面も。

 戦闘については、武器・魔法をきちんと用意することが大前提のバランスとなっており、ライトニングワンドやハルバードクラスの武器を全員が装備できるくらいにならないと、特に後半の敵は厳しい。ブリティンに近い位置にあるサイクロプスの洞窟でサイクロプス狩りをしていればそれなりにお金は溜まるし2ハンドハンマーは貰えるし…といいことづくめなので、冒険当初はサイクロプスの洞窟を主戦場にすると進めやすい。

 単純な難易度で言うと非常に難しい部類に入る。「気球」やタブレット入手に必要な「ちずのきれはし」など、イベントアイテムの入手法にかなり難解なものが多いことがあげられる。ノーヒントではないが抽象的でわかりにくく、集める数も多い。ダンジョンの奥深くに眠っているようなアイテムも多いが、そのダンジョンの位置に至ってはほぼノーヒントのものすらあり、頑張って探せと言わんばかりの突き放した姿勢に投げたプレイヤーもいるのではないだろうか。このあたりは、いい意味でも悪い意味でも国産ゲーとは一線を画している。
 上にも書いたが、提示された目的が曖昧な上、ムーンオーブでゲーム終盤に行くような場所まで簡単に行けてしまうため、誤ってワープしてしまった結果強力な敵に出くわしあっさりと死亡したりということもあるなど、自由度はものすごい高いけどあと知らないよ、という見事なまでの突き放しっぷりで、好き嫌いが極端に分かれる作品であることは間違いない。

 総評。特別グラフィックが優れているわけではないのだが、世界観の作り込みが素晴らしく、引き込まれる魅力がある。シリーズ化され、元祖と呼ばれるだけの実力は充分に発揮している作品と言えるだろう。ただ上記の通り人を選ぶ作品であることにも間違いはなく、10点満点だと0点か10点かという評価のなされそうな極端なゲームではないだろうか。自分は文句なしに10点つけるけれど。