[Data]
ハード:Segasaturn
メーカー:タカラ/RED
発売日:1997.12.11
ジャンル:RPG
実勢価格:100~200円(中古価格)

評価:★★

[Review] 2014.11.17

アルカナ・ストライクス

 ある日市場で老婆からカードを受け取った主人公エステルが、カードに誘われた夢の世界「アルカナ」を救うため、カードを駆使して戦うRPG。サクラ大戦シリーズなどでおなじみのマルチクリエイター、広井王子氏が立ち上げたREDカンパニー(現REDエンタテイメント)が制作を担当、当時流行の兆しがあったトレーディングカードゲーム(TCG)をシステムの根本に据えた作品。
 1997年はトレーディングカードゲームが大きく広がりを見せた年であり、もともと固定プレイヤーを数多く抱えていた大御所「マジック・ザ・ギャザリング」のほかに、モンコレの愛称でヒットした「モンスターコレクション」や、女性キャラクターメインのTCG「アクエリアンエイジ」などが誕生した年でもある。

 最大24枚のデッキ(ストーリー展開により最大3つのデッキが所持できる)を組み、ランダムに引かれる4枚のカードから選択して敵と戦うというTCGそのまんまのルールで戦闘が展開される。
 レアカードを著名な絵師が担当しているというのもTCGらしい特徴を受け継いでいて、麻宮騎亜氏・ ことぶきつかさ氏・樫本学ヴ氏・藤島康介氏・竹浪秀行氏などの絵師がレアカードのイラストを担当した。広井王子氏本人の出演も興味深いところ。カードの総数は280枚あり、コレクションとしてゲーム中いつでも参照できるようになっている。コレクター魂も揺さぶられる内容だ。

 カードには、召喚して敵と戦わせる(最大2体まで召喚可能)「モンスターカード」・属性攻撃&属性スキル発動に使う(他ゲームでいう魔法に近い)「マイトカード」・攻撃/防御/素早さを変化させる「ステータスカード」・回復専用の使い捨てカード「ヒーリングカード」・敵側のモンスターを捕獲する、こちらも使い捨て「キャプチャーカード」・場の属性を変える「チェンジカード」・新しいスキルをモンスターに習得させられる「スキルカード」・能力の最大値を増やす「UP!カード」で構成される。
 火・水・土・風・雷・闇・メタの7属性があり、火・水・土・風は基本4属性としてそれぞれ有利不利がある。メタは弱点のないいわゆる最強属性といったところか。一般的なTCGと同じく、デッキ内にどの属性のモンスターを配置するかが戦闘の難易度を大きく左右することになる。

 マイトカードは同じ属性・同じレベル(Lv1から3まである)であれば最大4枚までの同時出しが可能で、2枚以上で全体攻撃に変わる(枚数が多いほど攻撃力が増える)。ステータスカードも同じように、同じステータス変化のカードは最大4枚までの同時出しが可能で、2枚以上で全体化となる。ステータスカードは味方に使えば能力アップ・敵に使うと能力ダウンと、どちらにでも使用可能になっている。
  そのほか、モンスターはそれぞれ最大4つのスキルを所持できる。簡単に言うと”強力な攻撃”ということになるが、最初から持っているケースとスキルカードで後から覚えさせるケースとある。属性に対応したマイトカードを味方モンスターに使うことでスキルが発動する仕組みだ。このあたりも、モンスターの所持しているスキルの属性とマイトカードの属性をうまく絡めたデッキ構成が要求される部分だ。
 モンスターは主人公と同じく経験値によるレベルアップがあり、なおかつレベルアップによるクラスチェンジの要素も。まあ、ほとんどのモンスターのクラスチェンジ後が終盤に出てきてしまうので、クラスチェンジの感動がさほどないのが残念なところだったが。

 主人公エステルが各地で開放する「アルカナカード」は、戦闘中各1回のみ使える切り札的カードとなる。全体回復「女」や1ターンの間すべての攻撃を跳ね返す「鏡」・ステータス変化などすべての効果を打ち消す「忠義」などがある。

 TCGのルールに則り、はっきりとした属性優劣によってデッキ選択の重要性を表に出したバランスとなっていて、今までのゲームにはなかった面白さを生みだすことに成功している。属性優劣ほどではないが、ステータスカードによる能力補正もかなり高い。ステータスカードは入手数が限られるので、数少ないカードをどう割り振るかもポイントとなっている。

 次に難点を上げていく。

 まず、モンスターカードとそれ以外のカードとのデッキ内バランスが難しい点があげられる。ステータスカードやマイトカードをある程度は加えるデッキになると思うが、最初に引いた4枚にモンスターカードがないと敵側に先に召喚されてしまい、さっそく後手に回ってしまう。それでも前半は属性優劣で押し切れるからいいものの、後半はメタ属性の敵ばかりで属性デッキも大して役に立たず、先手を打たれるとそのままズルズルと敗戦に向かうことが多々起こる。
 2つ目は、スキルカードやUP!カードなども戦闘中・しかも召喚済みのモンスターにしか使えないという点。双方ともにTCGには存在しえないゲームならではのカードだと思うが、そういったカードこそ戦闘以外の場面で使えてもよかったはず。任意のモンスターに使うのが非常に面倒で、しかも24枚という少ないデッキを占領するのがなおさら疑問。大量に出てくるわけでもないし効果もバランス崩壊するほどではないのだから、好きに使いたかった。
 最後に、整頓のしにくさ。プレイヤーは3つのデッキ+ストック用のボックスそれぞれ24枚・最大で96枚のカードを所持できるが、1画面に4枚しか表示できず、一覧性に乏しいのでとにかく整理がしづらい。画面上のステータス表示をカード選択時のみにして、通常時は8枚ないし12枚を一覧表示できると良かった。

 後半になると、こちらには数枚しかないステータスカードを乱発する敵が相次ぎ、いきなり難易度がぐっと上昇する。攻撃・防御アップ×3を2ターン連続でかけられたりが当たり前になり、こうなると補正が強すぎてほぼお手上げ。アルカナカードの鏡や忠義を活用してもギリギリになるか、引くカードの運が悪いと押し切られる。
 難度上昇のためというところだろうが、いくらなんでも不公平感が強すぎる印象がある。モンスターカードの能力(レベル)を上げるだけではダメだったんだろうか?

 戦闘のエフェクトは全体的にかなり頑張っているが、その反面エフェクトが長く、戦闘が間延びしてしまうのも難点になる。スキル関連は全体的に簡素なので、マイトカードやアルカナカードのエフェクトがもうちょっと短ければ良かったな、と思うところ。

 総じて、戦闘部分がけっこう大味。ストーリーも結局のところ、いきなり放り出された主人公が淡々とダンジョンを攻略するというだけ。TCGらしく作ることには大筋成功してはいるので雰囲気はいいが、それをゲームとした時に面白いかどうかはまた別物。残念な部分が目立ったなあと思う作品でした。